第20話 外の世界
ルシアはガイロの手を引いたまま、街の中の人込みの中へと入って行った。
ガイロは急に鼻をひくひくとさせ、走って行った。
「ガイロ?」
ルシアは走って行くガイロを追い掛けた。
ガイロは香ばしい肉の薫が漂う出店の前で、止まった。
こねた肉が棒についている物を網が掛かった炭火の上で店の男が焼いていた。それをガイロはじっと見つめていた。
ルシアはポケットから小銭を出し、確認した。わずかであるが、一つだけ買えるぐらいの金はあった。
「おじさん、一つおくれ」
と、ルシアは金を店の男に差し出した。
「はいよ。毎度」
と店の男は金を受け取り、肉の棒を渡した。ルシアは受け取ると、ガイロに差し出した。
ガイロは一口噛った。肉汁がぽたぽたと滴り落ちた。
ガイロがガツガツと食べ始めると、ルシアはその様子をじっと見ていた。すると、腹の虫が鳴り出した。
「グゥー、ギュルルル…」
ガイロは食べるのをやめ、ルシアの腹を見た。
「えへへへ…」
とルシアは少し照れながら、頭をかいた。
ガイロは食べかけの肉の棒をじっと見ると、黙ってルシアに差し出した。
「いいよ。ガイロ」
とルシアは首を横に振ったが、ガイロは肉の棒を突き付けた。
「ありがとう」
とルシアは言って、肉の棒を受け取り、残りを食べた。
それから二人は再び歩き出し、街の中を眺めつつ街の外へと出た。
ルシアがやって来た方向とは逆の街の出入口には、すぐ近くに小さな丘があった。
「行こう」
ルシア達は、丘を駆け登った。
丘から下を見下ろすと、すぐそこには花が咲き乱れる野原が広がり、小川が流れていた。
「わぁ、綺麗な処だなぁ」
ルシアは野原に駆け込んだ。
ガイロはその様子を立って見ていたが、ルシアが振り向き、ガイロを呼んだ。
「ガイロ!来なよ!!」
ガイロは小走りに、ルシアのもとへと駆け寄った。
「川に魚がいるかな?見てみよう」