第19話 同じ
「昔、この街の子供達は呪いをかけられた。人間の血を欲し、求めるという呪いをね。その時皆、我が子を殺した。でも、私達にはできなかった。やっと…やっと生まれた子だったんだ。でもあの子は…」
と男が言いかけると、ルシアは、
「化け物なんかじゃない!」
と、叫んだ。
男は驚き、声を失った。
「人を殺したくないのに、体の血が自分と同じ人の血を追い求める。とっても、苦しいんだ。苦しくて、それから逃れたくても逃れられない…」
「君は…」
と男がいいかけた時、女が地下室から上がって来た。
「どうしたの?大きな声が聞こえたけど…」
「俺、もう行くね!明日、またガイロに会いに来るよ!!」
そう言ってルシアは外に出た。
次の日、ルシアは約束通り、ガイロのもとへと向かった。
「ガイロ、君はお父さん、お母さんが好きかい?」
とルシアは何気なく尋ねたが、暗い檻の中からは返事が返ってこなかった。
「ガイロは、この檻の中にいるの嫌じゃない?」
「……」
ガイロからの返答はまた沈黙かと思っていると、奥の方から一言、呟きのような声が聞こえた。
「…イヤ…ダ…」
ルシアは、その声をしっかりと聞きとめた。
「ガイロ、こっそりここから抜け出しちゃおうか!!」
とルシアは言うと、檻から少し離れた所に、壁にかけてあった鍵を手に取った。そして、ガイロを檻から出した。ルシアは初めて、ガイロの姿をはっきりと見た。自分と同じくらいの背で、瞳が紅く染まっている事以外、他の人間の少年と何ら変わりなかった。
「そのままじゃ、バレて怒られちゃうから」
とルシアは言い、側にあったボロ布をガイロに頭から被せ、身に纏わせた。
「これでよし!じゃぁ、外に行こう!!」
ルシアはガイロの手を取り、ガイロの母が奥の部屋を掃除しているのを見計らって、外に出た。
ガイロは、空に高く昇った太陽を見上げて目を細めた。
「ガイロ、いろんな処歩こう」