第17話 新たな出会い
「ねぇ、困った事ないかい?」
やっと尋ねたルシアに答えてくれる者がやって来たが、
「バカだね、あんた。この街は今や、世界でも名の知れた魔法使達いが住む街だよ。困っている事なんてあるはずがないだろ。あったとしても、自分達で解決できるさ」
と女は鼻でせせら笑うと、去って行った。
「何か、この街に来た意味がないかも。でも…ドランや父さんの事が少しわかったわけだし、来て良かったのかなぁ」
ルシアが独り言を言って歩いていると、後ろから声をかけられた。
「あの、あなた、街の人達に困っている事はないか尋ねているそうね」
と、40代くらいの女は言った。
「そうだよ」
と、ルシアは頷いた。
「何でそんな事を?仕事を探しているの?」
「違うよ。ただ、困っている人の役に立ちたいだけ。それだけだよ」とルシアは、にっこりと笑って答えた。
「それなら、私達の頼みを聞いてちょうだい。私の息子の友達になってほしいの」
「いいよ」
ルシアはすぐに返事をし、女はその返事に嬉しそうだった。
ルシアは女の家に案内された。そして、地下室へと連れられた。
「この子なの」
薄暗い部屋の中に大きな檻が置いてあった。その中に、何かがうごめいていた。
ルシアは恐る恐るゆっくりとその檻に近付いて行った。
「ニンゲン?」
檻から声がしたかと思うと、紅い眼が二つルシアを捕え、飛び掛かるように檻の柵を掴んだ。ルシアは驚いて、後ずさった。
檻の柵の間から鼻がつきでて、くんくんとにおいを嗅いだ。
「オマエ、オナジニオイガスル」
檻の中をようく見ると、その中に入っていたのは、ルシアと同じ歳くらいの少年だった。
「この子、他の子とは違って少し気性が荒いけど、本当はとてもいい子なのよ。檻の外から話すだけでいいから、友達になってやってちょうだい」
と、女はルシアに断られるんじゃないかと、ビクビクしながら言った。