第15話 真実を知った今
その後、青年と子供がどうなったのかは誰も知りません。ただ、あのドラゴンの長の苦しくも悲しそうでもある鳴き声は、何処からか聞こえてくるそうです…』
青年は読み終わり、本を閉じた。そして、隣にいるルシアにそっと手渡した。
「この話…」
ルシアはじっと本を見つめた。青年は立ち上がり、建物の入口へと向かった。
ルシアは
「はっ」として顔を上げ、
「待って!君の名前は?」
と、青年を引き止めた。何故かはわからないが、行ってほしくなかった。
青年は振り向き、
「アル」
と言って、微笑んだ。その瞬間、強い風が吹き、一瞬にして青年の姿は消えた。
「どうしたルシア?」
うずくまって眠っていたドランは顔を上げ、やって来たルシアを見た。
「ドラン、俺、ある物語りを読んだんだ」
ドランは、ルシアがいつもと違う様子に気がついた。
「ドラゴンと人間は争ってたけど、契約をした事で争いが終わったんだ。でも、人間の悪い奴が契約を破っちゃうんだよ。それで、怒ったドラゴンは人間を喰い殺して苦しむ。契約を結んだ人も、家族を殺したドラゴンと悪い奴を殺すんだ。だけど、悪い奴は呪いをかけるんだよ」
と、ルシアは物語りの内容を話した。
「ねぇ、ドラン。その呪い、どういう呪いかわかる?」
と、ルシアは笑った。その笑顔は、悲しいものだった。
黙って聞いていたドランだが、ゆっくりと重たい口を開いた。
「…知っている。その呪いは、お前にかけられている呪いだ」
「ドランは昔、ドラゴンの長だったんでしょ?」
とルシアが尋ねると、
「そうだ」
と、いつもの落ち着いた声で答えた。
「お前にきちんと話すべきだったな」
「街の…子供達はどうしたの?」
「血を求め、殺戮を繰り返した。だから子供らの親は、自らの手で、自分の子供を殺した。そう…お前が今日来たこの街は、一度は滅びかけたのだ」
と、ドランは街の方を見つめながら言った。
「俺は…何で生きてるの?」
と、ルシアは俯いて言った。