第13話 真実は物語の中に
そこには、一人の青年が立っていた。歳は18、19くらいだ。
「本を見ているんだ。でも…字が読めない」
と、ルシアは淋しく笑った。
「貸して、僕が読んであげるよ」
と青年はルシアに近付き、手を差し出した。ルシアは黙って本を渡した。
青年は本を受け取ると、石で出来た床に腰を降ろし、側の本棚に寄り掛かった。
ルシアも青年の隣に座った。
『昔々、ドラゴンと人間は争っていました。ドラゴンは人間を食べると、強力な力を得る事ができました。人間はドラゴンの血を飲むと、永遠の命を得る事ができました。
一人の青年が争いを止めようと、立ち上がりました。平和を願う人々は、その青年に願いを託しました。
青年は、危険を承知ながらもドラゴンの住化に向かいました。
そして、ドラゴン達の長に会いました。そのドラゴンは、雪のように真っ白でした。
ドラゴンは言いました。
"命知らずの人間が来たな"
青年はドラゴンを見上げて、大きな声で言いました。
"ドラゴンの長よ!こんな無意味な争いはもう、終わりにしないか!!"
"この長きに渡る戦い、今さら平和を願うのか?"と、ドラゴンは鼻で笑って言いました。
"今だからだ。私達は愚かな生き物だ。長い月日を経て、やっとこの争いの無意味な事を悟ったのだ。あなた方のような賢い種族ならおわかりであろう?私達を許してくれとまでは言わない。ただ、お互いを傷ける事を止めたいのだ"
青年の言葉を聞いて、ドラゴンは大笑いしました。
"口の上手い奴だ。私共に怯む事なくここまで来た事、お前の口の上手さに、その話を受けてやろう!"
こうして、人間とドラゴンとの争いは終わりました。
しかし、それには条件があったのです。その条件とは、互いに契約を結ぶ事。