第11話 始まりの場所
「ドラゴン、契約だ」
一人の男は、契約を交わした。
「よかろう」
白いドラゴンは、契約を承諾した。
契約ー。
人間とドラゴンは、共存の道を選んだ。だが、長くは続かなかった。
「ここは…嫌な処だ」
ドランはそう言って、街の近くの岩場に降りた。ルシアはいつもと同じように、ドランの背から降りた。
「いつもより、不機嫌だね」
と、ルシアはドランの顔を見た。
「ここは、全てが始まった場所なのだ…」
「ドラン?」
この時、ルシアはドランの言っている意味がわからなかった。
「さぁ、さっさと行ってこい」
と、ドランはルシアを促した。
「うん、じゃぁ、行ってくるね!」
街は賑やかで、不思議な恰好をしている者が多くいた。
尖んがり帽子や先が上に向かってカーブを描いている靴、黒一色の人がいるかと思えば色とりどりの派手な服を身に纏った人もいる。また、ホウキやステッキを持っている人もいた。そんな人々が行き交う通りの店では、水晶やドクロ、大きな釜、妖しい薬など他の場所では売っていないような珍しい物が並んでいた。
「ねぇ、困った事はないかい?」
ルシアは、黒い布を頭から被った男とも女とも見分けがつかない者に尋ねた。その者は、通りでテーブルに水晶玉を置き、ただ椅子に腰掛けていた。
「あんたが来る事はわかっていたよ」
声からして、年の取った女のようだった。
「困った事は、あんたに道を示すか否かという事。どうしたもんかねぇ」
「道を示す?何でそんな事を迷うの?」
「お前さんにとって悲しく辛く、お前さんの相棒にとっても同じだからさ。だけど、いつかはお前さんは知る。今よりも、いつかの方が苦しいかもしれない。だが、私が道を示していいものか」
「あなたは…未来がわかるの?」
ルシアは真剣な表情で老婆を見つめた。