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エピローグ ―新しい時間―

「なるほどそういう事がなぁ~。実感もてねぇ」

 ユダに説明されたが、リズは今一実感が持てなかった。

「実感が持てずとも、真実なのだから仕様が無いだろう。」

 呆れたようにユダは門に背を預けて、道の向こうを見ていた。

「もうすぐ義兄もこちらに来る頃だが……。」

 二人はイサクの到着を待っていた。

 諸悪の根源を倒し、早急にイサクの王位継承を促す。

 今のユダの目的は、イサクの王位継承を行うことだ。

「道中で何もなければいいが、やはり僕も言った方がよかったかな?」

「お嬢、だめですよ。貴方は疲れているんですから。……あの後、部屋で倒れたのは何処の何方です?」

 あの後、というのはジークフリートを殺し、彼を王位から引き摺り下ろした後。ユダは、あの後休憩用にあてがわれた部屋で倒れたのだ。

 医師が言うには軽い貧血のようなものだという。

 緊張が一気に解けてしまったのだろう、とも。

 我ながら情けないとユダは思った。

「……お、きたぜ、ユダ!」

 前方から馬車が来て、三人の前で止まった。

「エール? エールなのか?」

 馬車から降りた金髪の青年イサクは、ユダの顔をまじまじと覗き込んだ。

「他の誰に見えるんだい? 義兄にいさん」

 昔と変わらない義妹の言葉にイサクは「そのようだ」と、苦笑した。


 アリアの部屋へ行く途中、ユダは自分の知っていることをすべて話した。

 アリアは心を病んでしまったこと。イサクに会えば直るかもしれないが、一生あのままという可能性もあるという事。

 だが、イサクは笑って言った。

「どんなことをしても、彼女を取り戻してみせる」と

 ユダはその言葉に笑みを見せた。

「(この人なら、アリアを任せても……。もう、僕の出番は無いのだろうな)」

 幼きころは、ユダに依存しているとも言えるアリアだったが、イサクにあってだんだん妹離れをしてきていた。

 おそらく自分の出番は無いだろう、とユダはイサクを一人でアリアの部屋へ行かせた。

 最初はアリアの狂ったような悲鳴となだめるようなイサクの声が聞こえていた。

 だがやがて、それも収まり、すすり泣くような声が聞こえてきた。

 だんだん、アリアがおのれを取り戻してきたのだろう。

 そろそろいいだろうか、とユダはこっそり部屋を覗いてみると

 ……後悔した。

 寝台の上で抱き合っている二人が熱い抱擁と接吻を交わしていた。

「あ、あわわ。」

 颯生はあわてた。ユダがこの手の話を苦手としているのを思い出したのだ。

 いつも、はしたないと言って顔を真っ赤にして怒るのだ。

 リズに助けを求めても、彼はニヤニヤと不躾に二人の様子を見ていた。

 ナシルたちは王位継承の準備といって、この場にいない。

「お、お嬢??」

 恐る恐る彼女の方を見ると、ユダはクスリと笑い、いつくしむような目で二人を見ると、リズの後頭部を殴り、彼の首根っこを掴むとその場を去っていった。

「お嬢??」

 扉を閉め、颯生は彼女の後を追った。

「……大丈夫、なのですか?」

 颯生はユダに聞くが彼女は答えない。

「お嬢……?」

 再度聞いてみたが、彼女はリズをその場に放っておくと、あそこには近づくなと無言で彼を戒めて、颯生の手を引くと、中庭へ連れて行った。

「お嬢!……どうしたんですか?」

 やっとユダはこちらを振り向いた。

 頬をやや赤らめて、静かに涙を流していた。

 はっとした時にはユダは颯生の胸にすがりついていた。

「もう、僕は……」

「……。」

「……僕が、いなくても……アリアは大丈夫なんだろうな。」

「……お嬢。」

 守るものを守りきり、それが無くなって、生きる意味を一つ失ったであろうユダの身体はひどく華奢に見えた。

「お嬢、大丈夫ですよ。……アリア様が貴方を必要としなくなっても、貴方の存在が誰からも忘れられても……、俺は貴方のそばにいますよ。」


 数日後

 アリアとイサク二人の挙式と、イサクの王位継承が行われた。

「二人とも、幸せそうですね。」

 颯生の言葉にユダは微笑む。

「もう、僕の役目は終わり、なのかな……」

 ユダの言葉に、颯生はなんと言葉をかけて良いか分からなかった。

 慰めてもどうせ気休め程度にしかならないのだろう。

「……お嬢?」

 いきなりユダが颯生の腕を引っ張ると、彼女は人々から見えない柱の影へ颯生を連れてきた。

「お嬢……!?」

 いきなりユダは自身の唇と颯生のそれを重ね合わせた。

「!!??」

「……これが僕の答えだ。」

 颯生の胸に顔を押し付けて顔を隠しているユダの耳は真っ赤だった。

 いつもそれこそ男より芯の強い彼女のこんな一面を、どこかで颯生は可愛いと思っていた。

 叶わない恋だと諦めていた。ただの、意思を持ち少し他より強いというだけでただの剣である自分とその主で王族である彼女と、自分はつりあわないと思っていた。

 ずっとずっと、この気持ちに気付いてから、諦めて、この気持ちを気付かれないように隠していた。

 だが、奇跡がおきたのか。

 自分の気持ちが叶う時がきてもいいのか……?

「俺は、剣ですよ? それでも?」

「何を言っているんだ! 僕は、僕は剣でもなんでもない、“お前”が好きなんだ!」

 あまりにも必死な彼女の表情に颯生は一瞬眼を丸くした。

 姉のこと以外で此処まで必死になる彼女を見るのは初めてだった。

「……分かりましたよ。」

 す、とユダの顔を上げさせ、颯生は彼女に口付けをおとした。

「絶対幸せにしますよ。……エール嬢。」

 ふわりと微笑むと颯生は彼女を抱きしめた。






ユダはこれで終わりです。

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 いろいろせっていを変えまくった結果、出来上がった作品です

 とりあえずここでは初期設定を……


 最初、主人公はアリアにする予定でした。

 アリアは普通の少女でユダとは姉妹じゃありませんでした

 Aliceの設定はそのままで、現実世界にいたアリアが異世界に連れてこられて、Aliceに巻き込まれるといった感じでした

 ユダは男性(18~21くらいの青年)で、ジョーカーという名前でした。

 ただ、物語が複雑になりすぎて、書いている本人がわからなくなってしまったので、設定を変えて、異世界に飛ぶということをやめた結果主人公がジョーカー(後のユダ)になりました。

 そして、ジョーカーを少女(高校生くらい)にして(男だった名残で、ユダの一人称が「僕」になりました)、アリアを彼女の姉にして、皋という新しいキャラクターが生まれました。

 彼も、剣だという設定は変わらないけど、性格や外見はかなり変わりました。

 ものすごく無口で暗い性格で、銀髪ではなく、黒髪で黒装束を着ている青年のイメージでした。ユダのことも「お嬢」ではなく、「主」とよんでいました。

 その結果、試し書きの段階で、ものすごく暗く重い話になったのでやめました。

 もともと、あまり多くは語らないユダにかわり、彼女の心を語らせる約としておいたのですが・・・、全然しゃべってくれないので「もっと軽く明るくしよう」と思った結果、今の颯生が生まれました。

 そして、ジョーカーの名前を裏切り者にされたという設定から、ユダに代えて、今の形になりました


 何はともあれ無事に完結いたしました。

 気が向いたら番外編などでかき切れなかった話を書こうと思います。

 ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。



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