第六章 ―真実―
兵士に連れられ、ある部屋まで案内された。
「(武器の没収か? 拙いな。 颯生がいないと計画が……)」
不安気にしているのが分かったのだろう。兵士は優しく、リラックスをするようにいった。
そこで少し首をかしげる。
無罪になるとはいえ、自分は重罪人だ。 何故こんなに優しく接してくるのか。
そう思っているのが分かったらしく、兵士は苦笑した。
兵士は幾分かためらってから、口を開く。
「ナッシュ様。」
その言葉に目を見開く。
呼ばれなれた名前。
兵士の顔を良く見ると、見覚えがある。
「(彼は僕が城にいた頃の部下じゃないか。)」
名前は確かナシル。
「……ナシル、か?」
「覚えてくださいましたか。」
感動のあまりか、椅子から降り、自分の前にしゃがみ込んで手を握った。
顔を今にもなきそうに歪めたナシルにユダは苦笑した。
「元気そうで何よりだ、が……何故君は僕を此処へ?」
「それは、」
ナシルが言おうとした時にバンと扉が開き、一人の兵士が顔を出す。
「王への反逆を手伝ってほしいってコトっスよ、ナッシュ様。」
ナシルのことばの続きを言ったかれも同じくかつての部下。名は、アークだ。
「実は、今の王に変わられてから、民の不安は募るばかり。 税も上げられ、裕福な者のみが得をする世の中になりました。」
「だから、おれ達は今の王を引きずりおとして、元々王位を継ぐはずだったイサク様に王位を継いでもらおうと……」
「ちょっと待て!」
ユダは、アークの言葉をさえぎった。
イサクとは死んだはずの義兄の名だ。
「義兄は、死んだはずだろう! 僕の目の前で、その身を貫かれて……」
「いいえ。」
ナシルは優しく否定した。
「生きております。奇跡的に急所は避けておられたようです。 私達は死体処理を装って、あの方を安全な場所へ隠しました。 傷はまだ完全にはいえておりませんが、自分で歩き、食事など最低限のことは出来るほど回復しておられます。」
「どうです?ナッシュ様。 協力してくれないっスかねぇ?」
二人の言葉に、ユダは頷いた。
「言われずとも、だ。」




