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思い出話、想いで話す

作者: 冬綿黝簾
掲載日:2025/11/22

友情、なんて言葉がございます。

人間同士の情や心なんてものは、雪とおんなじもんだと私は思っております。吹けば飛んでいき直ぐに消える。その癖積もると重くなるもんですから面倒臭いもので、長いこと一緒にいるとそりゃもう積もりに積もって、消えるなんて事は中々ありゃしません。

逆にいやァ、一緒にいる時間が短けりゃそんなに積もらない。比較的早く消えてくれるってモノです。

前置きが長くなりましたが、まァ本題でございます。

さてさて、あるところに絆されちまった男が居たって話です。

なんでもその男、珍しいことに生まれてからずっと一緒の幼馴染が居るらしいんですわ。そんでその幼馴染は箱入り坊っちゃん!そんなん中々居りませんわな。え?居る?そうですかい。

話は戻りましてその箱入り坊っちゃんは、何分気が弱く臆病なもんで、すーぐ虐めっ子に目ェつけられたんですね。然も報復が怖いってんで、折角金持ちな親が居るのに相談もしねェ!その所為で虐めもどんどん過激になっていく!可笑しい話でございましょう?そこで現れたのが、最初に云った絆された男でございます。

仮にその男を(まさ)、箱入り坊っちゃんの方を(よし)としましょうか。

雅は喧嘩っ早い性格な上、腕っ節も強いもんでしたから、小せェ頃から知ってる幼馴染がやられてるのが気に食わなかったようで、直ゥぐ虐めっ子共をコテンパンにしちまいまして。

勿論その後雅は叱られちまいましたよ。然も虐めっ子共は話を盛りに盛ったようで、親にまで連絡される始末。コレだからほんのり知識持った狡賢い奴等は嫌だねェ。

見たように言うって?さァ、どうでしょうねェ。

まァでも、コレに義はいたく感謝したようで、それからというもの雛みてェに雅の後ろをうろちょろしておりましたよ。

ある時雅が風邪をひいちまいまして、義は体調不良でもないってのに学校休んで看病しておりました。

暫くそうしてると、下から雅の親と自分の親の会話が聞こえてくる。なんでだろうと義はこっそり降りて、静かに会話を聞いてたんです。

「何時もありがとうございます」

「いえいえこちらこそ。それで、アレのことなんですが…」

アレって何だ?と義は聞き続ける訳です。

「此方、今月分です」

「ありがとうございます!」

聞いてて分かったのは、雅の親が義の親から金貰ってたんだそうで。

義の親は気が弱い義に友達が出来るか心配していたそうで。だけども雅が義と友達になった。然も虐めっ子共から守ってくれた。義の親はコレにびっくらこいた訳でさァ。

だから雅の親に、お礼の金を渡した訳です。

これに雅の親は味しめちまったようで、毎月雅が義の友達やる代わりに報酬として金貰い始めたんです。まァ雅は知らねェみたいですけど。

それ聞いて義は酷く悲しんだ。雅は金目当てに僕と仲良くしてたのかってね。なんせ義は雅が知らないことを知らねェんだから。

それからというもの、義は塞ぎ込んじまって、家に閉じ篭るようになっちまった。コレに雅の親は御冠!なんせ金が入らなくなったんだから。雅は毎日早く仲直りしろと叱られて、ご立腹よォ!

それに雅ってば反抗期が早かったもんで、ついには家出しちまったのさ!

家出のために携帯とオヤツと鞄に詰めて飛び出たあと、雅は考えたんだよ。義も誘おうってな!

義が引き篭もっちまったのを見て健康に悪いんじゃないか、ちゃんと寝て飯食ってんのかと雅はずっと考えてた訳ですよ。親に何も言われなくたって義とは仲直りするつもりだったんだ。だから義の家の庭に入り込んで、窓をコンコン叩く訳。

義からすりゃ、急に音が鳴るから大層驚いたさ!腰まで打っちまった!腹抱えて笑っちまいそうだろ?

その儘そォ〜っと窓開けてみりゃ雅が居る。更に驚く義はついつい大喜びで、雅!なんて叫んだよ。ま、後になったら冷静になって恥ずかしがっておりましたがねェ。

その後義は久々の雅と一緒に入れるのは嬉しい。でも金目的で悲しいで感情ぐちゃぐちゃになったようで、近場の公園まで着くと、

「今更なんの用だ!」

なァんて叫んだんです。雅はなんの事か分からなくて首を傾げるだけ。だから義はついつい親の金問題やらを雅に話した訳です。

そしたら雅は大激怒!親にも義にも自分にもね。そんで一寸の言い合いの後無事仲直りしたようで、その儘家出を続行したわけでございます。

と言っても義は良いとこのお坊っちゃん。護衛だのが探しに来ます。だから雅と義はちょこちょこ貯めてた金使って、でもあんまり交通機関だのは金がかかりすぎるから使わずに只管逃げ続けました。

でもねェ、夜に子供二人で歩いていたらそりゃ補導されちまいますよ。だから夜が近づいてくると、橋の下やら公園の遊具の中やらに入り込んで、何処かで拾ってきたダンボールに包まって寝て過ごしました。お腹が空けば野草を食べたり川から謎のカニ採ったりして、大体三ヶ月くらい過ごしましたかねェ?その間に雅が誕生日迎えて十六歳になった頃でございます。流石に警察に親達が行方不明者届やらを出したようで、本格的に探されて逃げるのが難しくなって来ました。でも雅は金目的で義と仲良くさせようとする親が嫌いだったし、義は雅が家族より大切だったもんで、二人共帰る気は更々なかったんです。

そんでもって義は、何時からか雅に恩返ししたいと思うようになっておりました。なんせ虐めから守ってくれて、ずっと一緒に居てくれて、然も金なんか見ずに義を見てくれる。親でさえ、何時かは家を継ぐものだとして見ていて義として見ていなかったのに、です。だから義は、もし警察に捕まることがあったら雅だけは逃がそうと思っておりました。然し、雅も義だけは守ろうと思っておりました。大切な幼馴染で、雅にとって親友でございましたから。

そんな折、とうとう見つかっちまいました。雅は義を、義は雅を互いに逃がそうとしながら逃げます。然し、たかが子供。大人である警察達からは逃げ切れませんでした。

そうして義が道路を渡ろうと走り出すと、向こうからトラックが来ているのが見えました。義はそれに気づいていない!雅は焦ります。そして義がトラックとぶつかりそうになったとき、雅は自分の身も顧みずに義を押し出そうとしました。ですがその時義もまた、トラックが来ており雅が怪我するかもしれないと雅を押し出しました。

お互いに押された二人は命を落とすことはありませんでしたが、雅は右足を、義は左足を失いました。

その儘病院に仲良く運ばれた二人は、親が迎えに来なければ帰れないことになってしまいました。三つは隣の街に居ましたから。

然し親達は迎えに来ませんでした。雅の親は雅に義足をやる金もないし、最早義の親から金を貰う道具としか見ていなかったのに義を連れ去った奴なんかどうでも良かったようです。その儘縁を切られました。

義の親は、金はありましたし息子とその友達だったので入院費は払いました。然し、雅の親の醜悪さに気づき、義と雅に顔向けが出来ませんでした。そして雅が親から縁を切られたと聞き、二人の生活費はせめてもの償いとして払うことにしました。顔を合わせる勇気は無く、家を継がせても悪評が広まるであろう義を、家に入れられなかったからです。

それから雅と義は常に一緒に生活しました。折角金を出してもらえるからとマンションに住み、そこを家として勉強をしました。何時までも養われるのは性分に合っていない雅は働くつもりでしたから。それを聞いて義も一緒に働きたいと雅に勉強を教えていました。腕っ節の強い雅と、賢い義。二人で一人のようなものでしたから。

そうして義はこうして落語の道に進み、雅はそれを支える裏方になった訳ですね。この義足、結構使い勝手がいいし気に入っているんですよ?なんせ自分達で稼いで買った物ですから。

さて、これにて小噺はお終いとなります。是非またここに足を運んで下さいな。今度はお気に入りの噺を致しますから。

企画参加させて頂きました。友情話は書いたことがなかったのでとても楽しかったです。

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