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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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勇者仲間 ⑦

なんか……違う。


以前、冒険者パーティー「ライゼ」と共に潜った初心者用ダンジョンとは、どこか違う気がした。兄も姉も小次郎も、その違和感に気づき始めている。今回は、「ライゼ」の代わりにブランとフォレスが魔物の攻撃と探索を担ってくれているので、私たちへっぽこ冒険者でも、周りを見る余裕がちょっぴりあるのだ。


「ねぇ、お兄ちゃん……」


「ああ、以前とは違うな。こんな浅い階層で出てくるレベルの魔物じゃないぞ」


両手にしっかりと長剣を握って、兄はキョロキョロと辺りを警戒する。確かに、ダンジョン一階は子どもでもウロウロできる階層だし、そのあと冒険者のみが下へと進める階段を下りても、スライムやネズミ型魔物が湧いて出てくるだけだった。


なのに……ブランがヘッヘッと舌を出して、主人である私に「褒めて、褒めて」とアピールするその足元には、角のある兎とマッドドッグと呼ばれる中型犬サイズの魔物が横たわっている。そのうち、ダンジョンに吸収されてドロップ品が現れるだろう。


……犬型魔物ってもっと下層じゃないと出てこないんじゃなかった?


「菊華ちゃん、ブランたちを少し休ませて。ぼく、攻撃するから」


「えっ!」


私は、小次郎の耳にこそっと「周りにいっぱい人がいるよ」と忠告する。人の眼があるところで聖剣を振り回したら、すぐに噂になってしまう。せっかく、異世界から召喚された勇者ということを隠して、ここまで逃げてきたのに。


「大丈夫、ナイフで攻撃するから」


ニコーッと輝く笑顔で言われたけど、危ないでしょ? むしろ、小次郎の代わりに兄が無双するべきでは?


「菊華。睨むなよ、俺も頑張ってるだろう?」


しかし、悲しいかな……長剣を振り回しても一撃で倒せない。私たちにとっては脅威なダンジョンでも、冒険者にとっては文字通り初心者用ダンジョンなのに。


「菊華ちゃん、お姉ちゃんも頑張るわ!」


「……お姉ちゃんは、まだスライムで経験値が入るでしょ。あっちでプチプチ潰しててよ」


ぶーっと両頬を膨らましても知らんがな。いまはお姉ちゃんに付き合っている場合ではない。兄がフォレスに姉のお守りを頼んで、私はブランをぬいぐるみサイズに戻しポケットに入れた。


「さて、レベル上げしますか!」


怖いけど、私もナイフを手に頑張ります!

後で思い出したけど……小次郎って『身体強化』が使えるから、犬型魔物を無双できる強さがあったんだ。心配しなくても大丈夫だったみたい。




























なんとか……レベル上げに成功しました。


しかし、橘家長男は2UP、橘家末っ子の私も2UP、橘家長女の姉は1UP……オイッ! 勇者の小次郎は3UP上がりました。


「え? 小次郎のレベルの上り方、おかしくない? お兄ちゃんの倍は倒してたでしょう?」


兄の経験値はフォレスが倒したネズミ型魔物も加算されるが、そのネズミ型魔物よりも強い犬型魔物を中心に倒していた小次郎は、兄の倍の経験値を稼いでいたと思う。

私は、犬型魔物を二匹とネズミ型魔物を五匹しか倒してないが、ブランが大活躍だったので兄と同じ経験値を稼いでいたと思う、姉は……、しょうがないよね? スライムだけでレベルが上がったことを喜ぼう。


「そうだよな……俺よりも経験値は稼いでいると思うし……魔物のレベルも上だったはずだ」


まぁ、小次郎はレベル上げても、年齢を重ねて成長しないと魔法のストッパーは外れないから、ものすごく強い魔法をぶっ放すことはできないけど。


「あれかしら?」


姉が片手を頬に添えてコテンと首を傾げた。ダンジョンにいるのに、高級ホテルのラウンジでアフターヌーンティーを楽しんでいる風である。ズルイ。


「あれってなに?」


「ゲームではよくあるのよ。職業によってレベルを上げるのに必要な経験値が違うの!」


……なんで、そんな重要なことをいま嬉しそうに話すのよっ! つまり、勇者である小次郎のレベルは上がりにくいってこと?


「小次郎は勇者。桜は回復役(ヒーラー)だとして、菊華と俺はなんだろう?」


兄も眉間にシワを寄せて考え込む。いやいや、ここはまだダンジョン内ですけど? もっと周りを警戒してよっ。代わりにフォレスが旋回しているけども!


「菊華ちゃんはテイマーかな?」


小次郎が私のポケットに入っているブランを指差すが、別に従魔契約をしているわけではないからテイマーとは言い難いような……。


「勇者は一番成長が遅いとして、やっぱり私もレベルが上がりにくいと思うわ」


姉が残念そうに肩を落としているが、本当に? 強い魔物を倒してないからじゃないの?


「勇者と回復役の成長が遅いのはゲームではセオリーだもんな。こりゃ、菊華に早くレベルを上げてもらって、編みぐるみ隊を作ってもらわないとな!」


「なんでよっ」


「だって、桜はこのままじゃ、ずっとスライムしか倒せないぞ? 菊華が強いぬいぐるみを作って桜の魔力と繋がれば、そいつが倒した魔物の経験値が桜に与えられるじゃないか」


ええ、理屈はわかってますけど……。攻撃する術を持たない姉には、一日も早く編みぐるみを作ってあげたい気持ちもありますけど……。


「カ、カラーシープの毛糸さえ、買えれば……」


毛糸、もうちょっと安くならないかなぁーっ!


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