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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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勇者仲間 ⑤

今日は真面目に冒険者稼業に精を出そうと思います。


お金はあるけど、働かない者食うべからずの精神で、労働の汗を流し生活費を稼ごうと橘一家は決めました。まぁ……真面目に働いても私たちの実力じゃ一日のご飯代ぐらいだけどさ。


「冒険者ギルドに行くか」


兄が身支度を整え私たちに声をかける。その兄の上着の胸ポケットからちょこんと顔を覗かせているのは、昨日私が作った編みぐるみのフクロウである。名前は「フォレス」


「あら、薬草採取なら掲示板で依頼を見なくても常設依頼だから大丈夫よ?」


姉も身支度を整え終えているが……私たちと同じようにこの世界の古着――だいたい平民の普段着は古着だ――を着ているのに、どこかへお出かけするような装いに見える。美人は徳だなぁ。


「僕も用意できました」


正直、身支度を整える手伝いが必要なのは、成人して働いていた姉ではなく、まだ子どもで小学生の小次郎なのに、姉に手間がかかるせいで、小次郎は自分で身支度を完璧に整えてしまった。ちなみ私は姉の身支度を手伝いがてら済ませている。


「……ここら辺でカラーシープが狩れるかどうか、冒険者ギルドで確認してみる?」


謎の編みぐるみは兄と私で一体ずつ。もし、この編みぐるみの戦闘能力が高いのならば、姉と小次郎の分も作りたい。姉の分を作るときは、姉の要望は一切無視するが……。余裕があるなら、移動用の馬とか癒しの兎とか作りたい。でも……カラーシープの毛糸が高いんだよぉぉぉっ。


「そうだな。ここら辺の魔物棲息場所の確認もしておこう。俺たちはレベルが低いし攻撃魔法が使えないから、強い魔物は避けないと」


昨日から、姉の怪しい知識による魔力増幅特訓もしているが、効果があるのかどうかわからない。寝る前に魔力枯渇ギリギリまで使って寝るって、本当に意味があるんでしょうね? 異世界人はみんなこの方法で魔力を増やしているって、信じていいんでしょうね?


私はぎろりと姉の顔を睨みつけてから、鞄に括りつけた白い犬の編みぐるみをギュッと握りしめて、部屋の扉を開けた。


「……菊華ちゃん、ブランはオオカミだってば」


小次郎の呆れた呟きが聞こえてきた気もするが、気にしない、気にしない。

























街をぐるりと囲む壁のすぐ近くでプチプチと薬草を取っている。手が草臭くなるから、ちょっとヤダ。地味だし、しゃがんでて腰が痛いし、頑張って毟っても、小銭の報酬にヤる気がでない。


しかし……心の中でグチっている私と違って、ひとつずつ丁寧に採取している小次郎と、たかが薬草に眼をキラキラと輝かして妄想している姉の姿に、自身を反省します。文句ばっかですんません。


兄は……この薬草は食べられるかな? と考えて採取するのはやめてよ。薬草なんて苦いだけじゃない。山菜採りに来てんじゃないんだから。


「……ちょっと休まない?」


冒険者ギルドに寄ってから馬車に揺られて街を出て、ギルドお勧めの新人冒険者の薬草採取場所で作業すること数時間。そろそろお腹が減りました。


「そうだな。薬草採取はこれぐらいで、あとは俺たちのレベル上げに最適な魔物の出没場所でも確認しておくか」


……やっぱり、魔物を倒すことからは離れられないんだ……くすん。


そもそも、小次郎の聖剣が、所有者つまり小次郎の魔力を注いでぶった斬る代物だったからだ。私の編みぐるみが所有者の魔力で動くように、聖剣がその能力を最大限に活かすには、所有者の魔力が必要。あのワイバーンの首をスパーッと斬ったとき、小次郎は無意識に剣に魔力を注いでいた……いや、聖剣が小次郎の魔力を奪ったんじゃないの? まぁ、そのことはいいわ。


そんな厄介な代物を日常使いするわけにはいかない。ダンジョンのボス部屋には私と小次郎しかいなかった。今後も聖剣を使うなら、私たちだけがいる場所、ダンジョンのボス部屋みたいな閉鎖された空間がベスト。


つまり、ぐちゃぐちゃ遠回しに言ったけど、小次郎のレベルを上げるなら、聖剣で強い魔物を倒すのが手っ取り早い。その聖剣をこっそり使うなら、ダンジョンのボス部屋が最適だ。じゃあ、みんなでダンジョンに挑戦しよう……って、なんでよっ!


私はすっごく反対したのに、私が作った編みぐるみが多少の攻撃ができるからと兄に言い負かされた。ちっ。

姉も反対しないし、むしろ行きたそうだったし、橘一家の中で最弱のくせに。

小次郎は……言葉にはしなかったけど、ダンジョンに挑戦したいんだろうなぁ。なんとなく、あの子は私たちを守るために強くなりたいとか思ってそう。別に私たちが異世界に転移させられたのは小次郎のせいじゃないのに……。


「菊華ー、昼メシ作るの手伝ってくれ」


「はぁ~い」


とにかく、子どもを守るのは大人の役目。私がしっかりしなきゃ!


兄に頼まれて、バッグに収納していたパンや果物を取り出して、平たい石の上に出したお皿に並べていく。果実水のポットとコップを人数分出して、兄と小次郎が火おこしして焼いた肉を切り分けるナイフと……。


「お姉ちゃん、手伝わないならちょっとどいて。じっと見てられると気が散るんだけど?」


「……菊華ちゃん。お姉ちゃん、こういう編みぐるみがほしいわっ」


はいっと見せられた紙に描かれた編みぐるみのデザインは、著作権を侵害するヤベェものでした。


「……却下」


異世界でもルールは守りましょー。


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