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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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勇者挑戦 ⑧

ひどい夢を見ました。


異世界に突然召喚されて、新しく家族になった小次郎が勇者だと持ち上げて、甘い汁を吸おうとする悪い奴らに捕まった。小次郎以外は必要ないと排除されそうになったとき、異世界の神というふざけた奴が助けてくれたが、この異世界で生きていけるよう便利なスキルをたくさんくれるというチート特典もなく、森の近くに放り出された。


なんとか、小次郎を召喚した国から離れようと藻掻いて藻掻いて、助けてくれそうな高ランク冒険者パーティーと出会ったのはよかったけど、冒険者としてのレクチャーだとダンジョンに連れて行かれたのが運の尽き。哀れ、私と小次郎はダンジョンの転移トラップにひっかかってダンジョンボスの部屋へと放り出された。そこでボスモンスターであるオークとの闘い。どちらかが死なないとボス部屋の扉は開かないという絶体絶命のなか、助けに現れたのは私が創った編みぐるみの犬……いやオオカミで。そのオオカミの活躍でほぼオークを倒すことに成功していたのに、最後の一撃を前に私の魔力が尽きて編みぐるみに戻ってしまった。


小次郎は、へっぽこ神様に貰った聖剣を手に再びオークへと挑んだが……ここで暗転。魔力切れを起こした私は昏倒したらしい。

パチッと音が出る勢いで瞼を開けた私は、ガバッと勢いよく上半身を起こした。


「わわわわっ、ここどこ? あれからどうなった? ブタは? あああっ、小次郎は? 小次郎は無事なの?」


目を覚ましてからギャーギャーと騒ぎ出した私に驚いて、近くにいた兄とレオンさんが駆け寄ってくる。

え? ここ、外じゃない? なんで外で寝かされてんの、私? マジでここどこ?


「大丈夫か、菊華? 痛いところはないか? 気分は悪くないか?」


「お兄ちゃん……」


兄が必死な顔で矢継ぎ早に体調を尋ねてくるが、特になにもない。頭痛もいなけれれば気怠さも感じない。むしろ、よく寝てスッキリしたような?

ハッ! それより小次郎はどこよ?


「コジローも魔力切れで眠っている。怪我はない」


「そう……ですか。よかったぁ」


ホッとしたよ。あのブタもどきがいくら瀕死の状態とはいえ、最初の攻撃がまったく効かなかったから、小次郎が聖剣で倒せるとは思えなかった。でも、怪我はしてないって……本当によかった。


「ん? じゃあ、ブタもどきは誰が倒したの?」


あの部屋はボスモンスターであるオークを倒さないと、他の人は入れなかったはず。


「もちろん、コジローが倒したんだろう。俺たちがあの部屋に入ったときには二人は意識を失っていたし、コジローの側にはドロップ品が落ちていた」


ドロップ品というのは、ダンジョでモンスターを倒すとその死体が消え代わりに現れる品々のこと。モンスターの体内にあるといわれている魔石や、牙や角。毛皮や肉などがあったり、武器や防具、宝石類やお金があったりもする。

ボスモンスターのドロップ品はかなりの高額な品が予想されるが、入ったダンジョンは初心者用なので高望みはするまい。


「ただし……ドロップ品がおかしい。あのダンジョンのボスはマッドドッグ、犬型魔物が数頭出るだけだ。魔石の大きさといい、良質な肉といい……ボスモンスターはなんだった?」


レオンさんに渡されたボスモンスターの魔石は片手拳の大きさでやや重く、薄い緑色をしていた。しかし、私の興味は別のことにある。


「良質な肉?」


なに、あのブタってば、食用だった? じゃあ、その肉って豚肉?


「菊華、落ち着け。ちゃんと保管してあるから、元気になったら料理してやる」


「お兄ちゃん、ブタもどきだったから、きっと豚肉よ! トンカツでしょ? 生姜焼きに味噌焼き。あー、ポークソテーもいいなぁ」


じゅるりとヨダレを垂らす勢いで料理名を連呼するかわいそうな私に、兄はコソッと耳に囁いた。


「……調味料がないだろう?」


そうでした……。でも、トンカツはできるよね?


「ブタニク? それより、ボスモンスターはブタみたいな見た目だったのか?」


私はしょんぼりしたまま小さく頷いた。え~ん、豚肉料理が食べたいよぅ。醤油や味噌がこの世界にもあるはず。みりんも出汁もあるはず。


「……ダンジョンボスがオークだったのか。異常事態だな」


「あれじゃないですか? 転移トラップでボス部屋に転移した場合のみ、イレギュラーなボスモンスターが出るとか?」


兄の発言にレオンさんは目を見開いたあと、シルビオさんに報告してくると駆け出していってしまった。


「お兄ちゃん……、お姉ちゃんは?」


そのボス部屋で起きたことは、通常と違うモンスターが出たことではない。そう、私の意味不明なスキルが爆裂したことだ。早く、兄や姉とも情報共有をしなければ。


「桜は菊華の擦り傷を治したあと、小次郎の側にいるよ。お前もだけど、小次郎も真っ青な顔をして倒れていたからね」


どうやら、私たちが気を失って倒れており、そのうえ魔力切れだったので、無理して街に帰ることはせず今夜は野営して過ごすことにしたらしい。


「そう……。じゃあ、詳しい話は街に戻ってからかな?」


私のスキルの話は「ライゼ」の皆さんにも内緒にしておこうと思います。


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