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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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勇者挑戦 ⑤

私と小次郎はいま、絶対絶命のピンチである!
























ドラゴンを従魔に持つシルビオさんが率いる冒険者パーティー「ライゼ」を引率に、やってきました初心者用ダンジョンに!


私たち兄妹は、買ったばかりの防具に持ち慣れていない武器で、初ダンジョン挑戦です。行きたくねー。だって、魔物がいるのよ? まだ赤ちゃんドラゴンを躾中のイケメン冒険者レオンさんの話では、すっげぇ弱いスライムとか、ネズミ型魔物とかが多くて、奥に行ってもウサギ型魔物や犬型魔物が出てくるレベルとか。いや……怖いでしょ? こちとら平和な国でのほほんと暮らしていた女子大生ですよ? スライムは想像つくし、プチッとやればいいと言われたから、倒せる気はするけど、他のはどう考えてもムリでしょ?


同じことを考えている兄の顔色も悪い。それもそのはず、シルビオさんの指導を受けて……。


「いいか? 薬草採取や街のお手伝いだけでは、貯金はおろか生活も成り立たない。多少の蓄えがあっても、職に就ける前にアオイたちは市民権を得る方が先だ。となれば……イヤでも冒険者生活が長くなるだろう」


そうですね。冒険者ギルドで発行されたギルドカードは身分証でもあり、このカードで街や国の出入り、税金の支払い、ついでにキャッシュレスでお金の支払いもできる。その代わり、依頼を定期的に受けていないと失効してしまうので注意が必要だ。


「それに薬草採取しているときに魔物に襲われるときもあるしな……」


なにそれ? 怖いんですけど?


「アオイとキッカは剣は……使えないんだったな。じゃあ、魔法は……」


「生活魔法だけです」


キッパリと気持ちいい勢いで兄が発言した横で、私は黙って首を横に振った。「手芸創作」なんて意味のわからないスキルしかありません。困惑の色を浮かべたシルビオさんが姉に視線を投げるが、姉のスキルも戦闘向きではありません。


「治癒です。すり傷切り傷しか治せませんが」


小次郎だけが戦闘スキルを持っているが、それでもレベルが低いので戦ってレベル上げしないと役に立たない。

シルビオさんは以前にも私たちのスキルを確認したはずなのに、なぜいま、同じことを確認したんだろう? カルラさんは興味なさそうに、オリビアさんはニコニコと笑っているがちょっとイラついているみたい。レオンさんは渋い顔をしている。


「……まあ、薬草採取だったらそんなに強い魔物ともかち合わないだろう……。なるべく今日のダンジョンで魔物に慣れておけよ」


疲れたような表情で私たちに忠告すると、シルビオさんはやや肩を落としてダンジョンの入り口へと進む。

この初心者用ダンジョンは洞窟型のダンジョンで地下五階までと、少々小さいダンジョンだ。一階はスライムしか出没しないことが確定しているので、ちょっとした小遣い稼ぎに子どもも出入りしている。地下に子どもたちが下りていかないように階段前には扉が設けられており、この扉は冒険者ギルドカードでないと開かない仕組みになっている。不思議な仕組みである。


「出る魔物たちは激弱だけど、地下二階からはトラップがあるから気をつけて。だいたいは麻痺だったり岩が落ちてきたりする他愛ないトラップだけど、たまに転移トラップもあるからね」


カルラさんが注意してくれたトラップは、私たち新人冒険者にとっては、ちっとも他愛ないトラップではない。でも、一緒に行動するカルラさんのあとをついていけば間違いないでしょう。


こうして、「ライゼ」指導のもと、私たちのダンジョンアタックが始まった。



























プチップチッとのそのそ移動している水色半透明のスライムは退治できている。罪悪感を感じることもなく、プチッと足で踏み潰したり、兄は剣でつついたりしている。スライムにも種類があって、ダンジョン一階に出没するスライムは水スライムで攻撃性は皆無。よくある酸を吐いて融かしまくるスライムや毒を吐いたりするスライムも生息しているが、このダンジョンの最下層にしか出ないらしい。


「そろそろいいか?」


退屈そうな「ライゼ」の皆さんのかけ声により、ウォーミングアップを終えた私たちは、地下へと下りる扉を開けた。


……地下一階のフロアをスライムをプチッとしながら進むと、そろそろ地下二階に下りる階段が見えてくる場所で、魔物らしい魔物と出くわす。


「これは?」


私が顔を顰めて指差す魔物の名前をシルビオさんが教えてくれようとしたら、横から興奮した姉が割り込んできた。


「こ、これはおおねずみかしら? それとも火鼠? いえいえお化けねずみかもーっ!」


両手を握ってくねくねと体を動かし魔物に熱視線を送るのはやめて。ちなみに正解は? とシルビオさんに顔を向けると、手を額に当ててため息をつくシルビオさんが、小声で教えてくれた。


「……クレイジーラットだ」


残念。姉はそれでもキャッキャッと喜んでいるが、相手はドブネズミである。


「お姉ちゃん、倒さないんだったらオリビアさんと一緒にいてよ。ここにいるなら、アレを倒して」


「え~っ、倒しちゃうの?」


「倒さないと、こっちがやられるでしょう?」


そんなやりとりを繰り返しつつ、兄のへっぴり腰は改善されないし、面白がったカルラさんが姉に棍棒を貸したら、姉がネズミの魔物をボコボコにしたりして進んでいった。


そして、トラブルは突然やってくるのである。私たち以外の初心者冒険者たちが犬型魔物数匹に囲まれパニックになったのか、武器を振り回してこっちへ逃げてきた。当然、危ないから避ける。小次郎の体を抱き寄せて端に寄ったら、肩が当たった壁がパアーッと光って……。


「へ?」


「キッカ! トラップだ」


レオンさんの焦った声が聞こえたが、私と小次郎はすぐに闇に包まれてしまった。


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