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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
安住の地を求める勇者とぬいぐるみ

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勇者挑戦 ②

レオンさんに連れられて訪れた宿屋は、イルブロンの街の中央からやや外れた場所にあり、白い石造りの五階建てで玄関には小さな花壇があるキレイな宿屋だった。……宿泊費が高かったらどうしよう。


「大丈夫だ、菊華。ギルドカードで使える口座には、ワイバーンのお金と大金貨一枚分が入金されている」


ヒソヒソと小さな声で兄が私の耳に吹き込むその言葉に、私はハッ! と何かに気づく。そ、そうだった……もう、貧乏生活に怯えなくてもいいんだった。私のギルドカードの口座にもそれなりのお金が入金されている。


「ここだ。俺たちは最上階を貸し切りにしているが……キッカたちはどうする?」


背中にへばりついていたレーゲンがよじよじとレオンさんの背中をよじ登り、頭の上でふんすと鼻息荒く堂々と胸を反らしているのに目を奪われている場合じゃない。私たちが借りる部屋は……。


「まだ、慣れていないので四人で一部屋がいいのですが。宿屋の人と相談します」


「うん。食事は朝は付いている。夜は食堂に行けば別料金で食べれるし、外で食べてもいい。何か買ってきて部屋で食べてもいい」


レオンさんの拙い説明を受けつつ宿屋と入る私たち。とにかく、この街でレオンさんたちから冒険者のノウハウを詰めるだけで詰め込んで、あとは仕事と長く住める場所があるか探さないと!


「あ~、食事は自分でも作っていいんですかね?」


「……知らん。俺たちは料理はしない」


「宿の人に訊いてみます」


兄よ……ここまできて、まだ自分で料理をすることに拘るか? でも、私たちも兄の作った料理が食べたいので、ぜひ交渉頑張ってくれ。




























その日の夜。


カルラさんとオリビアさんの酒盛りは続いているらしく、宿には帰ってきてなさそう。それでも、イルブロンの街ではこの宿屋に泊るって決めているらしく、宿がわからず途方に暮れることはないそうです。シルビオさんは一度宿に顔を出して、私たちの顔を見てうんと頷くと、またどこかへと出かけていった。彼の従魔であるドラゴンのヴィントは馬房ならぬ竜房で羽を伸ばして休憩している。

一人、宿に残されたレオンさんは食堂でもりもりとご飯を食べたあと、「寝る」と私たちに一言言い残し、最上階の部屋へと消えていった。背中のレーゲンと共に。


私たちは、四人一部屋をとりあえず十日間借りることにした。値段がかなりリーズナブルだったし、この宿屋から冒険者ギルドや市場まで近いのだ。利便性が高いし、兄も厨房を借りることができると聞いてテンションが上がっていた。


私たちの部屋は二階の端っこ。この宿屋は地下と四階に大浴場があり、最上階はそもそも個室にお風呂が付いている。宿屋でもお風呂がないところも珍しくないから、この宿屋はとってもお得である!


お風呂に入り、宿屋の食堂で食事を済ませた私たちは、例によって例の如く円陣を組んで、これからのことを話し合う。


「ねぇ、お兄ちゃん。どうするの? シルビオさんたち、私たちをダンジョンに連れて行く気マンマンだけど?」


私の不安に兄は腕を組み唸りつつ考え込む。


「う~ん。でもなぁ、菊華はともかく俺は冒険者になったから、ダンジョンには一度、潜っておいたほうがいいかもなぁ」


「初心者用のダンジョンって言ってたわ。きっと出てくる魔物はスライムとか弱い魔物だと思うから、大丈夫よ」


姉がニコーッと邪気のない笑顔を向けるが、そんなあっちの世界のオタク常識がこっちに通用するとは限らない。


「小次郎を連れて行くのは怖いが……シルビオさんたちが同行しているほうが危険は少ないかもしれん」


あれね、神様のスキルを強くしたいならレベルを上げろってやつね。兄は生活魔法だから、家事をすればするほど魔法のレベルが上がる。姉は治癒魔法だから、使えばもっと大きな怪我も治せるかもしれない。小次郎なんて「勇者」だから、レベルを上げれば文字通りチート能力開眼! ってことになるかもしれない。

……じゃあ、私は?


「ダンジョンに潜ってレベル上げようにも、「手芸創作」なんてスキル、使えるのかな?」


そもそも手芸ってなによ? この世界にミシンとかあるの? リリアン編みとか? フェルトをぶすぶす刺してマスコット作ったりできるの?

あ、フツフツと神様への怒りが再燃してきたわ。


「ダンジョンには、わたしも同行してもいいわよね?」


コテンとあざとく首を傾げて尋ねる姉の姿に、私と兄は言葉が詰まる。正直、宿で留守番していてほしいが、一人で留守番させるのも怖い。結果、一緒にダンジョンに潜るのが最適解となった。私たちだけでは持て余す姉の理不尽なバイタリティーも、カルラさんとオリビアさんがいればフォローしてもらえるでしょう。


「明後日のダンジョン挑戦に必要な物を明日は買いに行こう。あと……仕事を斡旋してくれる場所と食材と、不動産も確認して、シルビオさんたちの知り合いがいれば顔合わせしておきたい!」


「……なんか、忙しいね……」


「シルビオさんたちがいる間に生活の目途を付けておきたいからな!」


そうだよねぇ。ここでシルビオさんたちと別れたら、あとは自分たちで異世界の荒波を渡っていかないといけないんだもの。ああ……ため息と涙が零れちゃう……。


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