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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
勇者召喚と逃亡

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勇者逃亡 ⑮

ドラゴンは希少な種族であり、本当なら人が使役できるものではない。魔獣というより神獣と言ってもいいほど知能も高く魔法も自由自在に扱う。ドラゴン一匹で国どころか大陸を更地にすることも容易いと……エンリケさんたちから教えていただきました。


レオンさんが所属しているAランク冒険者パーティー、エンリケさんがほぼSランクだと呟いているが、その「ライゼ」はリーダーのシルビオさんがテイマーでドラゴンを従魔にしているらしい。


「うん? ドラゴンは使役できないんじゃ……」


「リーダーは竜人族だからドラゴンとは親和性が高いんだ」


竜人族? わからない言葉の羅列に眉間にシワが寄る私の耳に、姉のウキウキな囁き声が吹き込まれる。


「ドラゴニュートっていう珍しい人種よ。とっても強くてレアな長命種なの」


知らんがな。とにかく、ドラゴンの親戚みたいな種族だからドラゴンの背に乗れるのね。オッケー理解した。


「俺が乗っているドラゴンはまだ調教中なんだか、人は襲わないから安心してくれ」


その言葉はもっと最初のころに聞きたかったよ。いまは、ぴゅいぴゅいとかわいく鳴いてるし、子どもたちが興味津々に覗きこんでいるから、怖さが半減しているけど。


「レオン。逃したワイバーンはどうした?」


「リーダー。こっちの旅人が倒した。ワイバーンは俺の収納に入っている」


ここからはワイバーンの取扱いについて、レオンさんとそのパーティーのリーダーであるシルビオさんで話し合い。私たちは馬車に乗って、すぐに出発できるように準備。ワイバーンの飛来で興奮していた馬も落ち着いたし、あんなに獣人差別でうるさかったお婆さんもおじさんも大人しく座っている。


エンリケさんたちは、ワイバーンの気配で逃げていた魔獣や動物が戻ってきてこないか馬車の周りを警戒しているけど、たぶんドラゴンの気配があるうちは戻ってこないと思う。


ワイバーンを倒した疲れが出たのか、小次郎はすやすやと兄に凭れて眠っている。私も精神的疲労から眠気が襲ってきているが、ドラゴンに興奮している姉が心配で寝られない。


「じゃあ、ラントに向けて出発する。ドラゴンライダーのレオンも同行することになったので、安心してくれ」


エンリケさんがみんなに声をかけると、馬車がゆっくりと動き出す。その馬車の横をひょこひょこと歩いてついてくるのは、レオンさんを背に乗せたドラゴンである。


なに……このシュールな情景は?






















なんでこうなったの?


馬車から姉が恨めしい目で私を見ている。そう、ドラゴンの背に乗った私を! 別に私が乗りたいとせがんだ訳ではない。むしろ、乗りたくはなかった。だけど、馬車と並走しているドラゴンがこちらに首を突っ込んでは、私の匂いをふんがふんがと嗅ぐんだもん。


このドラゴンの世話係兼教育係のレオンさんもびっくりな行動だったらしく、「背に乗ってみないか?」と誘われた。ドラゴンが興味を持つのも珍しければ、波長の合うのも珍しいと言われ、周りからの期待の視線にも耐えられず、渋々乗りました。


姉には「代わってほしい」と眼で訴えられたけど、当のドラゴンは姉に興味を示さないし、まだ子どものドラゴンだからレオンさんが命じても、好意のない相手は乗せられないらしい。


ドラゴンに好意を寄せられても……戸惑うし……。唯一、美人な姉よりも私を優先してくれたのがドラゴンだなんて、嬉しくて涙が出るわよ、こんちくしょーっ。


「こいつの名前はレーゲンという。リーダーのドラゴンはレーゲンの母親でヴィントだ」


「この体の大きさで子どもなんですか?」


十分にデカイと思う。確かに母親はもっとデカイけど。私の素朴な質問に、ずっと無表情で無口だったレオンさんは柔らかく笑うと、レーゲンは生まれて一年のやんちゃな子どもだとペシペシとレーゲンの背中を叩く。


ぴゅい


レーゲンが私たちの会話を聞いていたのか、ペシペシが不快だったのか、不機嫌そうに鳴く。


「ところで、えっと……」


「ああ、私は菊華です。……もう二十一歳です。家族でアーゲン国へ移動していて、兄と姉と……弟? の四人です」


小次郎を弟と紹介するには年が離れてるけど、しょうがない。兄の子どもと紹介するのもなんか違うし。レオンさんは小次郎のことより私の年齢に驚いていた。失礼な!


「すまん……その……成人前だと見えたから」


レオンさんはきまり悪そうにボソボソと言い訳をしている。まぁ……私たちは欧米人に比べて幼く見える人種なので、異世界でもそうなのかもしれない。子どもに見られたことはモヤモヤするが、気にしない気にしない。


「キッカたちはアーゲン国で伝手はあるのか?」


「それが……そもそも私たちは村人だったわけではなく……」


ちょっと気安くなったレオンさんに、私たちがスタンピードから避難してから今までのことを話してみた。ついでにアーゲン国には伝手はなく、強者歓迎の国風に合わないからフュルト国へ移動したいという希望まで話した。


「フュルト国は住みやすい国だと思うし、冒険者たちが重宝するダンジョンもある。交易も盛んで食べるものも美味い。ただ、アーゲン国からだと川を越えていかないと遠回りになるぞ」


うーん、エンリケさんたちと同じ話を聞いて、私の顔はしょっぱい顔になった。


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