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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
勇者召喚と逃亡

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勇者逃亡 ⑥

とりあえず、荷物を確認してみることにした。


この難民キャンプもあと数日で解散だ。少しずつ人も減ってきて、残っているのは私たちのように隣国へ移動する人や、ノイス国で住居を探し中の人、あとは責任者の人たち。

先立つものがないけれど、いつまでもここにはいられないなら、移動するしかない!


「お兄ちゃんが炊き出しのおばちゃんたちに人気のおかげで、食料はそこそこあるわね」


ほとんどが保存食だけどありがたい。出発する日にはパンも焼いてくれる約束だ。嬉しい。


「お姉ちゃんは……こっちでも大人気ね」


難民キャンプでの仕事はほぼ肉体労働なので、姉はノイス国の役人の手伝いをしていた。地方文官と同等の処理能力があると認められた姉はかなり重宝がられたし、その美貌でおっさんたちの癒しにも一役買っていそうだ。


「そうかしら……。餞別で貰ったのはお金だけだし、役に立つかしら?」


手を片頬にあてて悩まし気に息を吐くが、この世界は食べ物とお金が一番大事だわよ! あと、情報ね。


「お金はアーゲン国に着いたあと役に立つわ。宿代やフュルト国への移動代。他にもお金がかかることがあるかもしれないし。それにお姉ちゃんは、ノイス国の人から地図やアーゲン国の情報を聞き出してくれたじゃない。お手柄よ!」


地図には姉を気に入っただろう文官の手書きで、馬車が通るルートと立ち寄るといい村や町の情報、アーゲン国のウェルタ辺境伯領の領都ラントのお勧めの宿マップまであった。


「……ごめんなさい。僕、なにも……」


俯く小次郎の肩を抱いて、私は堂々と言ってやった。


「いいのよ! 私だって何もないもの。お兄ちゃんみたいに食べ物を貰うことも、お姉ちゃんみたいに情報やお金を貰うことも、なぁ~んにもできてないもの! いいの、いいの。私たちが役に立つ日がきっと来るわ!」


たぶんと心の中で付け加えて、私は小次郎に笑ってみせた。小次郎は少し首を傾げていたが、うんと頷くと「僕、頑張るね」とかわいい決意を口にしたのでヨシ。


「ここにいるのもあと数日。荷物が増えても持てる荷物は限られているからな。少し整理をしておこう」


兄は神様から貰った斜め掛けのバックを手にする。同じく姉はベルトから外していたウエストポーチを、小次郎は深緑色のリュックを。私だけなにもないのである。あのくそ神様め~っ。私にだけバックを寄越さないなんて、なんの恨みがあるのよっ。あれか? 不敬な気持ちがダダ漏れだったからか?


う~んと腕を組んで考え込む私の耳に密やかな、でも動揺している家族の悲鳴が入ってきた。


「ど、どどど、どうしたの?」



















神様から貰ったバッグについては放置していた私たち。

特にマノロさんやドナトさんから、貴重品は盗まれるから身に着けておくようにと忠告された。そのとき、私はむしろ替えの服も下着もないと訴えたのを思い出す。ちゃんと古着だけど替えの服や下着類の配給もありました。


神様からのバッグの中身は空だと思い込み、ただ質はいいものだったから取られないように隠しておいたんだけど……。


「まさか中身が入っていたとは……」


愕然とする兄に、私はやや呆れた声で問うた。


「どうして中を確認しなかったの?」


あの神様のことだから空っぽのバッグを寄越したと思うのもムリはないが、とりあえずは覗いてみたりするでしょう?


「いやいや、覗いたよ? そうしたら真っ黒で空っぽに見えたから……」


言い訳する兄は放っておいて、私は兄の手にあるバッグを奪い取ると逆さにし中身をバササッとぶちまけた。


「着替えと水筒、これ……干し肉? こっちはドライフルーツかな? 懐中時計と、ああ薬ね。こっちの巾着は……お金、金貨が三枚」


「あのね、菊華ちゃん。兄さんのはともかく、わたしのはもっと変なの」


恐る恐る話しかけてきた姉の膝の上には……二人分の着替えと水筒が二本。干し肉とドライフルーツという保存食。薬と化粧品類。巾着袋に金貨六枚。


「おかしくない? なんでそんなちっさいウエストポーチに、兄さんのバッグより多い荷物が入っているのよ!」


そもそも、そのウエストポーチに入るのはハンカチと小銭入れぐらいでしょ!


「まさか、小次郎も?」


「……これ」


小次郎の周りには、着替えと水筒と保存食。薬と巾着袋に入った金貨三枚。ここまではいい、ここまでは。


「なんで……剣なんて物騒なものが……」


漫画やアニメでしか見たことがない長剣が一振り。こんなの、小次郎が使えるわけないでしょーっ! あのバカ神がーっ!


「あ、菊華。俺のバッグに包丁とか調理器具が一式入ってた」


「なんでーっ!」


















ちくちく。


神様から貰ったバッグについては考えることを放棄した。一応、私にはバッグをくれなかったケチンボ神様だが、着替えなどの物資はちゃんと用意をしてくれていたみたいだし。私の分はそのまま姉の不思議ウエストポーチに預かってもらっている。


姉のオタク知識では、マジックバッグという不思議道具らしい。見た目以上に容量が入るバッグで買うと高いんだって。だからこのことは内緒。バッグから出し入れするときは慎重に。


でも私はバッグがないので、お隣のモーリッツさんから貰った布袋を補修して使うことにした。モーリッツさんが扱う商品だったけど、魔獣の爪で穴が開いてしまったから、タダで貰えた。ラッキー!


裁縫は私の趣味だから、ちくちくと縫っている。開いた穴には、こちらに来るときに着ていたあっちの服の余分な部分の布を切ってあてた。糸も裾上げ部分を解いて使っている。実はいつも持ち歩いてる裁縫セットがポケットの中に入っていた。ラッキー!


ちくちく。


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