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余命2年のなりすまし

作者: キリスト

マイDNAカードが誕生し、政府が国民を遺伝子レベルで管理できる時代となって100年、マイクロSIMを人体に埋め込む法案が可決、『なりすまし』ができない社会の実現に向けてまた一歩前進した...。


「私は誰? あなたは?」記憶障害の患者が言った。


「君は•••(僕と永遠の愛を誓った)」喉元で言葉を呑んだ。できればSIMは使いたくない。

(僕の余命はあと2年。25年分の君との思い出は、SIMカードにデータとして記録されている)。


「どうしてずっとそこにいるの?」


もう25年、彼女はまだ僕を思い出せないでいる。そして、僕も彼女を忘れかけていた。——若年性アルツハイマー。


神はサイコロを振り、いたずらに不幸の確率を上げたに違いなかった。


「おい、タイラコウヘイだな? よく25年も彼女に付きまとったな」擦れた警察手帳、それを見せるサメ顔の男。事情が飲み込めない。僕が付きまとった?彼女に?


「すべてはお前の悪質な思い込み。恋人になりすまし、彼女だけでなくその家族も友人も巧みに騙した」


サメ顔は逮捕状を見せた。


「ストーカー規制法違反で逮捕する。歴史に名を刻むぞ」


逮捕?嘘だ。僕のSIMの中のデータを見せれば、彼女との愛の日々を証明できる。「SIMに不可能はない!」僕は暴れ、警察署に連行されると、体内からSIMを取り出され留置場に丸2年勾留された...。


「それにしても酷い事件だったな」サメ顔の刑事が独りごちた。事件の概要はこうだった。女が男を洗脳し、夢中にさせたところで事故で記憶喪失。加害者であるはずの男は25年間、自分を洗脳した女に尽くした。女の自室からは男のSIMをハッキングした証拠を押収。歪んだ愛が、歪んだ愛を生んだ負の連鎖。両容疑者とも事件を忘れてしまった。人間と科学、罪はどちらにあるんだ?

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