↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
95/110

ミーガンの結婚行進曲ー13

 私たちを乗せた馬は夜闇の中をかけていく。町の中は誰もみな眠っていて、馬の蹄の音だけが響いている。


「夜でよかった」

「なにが?」

「王太子様と馬に乗っている女は誰だ、なんてことにならずにはすみそうだもの」


 無言で返すディーンに、

「何か怒ってる?」

 馬を走らせてるから無言なのは当たり前かな、とも思っていたが、妙に怒っているようなオーラを感じる。


「まあ色々」

「え? そうなの?」

 やっぱり怒ってる? と顔を見上げるが、またまた無言。


 馬はどんどん進んでもうすぐ町をぬけそうで。

 森が近づいてくる。

 もうすぐ家だ。


 ほっとした私は、

「ありがとう。適当におろしてもらえば」

 と言ったものの、聞こえてないのかまた無言で、馬も止まる様子はない。

「ディーン?」

 近づいたと思った森が遠ざかっていく。


「あ、嘘。あの、どこに」

 後ろに遠ざかる森を横目にあわあわしている私に、

「今日は黙って来てもらう」

 それだけ返された。


 私は馬から降りるすべもなく。

 更に道を走り続けた馬は、新たな町の中を進んでいく。

 まさか、と前方を凝視した私は、徐々に近づいてくるお城の大きな影に思わず肩を震わせた。


 城の中に連れて行かれ、バスケットごと、きれいな部屋に通される。

「疲れたろう? 少し休んで」

 と言われたものの、部屋を出ようとするディーンの服を思わずつかんでいた。


「ん?」

 という顔で見てくるが。はっきり言って、こんな場所は落ち着かないし、怒っている様子のディーンのことも気になって仕方ない。


「怒ってるんだよね?」

 ちょっとだけ目を見開いたディーンは少し笑うと、

「怒ってないと言えば嘘になるけど、無事で安心したんだ」

 と肩を抱き寄せる。


「本当なら医師にも見てもらいたいけど、それは嫌だろう?」

 こくこくとうなづいた私は、

「何もないし」

 肩をすくめたディーンは、

「せめて睡眠を取ってほしかったんだけど」

 まあいいか、俺もいたいし、とつぶやいたディーンは、私をソファに座らせた。


「バスケットから出してやったら?」

 というと、メイドさんに子猫のご飯や私用にお茶やお菓子を運ばせた。

「ごましお、ごめんね、狭かったね」

 ずっと寝ていたのか、出された子猫は、部屋の真ん中で大きく伸びをすると部屋中の匂いを嗅いで回り始めた。

 ディーンと2人、そんな様子をソファに座って見ていた。


「何だか変よね」

「こいつか?」

「うん」と答えた私は用意してもらったお茶に口をつけた。


 ごましおは私を助けてくれた。

 会ったときから人馴れしてて、私にもよくなついていた。かしこい子だなあとは思っていたが。

 助けてくれた後、何だかいつもと違っていた。


 私やディーン、周りを見て突然逃げ出そうとしたのだ。その場の全員で捕まえるのに大わらわ。なんとかバスケットに押し込んたけど。

 しばらくはにゃーにゃーうるさかった。バスケットの中であきらめたのか眠ってしまったようだが。


「まるで初めて会ったみたいだったわよね」

「うーん、まあなあ」

 とディーンもごましおの様子を眺めている。


「まあ、何にしても命の恩人だもんね」

 ちらりとこちらを見てくるディーンに、

「あ、もちろん、ディーンも、ありがとう。ご心配をおかけして」

「ったくその通りだよ」

 ふくれっ面でふんぞり返られた。


「怒ってらっしゃる」

「当たり前!」

 ディーンはテーブル越しにぐいっと身体を突き出した。

「隣国に行くつもりだったんだろう。何も言わずに」


 あ、やっぱりばれてる。


 へらへらと笑みを浮かべた私は、

「それは、その、ねえ」

「何が、ねえだよ」


 これは困ったが、今が話す最後のチャンスだと気が付いた。


「ディーン、えっと、王太子様、私が庶民なのはおわかりだと思いますが」

 いきなりの敬語に、ディーンが後ろに背筋を伸ばす。

「私、ノームの森に住むようになったのは事情があって」

 じっとこちらを見ているディーンはどんな風な表情に変わるのか、怖くなる。


「元々、ルドク市にいたの。ルドク市から追放になったんです。罪を犯して刑罰で町追放になったんです」

 うつむいて目をぎゅっとつむってしまった。

 ディーンの顔を見るのが怖い。

 何も言わず、こっちを見ているのか。

 あきれて何も言えないのか。


 ごましおがたたたっと部屋を移動した音だけが聞こえる。

 どうしよう。

 と、うっすら目を開け、上目遣いにディーンの方を見ると。


 ディーンは美味しそうに紅茶を飲んでいた。ゆっくりとソファにくつろいだ様子で。

「え? あの、聞いてました?」

「ん?」

 と目を上げたディーンは、

「知ってるよ」

 と一言。


「なんだ、え!? 知ってる!?」

 にやりとした笑みを浮かべてうなづいたディーンは、

「ミーガンは罪を犯してないよ」

 なんて言い出した。


 いったいどういうこと?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。