表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/110

ミーガンの結婚行進曲ー11

「あんたが仮によその国へ行ったとしても生きている限り王太子はあんたの後を追うからよ」

「そんなことわかんないでしょ」

「わかるわ!」

 ぴしりと言い切ったドリアーヌは、ぎりぎりと歯を鳴らす。


「あんたのことを王太子に進言したのよ」

「私のことって……」


 刑罰のこと?


「そうよ! 貴族の身分はなく、刑罰を受けて町を追放になったことよ」


 やっぱり。

 ドリアーヌの口から聞くなんて。自分から早く言えばよかった。


 がっくりしている私に、ドリアーヌはいまだ悔しそうに口をゆがめる。


「何よ、その顔。ディーン様にあんたのことをすべて言ったのに。だから何だって口ぶりで返されたわ。あんたなんて、何も持っていないというのに」

 今にも爆発しそうなドリアーヌは真っ赤に頬を上気させる。

「私は伯爵家の娘よ。あんたみたいな庶民の罪人より下なわけがないのよ」


 身分の差は嘘ではないけど。

 以前は友人だった。


 あの子は後輩だったけど、仲がいいと思っていた。


「あんたとディーン様が一緒になるなんて万に一つの可能性もないんですからね! 何を期待してるか知らないけど。ディーン様が何と言おうと、周りは認めないわよ。それにディーン様も私と一緒になれば自分の考えの間違いに気づくわ」


 あの子とは一緒に買い物したり、映画を見たこともあった。

 ミーガンとドリアーヌも一緒に笑って過ごしたこともあったはず。

 私やあの子、英莉ちゃんのように。


「恋愛ゲームしてるんですか? あっ、これ、私もしたことあるんです」

 それは「虹のゲート~3人の王子様~」

 そのゲームは私が転生したこの世界。

 彼女の一番の推しは王太子である、ディーンだったっけ。


「確かに私は不敬罪に問われたわよ。刑罰もうけた」

 私は静かに口を開いた。

「だから何? ディーンと一緒になれないのはわかってる」

 うつむいて聞いていた顔をまっすぐにドリアーヌに向ける。


「でもあなたには渡さない」


 ドリアーヌの口が「なっ」と開かれたがその顔にぴしりと指を突き付けた。


「彼にはもっと素敵な人が似合うのよ。あんたみたいなあばずれで心根の腐った人間、人の婚約者をわかってて奪うような、それも仲良くして信頼していた先輩から奪うなんて」


「な、なに言って」


 微妙に歪むドリアーヌの顔が、

「あなたのことよ、英莉ちゃん! あんたにディーンは似合わない」

 現代での後輩だった英莉ちゃんと重なる。


「彼にはもっともっときれいで優しくて身分ももっと高くて素晴らしいご令嬢が似合っているのよ。それはあなたでも、私でもない」


 言い切った私はじっとドリアーヌ、たぶん、いやきっと私がよく知る人物を見つめた。


「あ、あんた、先輩……」

 ドリアーヌは恐ろしいものでも見るように私を凝視している。


「そうよ。英莉ちゃん、久しぶりね」

「まさか、そんな」


 目を吊り上げたドリアーヌは、

「あんた、私たちの世界で生きてるじゃない!」

 と言いつつハッとする。


「そうか、そうなのね、会ったときにまるで知らない人間にあったような顔をされたわ。あれはそういうことだったのね」


 やっぱり、私、つまりこちらの世界のミーガンはあっちの世界の私に入り込んでしまったんだ。向こうの私の中身はミーガンで、私として生きている。


 わなわなと指を震わせたドリアーヌは、

「あんた、向こうではL&4Sグループの次期社長と一緒になって、こっちでもディーンと、なんでことごとく邪魔するのよ!」


 L&4Sグループの次期社長?

 そうなんだ、ミーガン、幸せに暮らしているんだ、よかった。


 って、待って、ってことは、ドリアーヌは向こうの世界にいるのかしら。私たちと同じように入れ替わっただけだとしたら。


「ねえ、英莉ちゃん」

「……」

「英莉ちゃん?」

「……もうっ! うるさい!」


 ドリアーヌは、顔を真っ赤にさせると、

「あんたなんて先輩でも何でもないわよ! うまくおだてたら、私の仕事もやってくれるし、楽だから付き合っていただけよ。雄大さんは私の方が可愛いし若いからあんたより私を選んだだけよ」

 わなわなと肩が震えてる。


「英莉ちゃん、私はあなたと仲良くして楽しかった思い出もあるわよ」

「そんなの」

「一緒に遊びにも行った。話題のカフェも行ったよね。一緒に好きなゲームのカフェも行ったじゃない。まさかその世界で再会するなんて」


「うるさいうるさいうるさい」

 頭をぶんぶんと横に振ったドリアーヌは、

「あんたなんて」

 と血走った目をこちらに向けた。


「ドリアーヌ様」

 先ほどからの私たちのやり取りをどうすればいいかわからず見ていたドリアーヌの手駒な騎士が恐る恐ると声をかける。


 そちらに振り返ったドリアーヌは、

「貸しなさい!」

 と騎士の持つ剣を手に持つと、

「うわーっ!」

 と私めがけて突進してきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ