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ミーガンの結婚行進曲ー7

「じゃあ」

 と口を挟んだ私の表情からわかったのか、メリガレットは自分の手元に視線を落とした。


「ジュド様には、隣国に行くことを伝えました」


 落としていた視線を私に向けた令嬢は、

「私、今は勉強に行きたいんです。もちろん、あの方のことずっとお慕いしてました。でも、何というか、このままもし一緒になれたとしても、他の方と結婚することになったとしても、今のまま奥様におさまるのは嫌なんです」

 と強く言い切った。横ではメイドさんが心配げにお嬢様を見ている。


 強い意志はわかっても、これが正しいのかメイドさんも悩ましいのかもしれない。普通の令嬢は年頃になれば結婚して、というのが普通の世界なのだから。


 だけど、色んな事があり、メリガレットの考えに影響を与えたんだろう。


 私は、

「メリガレット様、応援していますね。気を付けて行ってらっしゃいませ」

 とメリガレットの手をとった。


 頬を赤らめたメリガレットは嬉しそうに笑うと、

「ありがとうございます。ミーガンさんもよかったら隣国に遊びにいらしてください。そうだわ! きっとハーブは隣国でも評判になると思いますわ」


 そういって、しばらく来れないからと、お茶や匂い袋を買って帰ったメリガレット嬢。

 小屋の入り口で二人を乗せた馬車を見送りつつ、私はあることを考えていた。




「サヴァタニア王国か」

 つぶやく私に、ごましおが不安げに小さく鳴いた。

 メリガレット嬢が帰ってから、摘んできたハーブを乾燥させようと天井近くに下げていた。


「どうしたの?」

 なかなか賢い子みたいだから、私が何を考えているか察しているのかもしれない。

「大丈夫よ、あんたに悪いようにはしないから」

 そこまで言って、以前、クロにも同じようなことを言ったのを思い出す。


 あの時は、バッドエンド回避のためにこの地から離れようと考えていた。

 今は、ディーンのためにもここを離れる方がいいだろうと思いついたのだ。


 ここにいても一緒になるのは難しい。身分も違うし、刑罰を受けている身だし。ディーンが構わないと言ってもまわりはそういうわけにいかないだろうし。


 ディーンを納得させても、ここで暮らしつつ、ディーンがどこかのご令嬢と結婚する姿を見続ける勇気もはっきり言ってない。


 だから、メリガレットの話を聞いて、よその国に行くことが頭に浮かんできたのだ。

 メリガレット嬢が留学する国は女性が仕事を探すにも良さそうだし、移住するにはよさそうだ。


「お金は、ハーブの人気で結構ためてるし。仕事さえ見つかればなんとかなるわよ、ね」

「みゃあ……」

「そんな弱弱しく鳴かなくても、大丈夫よ」

 不安げなごましおだが、以前クロがいたように、猫でも家族がいてくれるのは心強い。


「さあて、持っていくものは必要最低限でいいとして。どうやって行くかよね」

 乗合馬車みたいなのは、隣町にはあるはずで。それに乗ってたらどこまでいけるのかがわからない。

「レラやフェリシアなら詳しいかも。聞きに行ってみようかな」

 と考えている最中、レラの方から来てほしいと手紙が届いた。


「馬車を送るので、来てもらえませんか」

 という手紙と言うより、言付けのようなメモだ。

 小さい馬車も一緒に家の前までやってきた。


「ごましお、どうしようか」

 家に置いていくのもちょっと怖い。大人猫ならいいけど、ごましおはまだ3か月ぐらいじゃないだろうか。

 森にさまよい出てもこわいし。

 よし、とバスケットを手にした私は、ごましおを中に入れた。


「向こうですぐに出してあげるからね」

 きっとレラやフェリシアも驚くし、本を読みに来ている子供たちが喜ぶかもしれない。


 もしよければ、レラたちに引き取ってもらうことも頭の隅で考えていた。

 よその国に行って子猫の食い扶持ぐらい何とかなるとは思うけど。どうなるかはわからないし。


「さあ、行きましょう。お待たせしてすみません」

 御者さんは小さくうなづくと、馬車で森を抜けていった。


 森を抜け、トフ村を過ぎ、メルクールの町に入っていった。

 レラとフェリシアの家はそこを曲がればすぐのはず。

 馬車から外をのぞいた私は首を傾げた。


「あれ? こっちだっけ?」

 タクシーと一緒で、慣れていない御者さんも間違うことはあるだろう。


「あの、すみません」

 私は馬車の窓から身体を乗り出すと、御者さんに方向が違うのだはないかと聞いた。


 御者さんは、うつむいたまま、

「こちらの方へお連れするように言付かってますので」

 と小声で答えた。


 つまり、いつもの家ではなく、別の場所に来いってことなのかな。

 何があるんだろう。

 不思議には感じつつも、レラたちの言うことだし、とその時はあまり疑問に感じていなかった。


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