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ミーガンの結婚行進曲ー6

 ミーガンに対しても恩人であり、悪いことをしてしまって申し訳なかったという気持ちのほうが大きい。その場にいた友人たちにはミーガンのことを勘違いしていた、実は恩人なんだと伝えたのだが。

 その時来ていた令嬢たちからどう聞いたのかわからないが招待したと言う話は本当だし。


 うなづいたメリガレットは、

「お茶会にいらしていただきました。けど、今はお友達です」

「あら、友達?」

 大げさに目を丸くしたドリアーヌは、

「森に住んでハーブを売ってるって聞いたけど」


 それは本当だ。


「ええ、そうですよ。ハーブは貴族のご令嬢の間でも人気なんです」

「だから呼んだの」

「まあそうですわね。それにとてもいい方ですし」

「いい方? でも庶民でしょう?」

「それは」


 嫌な女。

 ここのところフェリシアたちの影響を受けているのか、メリガレットは足を蹴ってやろうかと思ってしまう。


「庶民ではだめですの?」

「貴族は付き合う相手も選ばないとね」


 顎を上げたドリアーヌは、

「で? ミーガンが王太子と仲が良いという噂を聞いたんだけど、それは本当なの?」


 もともと王太子妃候補のレラやフェリシアとも交流を持つようになったメリガレットはそのことはなんとはなしに知っていた。

 ミーガンが行方不明になっていた王太子の命の恩人であるということは王室や貴族の間では知られている。

 王太子がミーガンに対して恩義は感じているだろうがそれ以上の好意を持っているみたいなことはなんとなく感じていた。


 これは牽制をかけてくるってことかしら。


「王太子様の命を救ったのがミーガン様なんですから」

「それは聞いてるわ。命の恩人とかって話でしょう?」


 ふふふんと笑ったドリアーヌは、

「でもそれだけなんでしょう? 褒美のひとつでも渡しておけばいいものを。ディーン様は本当に素晴らしい方なのね。庶民に対しても気を使われるなんて」

 勝手に言って勝手に納得しているようだ。


 これ以上かかわるのも面倒そうだし。

 メリガレットは「そうですわね」と適当に相槌を打つとその場を離れようとした。


「ちょっと待って。あなたまだミーガンのところにハーブを買いに行ったりするのかしら」

「はあ」

「だったら、王太子様はご結婚を控えているんだから図々しく親しくするのはよくないと教えてあげてちょうだい」

「はあ?!」


 何なの、この人。

 だけど。


「あの」

「何かしら」

「王太子妃様はまだ決まってはいませんよね」


「あら、うふふ」

 と笑ったドリアーヌは、令嬢たちが立ち話している様子をちらりと見ると扇で口元を覆う。

 たいしたことないじゃない、とつぶやくと、にこりとメリガレットに顔をむけた。


「誰が選ばれるか言わずともわかるでしょう?」

 自分が選ばれると決まっているとでもいいたいのか。


 さすがにかちんときたメリガレットは、

「王太子様はお優しくて常識のあるお方です」

「ええ、そうね」


 うっとりとした表情のドリアーヌに、キッとした顔を返したメリガレットは、

「人をさげすむようなことを言う人をお相手に選んだりはしませんわ」

「!」

「それに身分の差なんて気になさらないと思います!」

「そ、それは、ミーガンのことを言っているの!?」

「さあ、いかがでしょう」


 微笑みを浮かべたメリガレットは、

「ミーガンさんは身分は貴族ではありませんけど、どなたよりも正しく美しい心をお持ちです。王太子様が選ばれるのも無理はないと思いますわ」


 メリガレットはドレスの裾を翻し、

「失礼します」

 とドリアーヌの前から去っていった。


 後ろからギリリリと歯ぎしりする音が聞こえるような気がした。


「そんなことが」

「ええ、ちょっとすっきりいたしましたわ」

 ふううっと鼻息荒いメリガレット嬢。すっかりフェリシアや町に住む子供たちや庶民の影響を受けているようだ。ごましおが嬉しそうにメリガレットにすり寄っている。


「猫ちゃんにもわかるわよね」

「にゃ」

 すっかり意気投合したようだ。


「メリガレット様、私のことをかばってくださってありがとうございます」

「あらやだ、そんなつもりは。私、でも、ミーガン様は本当にいい方なんですもの。王太子様がお好きになっても」


 私は手をぶんぶんと横に振った。横でメイドさんも身分違いというものの重要性を理解しているのか、困ったような顔を見合わすと、メリガレット嬢の方を向いた。


「メリガレット様、今日はミーガン様にお伝えすることがあったのでは」

「あ、そうでした」

「どうされたんです?」


「あの、私、留学することになりましたの」

「留学?」

「ええ、隣国のクォルツ学園に」


 隣国と言うとサヴァタニア王国という国だ。内海沿いの穏やかな気候の場所だと聞いたことがある。


「ですから1年か2年か、こちらに来ることも難しくなりそうで。フェリシア様とレラ様のところにもお邪魔できなくなるので寂しいんですけど」

 しゅんとした表情で肩を落としてはいるが、その目はキラキラと輝いている。


「勉強に行かれるんですね」

「はい」

 うれしそうにうなづいた令嬢は、

「私、フェリシア様たちのところで子供たちに色々と教えるお手伝いをするようになって、もっといろんなことを学びたいと思ったんです。リスプール王国はもちろん良い国ですが、隣のクォルツ国は女性の地位向上が進んでいて勉強の場も多いんです。もちろん、それに伴ってお仕事の場も広がっているとか」


 レラやフェリシア、庶民の暮らしから影響を受けたんだろう。とてもいいことだと思うけど。留学するとジュドとは会えなくなるだろう


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