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ミーガンの結婚行進曲ー5

 テレンスさんが「交代が来ますので失礼します」と出ていってからもしばらくどうしようかと悩んでいた。


 彼女、王太子妃候補の一人のようだが。


 そうなのよね。


 やはり王太子妃となるとそれ相応の身分と教養が必要だ。

 レラ様は新たな道に進んでいて辞退されたけど。


 そういえは、王様に呼び出されお会いした時、ご令嬢の団体がお城に集まっているのを見た。

 ディーンはそういう話はしないけど、王太子妃候補のご令嬢は山のようにいるはずだ。年頃の娘のいる貴族は売り込むのに必死だろう。


 そういえば、メリガレットも王太子妃候補のひとりになるはずだが。


 先日、謝罪に来てくれたメリガレット様。

 私がジュドの偽婚約者になったときに魔法の力を借りて邪魔しようとしてきて倒れてしまった。それほどジュドを想ってたんだろう。密かに応援してるんだけど、あれから進展はあったんだろうか。


 なんてつらつらと考えていると、ドアがバーンと開き、件のメリガレットがメイドを引き連れ飛び込んできた。


「ミーガン様!」

「は、はい?」


 すっきりとした水色系のドレスがよく似合っている。前まではパフスリーブにリボンやレースがふんだんに使われたどちらかというと幼い感じのするお嬢様ドレスだったのに。刺繍が上品に入っていてすらりとした姿はすっかり大人の女性だ。


 恋って人を変えるのねえとつくづく。ドリアーヌも全然綺麗に変身してた。けど、あれは婚約者ではなく、王太子に恋いしたってことなのか。


「あの、あの」

 目の前のメリガレットは大人な姿にもかかわらず、顔を真っ赤に上気はさせ今にも倒れそうだ。

 横からごましおが驚いた顔でメリガレットをみあげている。


「落ち着いて、メリガレット様。どうしたんです?」

 まさかまた妙なものでも飲まされたわけではないだろうに。


 横からいつものメイドさんが、

「お嬢様、落ち着いて」

 と背中をさすっている。


「ほら、お水を飲んでください」

 と汲んできた水の入ったカップを手渡した。

 両手でカップを持ってごくごくと飲み干すお嬢様。


 メイドさんは眉を下げると、

「あのですね、ミーガン様。お嬢様は先日行われた王太子妃候補になられるお嬢様方とディーン様の顔合わせにおいでになったのです」

「そうなんですね」


 そういう集まりが密かにまたは公におこなわれているらしいことは知っていた。

 メリガレット様も参加させられているのでは、と考えていたところだ。

 ディーンは仕方のないことだからと流しているみたいだけど。そこにドリアーヌも出ていたんだろうな。


 メリガレットはお嬢様らしからぬ勢いでカップをテーブルに置くと、こちらをぐっと見つめてくる。

「ミーガン様が一番相応しいと、私、思います」

「は、はい?」

 息を吸い込んだメリガレットは手をぎゅっと握る。


「王太子妃にです!」

「いや、それはいくらなんでも」

 横からごましおが「にゃー」と鳴いて、「あらかわいい」と気づいたメリガレットは、

「ねえ、あなたもそう思うでしょう?」

 と頭をなでている。


 苦笑しつつ立ち上がった私は「お茶を淹れますね」と台所に向かった。


「私、お父様の言いつけで一応参加はさせてもらいましたがそんな気はないんです」

「うん、そうよね」

 答えた私は、

「メリガレット様にはジュド様が」

 言いかけたが、メリガレットは

「そ、それは」

 と顔を真っ赤にしてわたわたしている。


 こういうとこがかわいいのよね。

 運んできたお茶をテーブルに置くと、ありがとうございます、真っ赤なまま、ハーブティーのカップを口に運ぶ。


「それで? 会に出られてどうかされたんですか?」

「そうでした!」

 またも叫ぶように答えたメリガレットは、

「どうかも何かもありません!」

 と身体を乗り出した。


「ミーガン様、ドリアーヌ様をご存知ですか」

「え?!」

 まさか、またこの名前を聞くとは。メリガレットの友人ではないと思うが。目の前のメリガレットは首を横に振ると、

「あのかた、あちこちの令嬢にミーガンさんを知っているか聞いて回ってらしたんですよ」

 完全に呆れているようだ。


「そうなの?」

「ええ」

 うなづいたメリガレットは、思いっきり嫌そうに口をへの字にして腕組みをした。




「ねえ、あなた」

 声をかけられ振り返ると、きれいな金色の髪をハーフアップにして、流行りの小花を髪飾りをつけた令嬢が立っていた。

 このあたりではみかけないご令嬢だ。


 メリガレットはにこりと微笑むとはじめましてと挨拶をしたが、その令嬢は挨拶もそこそこ、

「あなた、ミーガンを知っているのでしょう? お茶会に招待したと聞いたわ」

 と身体を乗りだした。

「立場をわきまえるように言ったんでしょう?」

 可憐な花々が描かれた扇で口元を隠し耳打ちするように言ってきた。


 以前、ジュドをめぐってミーガンを蹴落とそうとしていたメリガレットは、思わず顔を歪めた。


 あのときは魔女の画策でおかしくなっていたのだ。だが、その話はメリガレットの具合が悪かったということになっている。

 魔女云々の話はまだ王室から厳戒令で話してはいけないことになっているのだ。

 そのことをメリガレットも忠実に守っている。

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