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氷上の秘密の恋人ー12(最終話)

 手を引かれて連れていかれたのは、以前助けてもらった湖だ。


 すでに夕方に差し掛かり、夕日が湖面に映えてオレンジ色に変わっている。


「きれいですね」

「そうだね。一度見せたかったんだ。怖い目にあったところだけど、きれいなところだから、いい思い出に変えてほしくて」


 横に立つデヴィッド様の横顔を見上げた。


「ありがとうございます」

 にこりとしてこちらに顔を向けたデヴィッド様は、少しだけうつむいた。


「僕がここで仕事をしてたのは知っているよね」

「はい。王室に残すための魔法の資料ですよね」

「そうなんだけど」

 何かまずい状態なのか。デヴィッド様は息を吐きだした。


「魔法についてまとめていくのはとても楽しいいんだ。だけどまだまだかかりそうなんだ」

 簡単には終わらないんだろう。魔法なんてお話の中の存在だと思っていたし。ゼロからの作業をおひとりでやっているんだもの。


「クララさんとマルガリータ様のお話を聞いてですよね」

「それももちろんなんだけど。魔法に使われたハーブとか植物や鉱石なんかを文言だけでなく、実際に収集する作業もしたいんだ」

「ハーブってミーガンさんが使われていた」

「そう、それもね。魔法と言っても薬のように使えるらしいし」

「そうでしたね」


 レラ様とハーブを買いに行って、あの時はデヴィッド様のお気持ちをレラ様に向けるための魔法の薬を、なんて頼んだんだっけ。

 その方と並んで夕日を見てるなんて。

 ふと、目が覚めたような気持ちになった。


「デヴィッド様」

「?」

「きっと素敵なお嬢様が現れますよ」

「え?」


「レラ様やフェリシア様とはご縁がございませんでしたけど、お嬢様のお友達のみなさん、素敵なお嬢様ばかりなんですよ」

 目をぱちくりとしたデヴィッド様は少しばかり口をへの字にした。


「メイベルはそれでいいの?」

「あ、え?」

 いきなり、さん付けでなく呼ばれ、ドキリとしてしまう。


「僕が他の女性と結婚してもいいの?」

「え、えーっと、だって」

「僕はメイベルがいいんだけど」

「……! それは」

「無理じゃないよ。僕じゃダメかな」

「そんな、ダメだなんて」


 ダメなわけない。だけど、どう考えても無理な話だ。


「僕が王家の人間だから?」

「そ、そうです」


 私は庶民だ。物語なら問題なんてすっ飛ばしてうまくいったりするけど。そんなわけにはいかないだろう。

「気持ちを聞かせて。僕は君が好きだ。ずっと一緒にいてほしい」

 向かい合うように肩に手を置かれ、真剣な表情を向けられた。


「あ、あの、私は」

「嫌い?」

 首を横にぶんぶんと振った。


「じゃあ好き?」

 目を見つめた私は小さくうなづいた。

 笑顔になったデヴィッド様は「よかった」と言うとぎゅっと私を抱きしめた。


「結婚しよう、メイベル」

「え、け、け、結婚!?」

「あの部屋にあったドレスは君用にあつらえてもらったんだ」


 部屋にあったウェディングドレスのこと?


「それから、うちの母は賛成してくれてるよ」

 思わず目を見開いてしまう。

「そんなわけ……」


「母上も色々とあったからね。それに何よりも王様が認めてくださってるから大丈夫」

 ウインクしたデヴィッド様は「あー、だけど」と上を向く。

「陰で何かと言う貴族連中もいるだろうから、ハームズワース伯が自分の養女ということにしよう。そしてここで結婚式をしようって言いだしてね」

「あ、練習ってそういう……」


 デヴィッド様は「先走りすぎかな」と首をかしげてこちらを見つめてくる。デヴィッド様ってずるい。そんなふうに感じつつも目が離せないでいると。

 いきなり。


「デヴィッド様って天然たらしだったのね」

「何ですの? 天然?」

「レラ様のお母さまの書かれたお話に出てきましたよ」

「ミーガン、ああいう話好きだよな」

「ディーン様?!」


 後ろの方から聞こえてくる声に、デヴィッド様が眉根を寄せると振り返った。

「全部聞こえてますよ」


 見ると、レラ様、フェリシア様、ミーガンさんにディーン様まで木に隠れるようにしてこちらを見ていた。


「デヴィッド、俺はお前が心配だから。こんな風に覗き見するのはよくないって言ったんだぞ」

「え! ずるい!」

 とミーガンさんが声を荒げ、フェリシア様も「そういうとこどうかと思うわ」とぶつぶつ言ってレラ様がくすくすと笑ってる。


「ったく。どこから見てたんですか」

「えーっと、植物を探すとか何とか」

「ハーブよね」

 答えるディーン様にミーガンさんが嬉しそうに言っている。


「最初からじゃないですか」

 頬を赤らめたデヴィッド様が腰に手を当て大きなため息をついた。


 が、いきなり、レラ様が「それで?」

「メイベル、デヴィッド様と結婚してお仕事に一緒について行ってあげるんでしょう?」

 にこっと小首をかしげるレラ様に、フェリシア様が、

「しばらくお仕事であちこちに行くことになりそうなんでしょう?」


「そっかあ、メイベルさんと離れたくないから早く結婚したいのね」

 ミーガンさんがうんうんうなづき、ディーン様が感慨深げに、

「デヴィッド、すっかり大人になったんだなあ」

 なんて言われてる。


「もう、いい加減にお屋敷に戻ってください!」

 怒るデヴィッド様にわいわい言っているレラ様たちの姿に思わず吹き出していた。


 デヴィッド様とずっと一緒に過ごしていく、それはとてもうれしくて幸せなことだけど大変なことも多いだろう。だけど、レラ様たちとこんなふうに楽しく過ごしていけたら、これ以上のことはない、なんて思っていた。


お疲れさまでした。

デヴィッド&メイドのメイベルさんのお話はこれで終わりです。

ミーガンのお話に出てきた他の登場人物にスポットをあてて書いてみましたが、どうにもラブラブシーンがない! ですね……

次回はミーガンの続きをあげていきたいなとは思っているのですが。これまたラブラブシーンは少なそうな、いや、なさそうな気がしております。

アップするまでもう少しかかりそうですが、またよかったら覗きに来ていただけたら嬉しいです。

お付き合いありがとうございました。


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