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氷上の秘密の恋人ー8

「メイベルさん!  ダンスパーティがあるんですって」


 いきなりサリーに言われた。

 もう数日で帰る、それまでにまだ教えたいこともあるのだが、サリーはすごいスピードで廊下をやってきた。


「ダンスパーティ?!」


 待って待って、何でまた。


「メイベルさんたちがもう帰られるでしょう? だからパーティをするんですよ。でも若いのがいるんだからダンスもしようってハームズワース様が」


 ああ、そういうこと。だけど、パーティと言うことはやることがたくさんだということで。


「サリーさん、マリーさんも呼んできてちょうだい。あと、マルガリータ様にも準備のことを相談しないと。あ、クララさんと料理長にも」


 あわててダンスパーティ準備に取り掛かった。だけど、ダンスってするほどの人数がいるとは思えない。とりあえず、みんなで食事ができる程度に考えておけばいいか、と思っていたが。


 ばたばたと準備をしているとハームズワース伯に呼び止められた。


「いやあ、パーティは久しぶりだ。もう何十年とすることもなかったからなあ」

 とうきうきしている。お子様はいらっしゃらないと聞いていたから、久々のパーティが嬉しいのかもしれないが。


「メイベルさん、村からも若いものを呼ぶからよろしくな」

「へ? 若い者? いったい何人ですか」

「あー、何人かなあ。それは他のもんに聞いてくれ」


 えーっ、伯爵さま? と引き留める私の声も聞こえないのか、フオッフオッフオッと笑いながら去って行ってしまった。


「たぶん、若い人の交流の場としても開いてやりたいんじゃないかしらねえ」

 と言う料理人のおばあさんは、

「料理は5倍ぐらい増やしますね」

「5倍!? そのぐらい来るってことですか?」

「だと思いますよ」


 確認に厩のおじいさんに聞いても、従僕のおじいさんに聞いても、

「伯爵がうちの孫たちを呼べって」

「私の家にも若いのがいるので、呼んでいいそうです。村には独身の者はいますが、既婚者も呼べとおっしゃってたので」

「はあ」

「あとから人数を割り出しておきます」

「よろしくお願いします」


 まじでダンスパーティをする気らしい。

 結局、そういったパーティに慣れているバロワン様、マルガリータ様の手もお借りして何とかパーティを行えることになった。


「ふう、何とか始められてよかった。滞りなく終わるのを祈るのみだわ」

 ハームズワース伯の希望通り、屋敷に関係してる人たちの家族や親せきや村の人たち、多くの人が参加してくれた。


 ダンスにはさすがに村の人たちも躊躇していたが、バロワン様と奥様が最初に踊ってくれて、クララさんやカークおじいさんも楽し気に参加、それを見て他の人たちも楽しそうに踊り始めた。


 無事終わりそうでよかった。


 侯爵家でも夜会やパーティの準備経験はあったものの、こんなに少人数で勝手の分からない場所での開催は緊張した。


 それももうすぐ終わる。


 外に出て息を吐きだした私は、長い窓を背に、中から聞こえる人々の楽しそうな声を聞きつつ丸い月を見上げていた。


「メイベルさん」

 振り返ると、クララさんとマルガリータ様が立っていた。

「今日はありがとう、お疲れ様」「明日には帰るのね」


 うなづいた私は、

「お二方も色々とありがとうございました」

 二人のおかげで助かったともいえる。いまだ魔法使いだなんて信じられないが。


 にこりとして顔を見合わせたふたりは、

「これがあなたにしてあげる最後の魔法になるかしらね」

「あら、でもまたここに来てくれるでしょう?」

「はい?」


 首を傾げた私に、二人は何やらぶつぶつと言葉をもらす。

 それはまるでよその国の言葉のような、聞いたことのない言葉の羅列のような。


「あの、何を」

 言いかけた私は、目の前に霞がかかるように白い空気に包まれていくのがわかった。でもそれは暖かい不思議な感覚で。

 すぐに透明な空気に変わっていき、腕や頬や肌にあたる部分に何かがまとわりつくような感じがして。


「え? これ」

 見下ろすと、見たことのないような服、裾の広がったドレスを身につけている。


「ほら」

 と背中に手をおかれ、目の前の窓に自分の姿が映っている

 水色から青い色へとグラデーションのある色をしたドレス。大きく深めの襟ぐりや広がった袖口にフリルやレースがあしらってあり、広がったスカートはお嬢様のドレスを思い出す。そのドレスにあわせるように長くした髪をハーフアップにして青い花の髪飾りがついている。

「これ、私?」


 これが魔法の力なの?


 二人を見ると、笑顔で返され、背中を押された。

「さあ、王子が待ってるわよ」


 庭に円錐形の木々が規則的に並んで道を作っている。少し小高い丘のようになったところまで道は続き、そこに立っているのは。


「デヴィッド様?」

「メイベルさん?」

 驚いた顔でこちらを見ていたデヴィッド様は、すっとこちらに手を伸ばした。


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