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ジュド・ロックナーの恋愛事情ー9

 フェリシアたちから話を聞いた数日後俺は自室で、ぼんやりと本を読んでいた、というより、ページをただ捲っていた。

 ぼんやりと自室の窓から外を見ると、いつもとは違う地味な服に身を固めたアンドリューズの姿が見えた。


「あいつ、何しに来た?」

 すぐさま、ステファンが俺のところに知らせに来て、今、目の前にアンドリューズが膝をそろえて座っている。


 まじでどうした?


「珍しいな、俺のところに来るなんて」

「そうなんだが。その、何というか」

 言いにくそうにうつむいていていた顔をいきなり上げた。ぐいっと身体を乗り出してきて思わずのけ反った。

 真剣な顔が目の前で。嘘だろ。


「そういう趣味はないぞ」

「すまなかった」

 いきなり頭を下げた。

「はい?」


「お前の噂は、俺のことで、俺の仲間が広げたんだ」

「は?」

 俺の仲間って。アンドリューズの取り巻きか。同じような貴族の息子が数人、いつもつるんではいたが。あいつらが俺の噂って?


「どういうこと?」

「俺、色んな令嬢やご婦人とお付き合いがあったのは知ってるよな」

「ああ、次から次に忙しそうだった」

 俺の言葉に眉を八の字にしたアンドリューズは、

「どの人とも真面目に付き合ってたんだけどな」

 そんなことは知らないが。浮名を流していたのは本当だ。


「それで?」

 目をしばしばさせたアンドリューズは、

「だから、その、俺と女性の付き合いをお前と女性が付き合っていたっていうふうに変換させていたっていうか、何というか」

「?」

「お前、ジュド様が浮名を流しいていた風な噂を流してたんだ」

 すまない! とまたもや頭を下げた。

「俺の浮名の元は、お前か」

 だからか。フェリシアたちが俺を痛ましそうな顔してみてたのは。


 同じ年頃の貴族の子供たちは家庭教師や学園で一緒に学んぶのが普通だ。王太子のディーンや俺、デヴィッドも学園に通ったり、家庭教師に学んだりしていた。学園に通うのは、将来、共に国のために働くからであり、位の差は無く、親交を深める意味合いが強かった。

 が、そのころから俺を嫌ってるなあとは感じていたんだ。


「何でだ」

 頭を下げたままのアンドリューズはちらりと視線を上げた。

「それは」

「それは?」

「それはお前も悪いんだぞ!」

「は?」


 アンドリューズはすっくと立ちあがると、

「ステファニー・ティエールを忘れたとはいわせないぞ!」

「ステファニー?」

「そうだ、ステファニー・ティエール、ティエール伯の娘だ」


 胸に手を当てたアンドリューズは、

「金色の巻き毛に赤いリボン。大きな青い瞳に長いまつ毛。サクランボのような唇に陶器のような肌。まるで天使のような愛らしい笑顔」

「は、はあ」

「俺は俺は、結婚するならこの子しかいない! と思ったんだ」


 早い話が一目ぼれしたのか。だが、ステファニー? そんなかわいらしい女性なら忘れそうにないんだが。


「なあ、それは何歳の」

「覚えてないのか!」

「いや、その」

「5歳だ! 5歳!」

「5、さい?」


 5歳と言えば、初めて貴族の子供同士で顔を合わせた頃じゃないか。勉強というより、親と一緒についてきて、親が仕事をしている間に顔合わせよろしく一緒に遊んだときのことか。


「あんな愛らしい娘は今も会ったことはない!」

「じゃあ、その子と付き合えばいいじゃないか」

 何も色んな女性に手を出さないでも。と非難めいた声を出したが、ものすごい顔して睨まれた。


「付き合えるか! あの子は、ステファニーはお前が好きだったんだ」

「え? そうなの?」

 かー! と声を上げたアンドリューズは、

「それも知らなかったのか、お前ってやつは」


 そういわれても。あれ? だが、そんな名前は聞いたことがないんだが。


「あの、ステファニーさんは今は」

「いないよ。隣国に引っ越したんだ。父上がお亡くなりになって、母親の田舎にな。それも6歳になる前だった」

 肩を落としつつ語るアンドリューズに、俺はかける言葉がみつからなかった。というか、どういえばいいんだよ。


 ふっと気付いたように顔を上げたアンドリューズは、

「メリガレット嬢も隣国に行かれたそうじゃないか」

 と髪をかき上げた。

 いきなり彼女の名前が出て驚いた。


「ああ、まあそうだな」

「オペラではかっさらっていかれて腹も立ったが、もうそれもいいんだ」

 にかっとしたアンドリューズは、

「つまり、お前も俺と同じってことだ」

「……」


 開いた口がふさがらない。


 凝視している俺に気づかないのか、うんうんとうなづきつつ、すっくと立ちあがったアンドリューズは、

「まあそういうわけだ。お邪魔したな」


 颯爽とドアに向かいつつ「これで言われたことは済んだな」と言う声がかすかに聞こえた。

 あいつ、新しい母親か父親に言われて来たに違いない。


 にしても。


「失礼な奴! お前と一緒にするな!」

 閉まってしまったドアに向かって本を投げつけようとした。


 が。

 あいつが言っていることも当たらずとも遠からずと言うべきか。



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