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ジュド・ロックナーの恋愛事情ー5

「ジュド様」

 顔を上げるとミーガンが眉を下げニコリとした。

「メリガレット様、ここに来たんですよ」

「え? ここに?」

 うなづいたミーガンは、

「謝りに来てくれたんです」

 と言った。




 メリガレット嬢が来たときは驚いた。

 ドアを開けると、目の前にうつむいて立っていた。横には見たことのあるメイドさんが頭を下げていた。


「あ、お久しぶりです。どうぞ」

 と家の中に招き入れつつ「お体の具合はどうですか?」と聞いた。


 お茶会で倒れてから、よくなったとは聞いてはいたが、あれ以来会うこともなく過ぎていた。

 メイドさんが答えようとしたが、いきなりメリガレットが頭を下げた。


「あの、ごめんなさい!」

「え? あ、あの?」

 あわてて側に寄ると、メリガレットは頭を下げたまま、

「お茶会で大変なことを。それに私のためにハーブを取りに戻って死ぬ目に合われたって」


 ああ、あのこと。


「私のためにハーブを取りに行って殺されかけたって聞いたんです。私、ちょっとおかしくなってて、あのときのお茶会の時のことはあまり覚えてないんです。でもミーガン様にご迷惑をおかけしたみたいで。だからそのことを謝りたくて」


 私は、メリガレットの肩をそっと持ち上げた。

「顔を上げてください。メリガレット様は何も悪くないんですから」

「え、でも」


 にこりとした私は、

「あれは、薬のせいなんですよ。それに抗おうとしたから頭痛がひどかったんです。それはつまり、悪いことをしたくないっていうメリガレット様の心が戦っていたってことです」


 ハッとした表情のメリガレットは顔をあげ、小さな声で「ありがとう」と呟いた。

 コリンヌと名乗ったメイドさんも頭を下げた。


「とにかく、そんな頭を下げないでください」

 と言いつつ、お茶を出した。




「そんなことがあったのか」

 と言うと、横からフェリシアやレラ嬢が、

「じゃあ、そのあと我が家にも寄ってくれたのね」

 と言い合っている。


「そっちの家にも行ったのか、あのお嬢様」

「そうよ。そんな悪い子じゃないわよ、ねえ」

 と言うフェリシアにレラ嬢も「そうですわよ。あの時はいつもとは違っていたんですわ」

 ミーガンも「そうそう」とうなづいている。

「本当はとてもかわいい人なのよ。素直すぎるから、薬が効きすぎたんだと思うわよ」


 ミーガン家をあとにした俺は、あのあと3人が何かを企てていたとはまるで知らなかった。




 今、人気のオペラ鑑賞。

 各市を回って公演している「ギレット嬢の結婚」という題目は若い女性を中心に大人気となっている。

 城下町であるルンタリオ市でも公演が決まっている。


 たぶんそれに行く気だろうなとは思っていた。

 ただ、公演は何日かあるわけで、いつ行くかはわからない。


 自室の窓辺でもんもんと考えていた俺はハッとした。

「何悩んでんだ、俺は」


 だいたい、彼女には注意した。

 アンドリューズに気を付けるようにきちんと言った。

 それに対するお嬢様の答えは反対のものだったが。

 何も俺が気にすることはない。ちゃんと注意したんだから。こんなに思い悩むこともないんだ。

 そう思いつつも、アンドリューズの下卑た笑みが頭をちらついてイライラした。


「ジュド様」

 ステファンが部屋に入ってくると、

「お出かけの準備を」

 なんて言い出した。


「お出かけ?」

 今日、どこかに行く用があったか? 何も思い出せないが、まさかメリガレット嬢のデートの心配が頭を占めていたのだろうか。ぶんぶんと頭を横に振った俺は、さも知っているように、

「いや、まだ用意はしていない」

「そろそろご準備しませんと」


 心なしかステファンの口角が上がりふるふるとしているような気がしたが、俺は「わかった」とうなづいて返した。


 さあさあ、と着せられた服は。


 薄い水色系で、長めなウエストコート、大きいカフにも絹糸等で華やかな織り柄が施されている。首元のジャボは折りたたまれた裾にだけレースがありカメオのブローチ。


 これって。どこかで舞踏会か夜会か? まさかまたお見合いみたいな夜会を開かれているのか。

 うんざり顔の俺にステファンは「お似合いです」とにっこり。

 まあね、そりゃ、似合うのはわかってるけど。


「なあ、行かないとダメだよな」

 つい弱音が口を出る。

 ステファンは、

「行かないとディーン様に怒られますので」


「へ? ディーン? 何で」

 あれ? 夜会かと思ったがもしかして貴族会議? それにしてはちょっと派手だよな、この服。

「ともかく行きますよ、そろそろ出発されないと」

 ほらほらと背中を押され、馬車に押し込まれた俺は、いまだ何かわからず首をかしげていた。


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