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ジュド・ロックナーの恋愛事情ー4

 ミーガンのことは別に何とも思ってはいない。いやほんとだよ、もうね。

 いないけど、会って話すぐらいはいいだろ。

 なんとなく、相談と言うか聞いてほしいこともあるし。

 これが魔女の力かも。あいつは魔女じゃないって言うだろうが。


「ジュド様?」


 森の家の前で兵士にストップをかけられ、俺がジュド・ロックナーだとわかると、やっと家の中に入ることができた。


「よおっ、おっ、レラ嬢、フェリシアも」

「何、いちゃいけないみたいないい方ね」

 腕組みをしたフェリシアが睨みつけてきた。


「そんなことないだろ。それより3人でお茶会か?」

 3人そろって、テーブルについている。テーブルには、作業中なのかハーブと、個々のカップも。


「そんなとこかしらね」

「よかったらジュド様も」

 とレラ嬢がクッキーの乗った皿を俺の方へと差し出す。

「あ、これレラ嬢が焼いたんでしょう? とても美味しかったです」

 笑顔で返した俺は杏子ジャムが乗ったクッキーをつまんだ。


「あら、デヴィッドさまですか?」

「ええそうです、さきほどまでデヴィッドのところにいたんです」

 と答えると、フェリシアが顔をしかめる。


「よほど暇なのねえデヴィッド様はおいそがしいんだから手伝う気がないなら邪魔しないのよ」

 まるで母親のように諭された。

「うっ」

 町での暮らしですっかり気心知りすぎて扱いが前にもましてぞんざいな気がする。


「フェリシア様ったら」

 と眉を下げつつも苦笑したレラは、

「ジュド様、ミーガン様に何かご相談でお見えになったんじゃありませんの?」

 目をぱちくりとさせたミーガンが、飲んでいたお茶から顔を上げる。

「そうなの? 何? ですか?」

 いまだ、敬語とくだけた物言いがごちゃごちゃ気味だ。それにしてもそう面と向かって聞かれると。


「あ、いや」

 と、言い淀んでいると、フェリシアが、

「昨夜は夜会があったんでしょう?」

 これまたずばっと聞いてきた。


 これには、ミーガンもレラも妙に反応してくる。

「へえ、そうなの?」

「あら、素敵な方にお会いできまして?」

「まさか」

 つい逆らうように言ってしまった。実際、踊ったのは友人の奥様だけだったし。


「まさかって。場所はあのメリガレット様のところでしょう?」

 あきれ顔のフェリシアにレラも、

「ダンスされましたの?」

 と無邪気に聞いてくる。俺は淹れてもらったお茶に口をつけると、

「いや、彼女はアンドリューズと踊ってましたよ」


 え? という顔の3人


「アンドリューズ様って、クルエット公爵の」

 と言ったレラは、

「お父様は私の父の下でお仕事されてますのよ。すごく真面目なな方で」


 目を見開いたフェリシアが、

「ああ、アンドリューズってわかったわ。髪の毛をこうやって手で」

 と自分の髪をかき上げる仕草をして見せる。


「何か嫌な感じ」

 というミーガンにフェリシアは「そうその通り!」と面白そうにクククと笑う。


「もうお二人共、ダメですよ、お会いしたこともない方なんですから」

 たしなめるレラに、フェリシアが、

「あら私、声かけられたことあるのよ」

 と爆弾発言。いや、アンドリューズならありか。


「え? そうなんですの?!」

 声が裏返ったレラ嬢は「大丈夫でしたの?!」とフェリシアに詰め寄っている。


「大丈夫大丈夫。ああいうタイプはあしらい慣れてるから」

 町育ちのフェリシアにはなんでもないことのようだ。だが、世間知らずのお嬢様ではどうだろう。


「ねえ、ジュド様、メリガレット様のこと心配なんでしょう?」

 ミーガンにどストライクに突っ込まれる。

「いや、それは」

 うつむいて唸っていた俺はバッと顔を上げた。


「アンドリューズのことは知ってるやつは知ってるが、いつも色んな女性と付き合ってるというか遊んでるんだ。相手も遊んでもいいって相手だから問題にはなってないが」

「そんな人なんだ」

「ああ、男連中は知ってる。女性も知ってる人は知ってるが、親にはなぜかバレてなんだよなあ」

 不思議な話だが、なぜか親連中には才色兼備の男だと映っているらしい。父親がお堅いお偉いさんだからだろうか。


「私はお会いしたことないし、お噂もよくは」

 というレラ。

 さすがに王太子妃候補筆頭には声なんてかけれないだろう。

「それはねえと」言い合うフェリシアとミーガンもそこらへんは気づいているらしい。


「ともかく、そんなやつとダンスして、次のデートまで」

「あらら、そうなの?」

「どこに行くのかしら」

 フェリシアもミーガンも身体を乗り出し、レラ嬢は眉をひそめてる。


「たぶん今流行りのオペラ鑑賞だろ」

「それはまずいわね」

 とフェリシアは腕を組む。


「どうして?」

 素直に聞いてくるミーガンはオペラの経験はないようだ。フェリシアもなさそうだが、町育ちはいろいろなところから情報だけは得るからなあ。案の定、にやりとしたフェリシアは、

「ミーガンさん、ディーン様と行ったことないの?」


 うなづくミーガンにフェリシアは、

「オペラは個室があるのよ。上の階にバルコニーのようになったとこがあってね。合いびきとかで使われるのよ、ねえ、ジュド様」

「ああ、あ? いや俺は知らないよ」


 悪そうに笑うフェリシアにへえ〜と妙に納得してるミーガン。レラ嬢はあらまあと俺を眺めるのはやめてほしい


 確かに名前のせいなのか寄ってくる人間は多い。が、まだきちんとしたお付き合いをした人はない。一応、自分の身はわかってるつもりだし、もめたり一族の名を汚すようなことはしていない。


 ただ、


 なぜか俺自身も知らない浮名が流れていたが、向こうから寄ってくるのを牽制するのにちょうどよくてそのままにしていたんだ。


 かなり浮名のほうが知れ渡っているのかも。メリガレット嬢にまでそんな目で見られていたとは。

 いや、そんなこと気にしなくても。

 思わず頭をブンブンと横に振った。


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