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魔女の言い分

「あなた、フェリシアのおばさん?」

「おばさんって名称は気に食わないけど。そうよ」

 うなづいた魔女はかぶっていたフードをずらした。


 マルガレータ・バロワン伯爵夫人! あの美魔女だよ。


「あの、でも私は何も」

「何もしてないっていいたいの?!」

「は、はい」


「ディーンの時は何年か眠らせる薬を飲ませたけど、なぜか行方不明になってくれて、結局うまくいったと思ってたのに」

「え? そうなんですか?」

「そうよ。なのにデヴィッドまでいなくなっちゃって。でも」

 息をついた夫人はキッと顔を上げた。

「デヴィッドがいないならいないで仕方ない。フェリシアが王太子妃になれば問題ないと思ったわ。なのにあの子、王太子妃にならないなんて言い出したのよ! ならなくても大丈夫って何が大丈夫なのよ! まったく大丈夫じゃないのよ!」

 フェリシアは確かにそんな事を言っていたが。

「それはフェリシアの意思で」


「だーかーら、フェリシアの気持ちを変えるような魔法をかけたんでしょ! 自分が王太子妃になるために!」

「じょ、冗談じゃない」

 そんなこと思ってなんて。


 うつむき、息を大きくはきだした伯爵夫人は、

「そうよね、ジュドを好きなわけでもなんでもないんですものね」

 そうよ。もしかして婚約者のふりのことを言っているのなら。

「そうです。あれはジュドが」

 言いかける私にかぶせるようにマルガリータ夫人は、

「あんたが好きなのはセロンなんでしょ!」


「はい? セロン?」

 目を瞬かせる私に、美魔女の叔母さんは口の端をひん曲げる。

「セロン・バロワンよ! 知らないなんて言わせないわよ」

 バロワン、伯爵のことか、フェリシアの叔父さんのバロワン伯爵。


 え? でも私が?


「あんたが夫に色目を使っているのはわかっているのよ!」


 何言いだした、この人。

 目が吊り上がってまじに怖いんですけど。


 こちらが口をはさむ間もなく、マルガレータ夫人はうつむくと、

「魔女と言うからどんなおばあさんかと思ったら若いお嬢さんだったよ。なんて嬉しそうに報告してきたわ」

 叔母さんには内緒だってフェリシアは言ってたと思うけど。隠し事ができないタイプなのかも。にしてもわざわざ報告しなくても。


 夫人はうつむいたまま、

「フェリシアのいい友人になってくれると思うんだ、ですって」

 肩がわなわなと震えだす。

「ハーブも人気らしいよ。頭痛や風邪にも効くそうだ。そうだ、うちの庭の一部でハーブの農園を作ってはどうかな。農民の仕事も増えるし、薬として卸すこともできる。その管理としてミーガンさんに働いてもらえたら」


 そんなことを言ってくれてたのか。

 バロワン伯爵のことは確かに気になっていた。理由もわからず、まさか一目ぼれ? とも思ったが、なんだか違うような気もして。とにかく気になる理由がわからないでいた。


 だけど、夢なのか、現実なのか、元の世界に一瞬戻った時、虹のゲートのゲーム画面に映るフェリシアのスチルを見てハッとした。そこには、後ろのほうにフェリシアの叔父さんと叔母さんが描かれていた。

 その姿はバロワン伯爵と私、ミーガンだった。


 私がこの世界に入り込み、流れが変わってしまったが。もし私が来なければ、ミーガンはバロワン伯爵と結ばれていたのだろう。だから妙に気になっていたんだ、お互いに。

 そんなことをこの人に伝えたところで納得してもらえるとは思えないが。


「あの、伯爵夫人」

 何と言ったらいいかわからないまま声をかけたが、うつむいたままぶつぶつと言っていたマルガリータ夫人はばっと顔を上げると、

「どうやって言いくるめたの、いえ、どんな魔法をかけたの!?」


 だから違うんですってば

 目が三角で、浮気に怒りまくる奥さんなんですけど。

 それにしてもさっきから魔法魔法って。


「そんな魔法なんて使えませんから」

「いい加減嘘ばかり言わないで本当のことを言いなさい! 誰から習ったの。まさかと思うけどクラウディアリーゼ・ヘンケル、じゃないわよね」


「クラ? あの誰ですか」

「あんたに魔法を教えた魔女よ」

「え? 嘘。魔女って本当にいるの? もう伝説みたいなもんじゃないの?」

「もういいわ、いつまでもそうやってしらないふりをしてなさい。デヴィッドの責任もあんたにとってもらうわ」

 そういうとマルガリータ夫人は弓を構えなおした。


 嘘でしょ?


 弓を向けたままじりじりと間合いを詰めてくる

 そのまま私も後ろに下がっていく。


 横にダッシュすべき?

 だがかなりの近距離で矢を放たれてはどこかに当たってしまう。


「そっちは崖よ。そのまま落ちてくれれば事故ですませれるからありがたいんだけど」

 丘になったこの場所。森から抜けるとある程度広さのある野原、その先は切り立った崖になっていて、崖の下も野原、そして森が続く。


 お花が咲いてのどかな野原だが、5階建てはありそうな高さの崖から落ちたらまずいことはわかる。


 だけど逃げる場所がない。

 息を吸い込んだ私。

 そのまま落ちろといわんばかりに近づいてくるマルガリータ夫人。


 夫人に向かっていきなり突進したら。

 その前に矢を身体に受けることになる、わよね。


 どうしたらいい。

 頭の中で考える時間もこれ以上後ろに下がる間隔ももうない。


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