犯人捜しに燃えるお嬢様
ジュドのお城にやってくるのも何度目だろう。
前にも通された部屋に行くと。
「レラ様? フェリシア様も」
「ミーガンさん!」
といきなりレラが抱き着いてきた。フェリシアも心配そうな表情を浮かべてる。
「あ、あの一体、どうしたんです?」
身体を離したレラは、
「どうしたじゃありません。危ない目にあったと聞きました」
「危ない目?」
キョトンとする私に、フェリシアが、
「私、メルクールまで出てたのよ。そしたら、ミーガンさんが倒れてきた丸太に押しつぶされたとか、変な行商に化粧品を売りつけられたとか」
「ほかにも聞きましたよ。お家にネズミが出て、針の山を飲まされたとか」
どういう話よ。
噂話もここまで尾ひれがつくとまったく別の話だ。
「だいぶ、内容が違うみたいです」
と両手を広げ、
「ほら、なんともないですから」
本当に? と私の周りをぐるぐると回るレラとフェリシア。ついてきたクロはあきれ顔を向けてるし、きなこはソファにちょこんと座ってこっちを見ている。
「ともかく、何があったか教えてよ」
と部屋の主のジュドがテーブルセッティングされたソファを指し示した。クロが訳知り顔でソファに飛び乗ると「ニャー」とこちらに顔を向けてきた。
息をついた私は、家であった小さな事件の数々、丸太騒動、怪しげな行商の話をした。
「ね? たいしたことではないでしょう?」
家であったことなんて、子供のいたずらみたいなもんだ。
だが、レラもフェリシアもジュドさえも顔色を変え、真剣な顔を向けていた。
「その行商、女の恰好してる男だったのか」
というジュドに「たぶん」と答えた私は、
「あのときの2人組に似てる気もするんですけどね」
ますます顔を曇らせたジュドは、
「お茶会はやめたほうがいいのでは?」
と私ではなく、レラとフェリシアに顔を向ける。
「そうですね」
「うーん」
と唸る2人に、私は口角を上げた。
「いいの? 行かなくても」
「ニャー!!!」
とクロが横から声を上げた。
「え? 行くの?」
と言っているように思えるんだけど。
途端にフェリシアが「行きましょう!」と立ち上がった。
レラも、小さくうなづくと、
「そうね、行きましょう」
顔を合わせた2人は、
「行って犯人を捕まえるのよ!」
ちょちょちょ、何言ってるの!?
「犯人って」
「そうだぞ。危ない真似は」
ジュドも焦って止めに入ってくるが、意気投合の2人のお嬢様は止められないようで。
ふたりしてこちらを向くと、
「さあ、用意しますわよ」
「大丈夫、私たちも行きますからね」
え?
「えーっ?!」
ジュドと2人、叫んでる。2人の令嬢は、目を細めると、
「ジュド様も一緒にいらしてくださいませ」
「陰から見守ってくださいよ。未来のお妃さまになってくださるかもしれない方なんですからね」
ねー、と言い合う女子高生みたいなふたりに、私は盛大なため息をついた。
あのあと、お茶会までの短い時間にレラとメイベル、フェリシアに取り囲まれ、衣装替えとメイク、ヘアセットと、まるで花嫁の衣替えだ。
結局、髪はおろして白い小花のヘアアクセを飾られ、グリーン系のドレス。ちょっと妖精っぽい。
「素敵」
「ホント、じゃあ行きましょうか」
今にもドアから出ていこうとする2人に、私はストップをかけた。
「お二方、犯人を見つけたいんですよね」
「もちろんそうよ」
声をそろえる2人は意気込んで答えてくる。私が狙われたことに怒ってくれるのはありがたいが。
「ならお二方ももちろんジュド様も姿を見せないほうがいいのでは?」
「それは危険よ! ひとりっきりなんて危ないわ」
「そう言っていただけるのはありがたいんですが、ひとりなら向こうも油断するのでは? お三人がいたら多分何も仕掛けてこないと思いますよ」
唸ったレラとフェリシア。ジュドは、
「ミーガンの言う通りだ。だが何かあったら大声で知らせてくれ。もちろんミーガンの見える位置でいつでも飛び出していけるようにしているから」
いつにない真剣な表情で見つめられてたじたじな私をレラもフェリシアもニヤニヤして見ているような。
だからそういうんじゃありませんってば。仁王立ちした私は、
「わかりました! お二方もしっかり見張っててください。変な動きをするメイドさんやお嬢様に気を付けてください」
と言い切ると、クロにそっと「頼りにしてるからね」と囁いた。
てなわけで、今、私はお嬢様方の中で笑顔を浮かべている
メリ何とか嬢のお家はジュドの住む邸宅とはいかないまでも、さすがの伯爵家で大きな門構えに低木が並びきれいな芝が広がる。その奥に細長い窓が並んだ二階建てのお屋敷。
その庭に用意されたテーブル、お茶やケーキが並び、ドーム型に活けられた花が置かれている。
レラのお茶会も花々の美しい庭で行われたが、メリ嬢のお庭もいろんな種類のバラが手入れされ、まるでバラ園のようだ。
貴族のお嬢様たちもそれぞれにフリルや花柄、ピンクや黄色、様々なドレスで身を包んでいる。
テーブルにはイギリスのお茶会で見るようなサンドイッチが並び、ショートブレッドやスコーンのようなもの。お花が飾られ、小花柄のカップ。メイドさんがティーポットやケーキを運んできた。
目の前のテーブルに置かれるケーキはコーヒーの香りがして美味しそうだ。
「あれ?」
運んできたメイドさんのお礼を言おうと目を上げた私は首を傾げた。
この人、見たことある。




