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怪しい2人とお茶会の誘い

 いきなりの男言葉に商品を見ていた女の子たちが不審そうな目を向ける。

「おばさん?」

「本当に女?」

 ローラやイライザが大小のお姉さんに指さして、2人もあわててあたふたすると、

「今日はもうこれでおしまいだ!」

「さあ帰って帰って」

 店じまい始める2人に、女の子たちの大ブーイング。何事かと村のおとなたちも何だ何だと寄ってきた。食料品の行商のおじさんもこちらに首を伸ばすと、

「あんたらどこのもんだ」

 と大きい女と小さい女を目を細めてみていた。

 逃げてく2人に大人たち数人が追っていく。

 私は黒い物体、クロを抱っこしたままその場を後にした。


 あの2人、あの時の黒づくめに似ていた気がする。でも女性の姿だし、違うよね、と思っていたのだが。

 だけど、何のため? ジュドを狙ってた2人だとしても、もうジュドはここにもメルクールにもいない。クロは匂いであの2人と気付いていたのかもしれない。


 抱っこしていたクロは腕からすり抜けると、さっさと先へ進んでいく。

「クロ、いつの間に来たの?」

 おいしいものを買うって聞いて、ついてきたのか。

「何か買って帰ろうね」

 にゃ、と答えるクロがいきなりこちらに向かって突進してきた。

「うわっ!」

 さっきの2人組のときのように身体ごと吹っ飛んだ私。


 いったい、何!? と思う間もなく私の真横に太い丸太がドーン!という音とともに倒れ、反動で跳ね返ると私とは反対側に転がっていった。


「ミーガンさん、大丈夫!?」

「ケガはないか」

 気づいた村の人たちが慌てて駆け寄ってきてくれる。

 びびりつつも「大丈夫です」と起き上がる私の側でクロがぺろぺろと手をなめていてくれた。


 後から聞いた話だと、家の補修に立てかけてた木材が倒れてきたらしい。

「縄で括っておいたんだがなあ」

 と首をかしげるおじさんに、クララおばあさんの旦那さん、カークおじいさんが、

「すまんかったなあ」

 と謝ってくるが、誰のせいでもないだろう。たぶん、縄が自然とほどけただけだ。きっと。


「クロが体当たりしてくれて助かりました。何かご褒美を買って帰らないと」

 なんて返す私に、

「まだお肉が残ってたわよ」

 と村のおばさんがほらほらと手を貸してくれて立ち上がらせてくれた。


 集まってきた人たちみんな、何事もなく良かったと言い合っている。クララおばあさんも人込みをかき分けやってくると、

「無事でよかった」

 と息をついた。


「偉いね、クロ」とクロの頭をなでると、

「気を付けて、なるべくクロと一緒にいなさい」

 なんて言われてしまった。


 クロのほうがしっかりして見えるのかもしれない。他のみんなは「そりゃあいい」なんて笑っていたが、クララおばあさんの顔は妙に真剣なものだった。


 それから数日は何事もなく、普通の日々が続くかとおもっていた。

「変なことが続いたけど、何だったのかしらね」

 とハーブの仕分けをしていると、ジュドのところの兵士、ライアンが手紙を持ってやってきた。

「私に?」

「はい」

「ジュド、様ですか?」

「読まれてください」

 今この場で読まないといけないようだ。


 薄いピンクの封筒からはバラのような香りがしてる。どう見ても女性からの手紙。

 中身は一枚に簡潔な内容。お茶会へのお誘いだ。

「これ、封蝋が開けてあるってことはジュド、様は読んだんですよね」

「は、はあ、そのようです」

「ジュド様は何とおっしゃってたんですか」


 絵にしたらゴゴゴゴゴと音が出てそうな私の態度にライアンが口の端をぴくつかせてる。

 ったく、あの男は。

 何もないようなことを言っていたくせに。


「これ、お返事を書けってことですか」

 あて名はジュドの城で会った令嬢の一人。長い名前のメリ何とか嬢だ。

 そのお嬢様からのお茶会の誘い。

 そういえば、あの時もお茶会に誘いたいとか言ってたような。

 マジだったか。


 ここはもう遠くの田舎に帰ってるってことにすればいいんじゃないの? ジュドも気を利かせてそういう返事を書いといてくれたらいいのに。

「あの、返事を書くにも手紙を書く道具が」

 レターセットとはさすがにいわないだろうが。ここには貴族が使用するような手紙ようの用紙はない。


「それはご心配には及びません」

 言い切るライアンに、

「ああ、やっぱりジュド様が返事を書いてくれたんですね」

 意外にやるじゃん。と笑顔で返したが。

「今からお城のほうにいらしてくだされば、そこからメリガレット・ルイリヤ・クオラソムプ様のお屋敷までお送りいたしますので」


 は?


「お断りしてくれたんでしょ?」

 まさかね。恐る恐る顔を上げるとライアンは首をゆっくり横に振る。

「お茶会に出席されるようお返事を出されたと申しておりました」

「嘘」

「本当でございます。ですので、今からお城のほうへ」

「嘘よー」

 またあの貴族のご令嬢のお相手なんて無理に決まってる。


「クロ、きなこ、逃げるわよ」

 二匹を両手に抱えドアから逃げようと突進した。

 が。

 なぜかクロは腕からするりと降り、「なー」と顔を見上げてきた。


「えー、行くの?」

 苦渋の顔をしてる私にクロはさあ行くぞといわんばかりにドアに向かうし、きなこも訳知り顔でそのあとをついていく。

 仕方ないと肩を落とした私はライアンの後をついていきつつ、クロと一緒にいなさい、と言っていたクララおばあさんの顔を思い出していた。

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