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狙われる理由

 ロックナー公爵は、

「2人を幽閉し、世間的には駆け落ちしたなんて噂でも流すつもりだったのかな、なんて」

 とまたもにやにや。眉を吊り上げたジュドは、

「冗談でしょ。レラ嬢とは何もないし。だいたいあまり親しくもないのに」

「今現在、王太子妃候補の筆頭はレラ嬢には違いないんだ。もともとはディーンの婚約者だったわけだしな」


 悪役令嬢レラは王子のディーンと結婚相手として自分もまわりも認めていた。次期王妃になるのは間違いないと思われていたが、フェリシアの登場でその地位を奪われる。お話の中ではそういう流れだった。


「つまり、レラ様とジュド様が邪魔ってことですか」

 ロックナー公爵は「だろうねえ」と小さくため息をつく。

「あまり考えたくはないが。デヴィッドとフェリシア嬢か? 二人の成婚を望んでる人間は限られる」

 つまりは姉であるフェルプス公爵夫人とフェリシアの叔父に義理の叔母。


「待って待って」

 いきなりジュドがはいはいと手を上げる。

「父上も俺も王位継承権は辞退してるじゃないか。俺まで狙われる意味がわからないよ」

「それはまあなあ」

 歯切れの悪い返事になぜかクロが「ニャー」とひと鳴き。私もジュドも顔を見合わせた。


「あの、何かあるんですか?」

「俺が狙われる理由があるの?」

 ロックナー公爵は、あ~と上を向くと、

「お前を推す人間が何人も出てはいるんだよなあ」


「は? 俺?」

「そ、お前」

「俺、する気はないよ」

「わかってる」

「なら」

 親子のつっこみのような会話を「うーん」とうなって止めたロックナー公爵は、

「こう言っては何だが、デヴィッドはいい子だが王としての資質というとおとなしすぎるんだよな」


 主人公の攻略相手の3人の王子。

 確かにデヴィッドは図書館に始終いるような、いわゆるインドアなおとなしいタイプだ。

 実際、フェリシアもレラも2人そろってデヴィッドの印象はおとなしいものだ。

 かたや、今は行方不明ということになって生死不明な本当の王子様であるディーンは勉強も剣も、市政に関しても常に関心を持っていた。正統派王子さまでゲームのスチルのカッコよさもあって一番人気だった。

 ジュドはというと、よく言えば社交的な陽キャタイプで人に好かれるので2番人気。デヴィッドはおとなしいといってもそのぶん優しく穏やかで3番人気だった。


 現実的に考えて、国を治める王様になる人間というと、それ相応の資質が必要なのかもしれない。

 ジュドの社交的な感じは確かに王の資質には必要かも。だから次の王に推す人が現れたんだろうけど。


「じゃあ、次の王になってもらっては困る人たちが」

 私の言葉にロックナー公爵は困ったような表情で答えた。


「冗談だろ。だいたい俺はやる気ないし。このままのんきに暮らしたいんだよ」

 公爵らしからぬことをほざくジュドに父親が「おいおい」と突っ込むが、

「だいたい、父上が継げばいいことだろ、俺より継承権上位なんだから」

「馬鹿言うな、私は年齢的に適任じゃないだろ。継いですぐ死ぬぞ」

「そんなこといって、したくないだけだろ! ったく、ディーンのやつ、どうなったんだよ」

 ソファに座り込み嘆きだしたジュドをクロが膝に手を置いて慰めている。


 ゲームの中では仲の良い従兄弟同士しのイメージではあったが。実際に仲が良く、しかも一緒に行動しているときに行方知れずとなってしまうなんて。王維継承権一位のいとこが行方知れずになった、じゃあ、次の王位は。なんて気軽に言えるもんでもないだろうし、考えることすら嫌なんじゃないかな。


 デヴィッドはいまだに会ったことはないけど、実際どう思ってるんだろう。お話の中での性格を考えるとそんなに野心があるとも思えないけど。





 あれから、私は森へと戻った。


「もしかしたら、レラ嬢ではなくあんたが狙われたのかもしれないだろ。しばらくここにいろよ」

 なんて言われたがあんな高級そうな場所は壺やら銅像やら壊してしまいそうで落ち着かない。


「私が狙われる意味がわからないもの。それにボディーガードもいるし」

 とクロを抱えた。

 そのままドアを開け外を伺う。

 帰ってきたのはいいものの、なんだか誰かに見られてるような気がするのよね。あんなことがあったから気にしすぎというか敏感になってるんだろうけど。


 外にハーブを取りに行かなきゃと、家の裏手にまわる。当たり前だが、誰もいない。

 いたとしてもウサギや鹿ぐらいだが、それすらなかなか会うことはない。

「オレガノとカモミールと」

 ハサミを手に取っていく。猫にハーブは禁物だからと、クロに言い聞かせたが、言うまでもなくまったく興味がないようで川のそばを移動してる。


「エルダーフラワーも」

 と籠に入れつつ、いつのまにやらクロの姿が消えているのに気が付いた。

「クロ? 先に家に入るわよ。クロ?」

 ザザッと音がして、いつものごとくクロが姿を現すと思ってたが。

「魚でも採ってきたの?」

 裏の小川には魚が泳いでいて、罠を仕掛けると意外に採れる。


「あれ? どこの子? どこから来たの?」

 そこにはクロではなく、茶色系の猫が一匹。その後ろからクロが大物然として帰って来た。

「クロが連れてきたの? もしかして友達?」

「ニャー」という返事をしたクロがさっさと家に向かっていく。後ろからは茶色系の猫がおずおずとついてきていた。


 完全ボスだし。ここなら餌があるって野良の子を誘ったのかしら。まあいいけどね。多頭飼いも夢だったし。


「何か食べる?」

 いそいそと茶系の猫ちゃんにスープを出した。

「あんたもかわいい顔してるわね」

 クロもイケメン猫だが、茶系ちゃんもかわいい顔をしてる。

「ここでよかったら住んでいいからね」

 首輪もしてないし、ちょっと汚れてる感じはやっぱり野良なんだろう。


「名前何にしようかな~」

 ふんふん言ってる私に茶系ちゃんはなぜか首をぶんぶん横に振ってるし、クロは呆れたように「にゃうっ」と息をついてるのはどういうことかしら。

 

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