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虹ゲーと幽閉された二人

「こ、これ、にじげー!?」

 以前、私がやっていたゲーム。さっきまでいたと思っていた場所。

「虹のゲート……」

 そういいつつボタンを押すとゲーム画面からキャラクターのスチルが画面にかわる。


「これ、フェリシアだ」

 目の前で会ったフェリシアと同じ姿のキャラクターがお花を手一杯に抱えて微笑んでいる。

「ちょっと本物とは違う清純さを感じるわね」

 と本人が聞いたら怒りそうなことを言いつつゲーム機のボタンを操作しそうになったが、その指がぴたりと止まった。


「これ」

 フェリシアはお屋敷にいるのだろう、バックに大きなお屋敷らしい建物と、庭が見える。

 更に、遠くからフェリシアを優し気に見つめて立っている二人の男女。


「これ、バロワン伯爵だわ」

 小屋で会ったフェリシアの叔父さまの姿そのままだ。その横に立つのは、奥様のバロワン伯爵夫人ということになるはずだが。


「これが、あの夫人?」

 黒髪で大きな濡れたような瞳、長いまつ毛に赤い唇。女が見ても色気というか独特なオーラを感じる女性。

 だったよね。レラのお家で初めて会ったのは。


 だけど、スチルに描かれたフェリシアの叔母は、緑がかった茶色系の髪をまとめ、緑色の目をしている。旦那様と並んで幸せそうに微笑む姿は。


「私? いや、これミーガンだ」


 あっちの世界のミーガンがそこには描かれている。つまりは私なんだけど。でも。

「な、なんで? フェリシアの義理の叔母さんがミーガンだなんて。ミーガンは魔女なんじゃないの? 私がいたあの世界では魔女だったはずなのに」


 いや、まって、あれは夢だったの? 何だったの?

 ここが現実であれは長いリアルな夢? フェリシアもレラも、ふわふわな手触りのクロも夢なの?


 何が本当かわからない。

 どういうこと?!


「ニャー!」

「え? クロ?」


 びっくりしてあたりを見回した瞬間、立ち眩みのようにくらりと世界が回った。

 あの時と同じだ。

 雄大たちに婚約解消を言い渡されたあの時。

 目の前に靄がかかり、真っ暗な中に吸い込まれていく。

 真っ暗で無音な世界。


 ふと気付くと、目の前はやっぱり真っ暗で。でも自分が床に転がっていることがわかった。


「冷たい」

 手も足も冷たくてひんやりとした感触に思わず体を震わせた。

「ここどこ?」

 腕をさすりながら、周りに目をやると、高い位置にある小さな窓から微かに月のあかりが差しているのがわかった。


 真っ暗と思ったが、徐々に目も慣れてきた。石造りのようなごつごつとした床に壁。とても普通の部屋ではない。まるで井戸の中か、映画の中に出てくる牢屋のようだ。

 さっきまでの自分の部屋もリアルだったが、ここもリアルそのもので、何が本当か何が夢なのかわからなくなってきた。

 クロがいる世界なら、私はレラのお茶会にいたはず。そしてクロを探して。


「そうよ! あの時、急に目の前が真っ暗になって」

 何があったのかわからない。いきなり意識がなくなった。ただ何かの匂いをかすかに覚えている。


 がさり。


「ん?」


 がさがさ。


「え?!」

 とみると、暗い部屋の隅に黒い塊がある。それがもぞもぞと動いてる。


「ひっ」

 声にならない声を上げていたみたいだ。黒い塊も同じように、

「ひえっ」

 と喉を鳴らした。


 人?


「誰? ですか?」

 恐る恐る聞くと黒い塊は、

「もしかして、魔女?」


「はい? だから、魔女じゃないって何度も言ってるでしょうよ!」

 思わず声を荒らげてしまい、黒い塊に笑われる。

「悪い悪い、俺だよ。グレンだ」 

 驚いた。黒い塊が動いて、月明かりの下に立った人は、本当にグレンだった。


「グレンさん、こんなとこで何して」

「それはこっちのセリフだよ、あんたこそ何してんだ」

「私、お茶会に出てたんだけど、気付いたらここで。あの、ここどこですか?」

「さあ、俺も似たようなもんだ。町に自分の荷物を取りに行ったのが悪かったんだよな。部屋に入った途端、記憶がないんだ」


 2人揃って牢屋みたいなとこに入れられたらしい。石造りの壁は汚れなのか薄黒い。そのうちの一面には落書きなのか丸い円に星、記号のようなものが書かれてる。別の一面の真ん中にあるドアは、

「びくともしないし」

 重そうな鉄製だ。夜とはいえ、人の気配もない。どこの城なのか、牢屋なのか。


「あんた、お茶会って。だからそんなドレス着てるんだな」

 私のドレス姿に気づいたのか、グレンが物珍しそうに目をくるくると動かしている。

「これはレラ様が用意してくれて、あ、ドレス汚れたかも」

 焦ってドレスの汚れを払い落とした。


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