表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/110

ヒロイン、地位向上を語ります

 デヴィッドをそんなに好きなのかと、つい言ってしまった。

 そんな私を見つめるレラに、

「ごめんなさい。つい」

 と言うと、レラはきょとんとしたまま、

「好き、なんでしょうか」

「はい?」


 何言ってるの?


「だって、デヴィッド様の一番になりたいんでしょう?」

「はい」

 恥ずかしげだがはっきりと答える。


「じゃあ、好きというか愛してるというか。そういうことでしょう?」 

 なぜか必死に言っちゃってる私にレラは首を傾げた。

「違う、の?」

 思わずフェリシアに目をやってしまった。


 フェリシアは、ふうっと息を吐き出し、レラに、

「じゃあ、私がデヴィッド様と結婚してもいいですよね」

 爆弾発言に私のほうが目を白黒。レラはと見ると、

「それは駄目です」

 と真面目に答えてる。フェリシアはさらに、

「お好きではないんでしょう?」

「ですけどそれは」

「お好きでもないのにご結婚されるんですか」

「そんなこと関係ないでしょう?」


 フェリシアには関係ないと言ってるのか、好きだの嫌いだのは関係ないと言ってるのか。

 レラは至って真面目な顔だ。

 フェリシアは、じっとレラを見つめると、

「関係ないことありませんよ。好きでもないし、どうでもいいんならレラ様以外のかたと結婚されてもいいじゃないですか」

「だからそれは駄目なんです」

「どうしてですか」

 2人の言い合いを目の前に、私もクロもただただ口を開けたまま顔を交互に向けるだけだ。


 ちょっとばかり、口の端を曲げたレラは、

「お父様がお決めになったことなんですから」

 少しの間があった。

 お父様って、ヴェルミリオ侯爵のことだ。


 父親がこの縁談を進めてるのか。もともと王太子と結婚するはずの令嬢だったもんね。

 そうか。貴族の結婚、しかも次期王様のお妃さまになる人、なんて。本人の意向なんて関係ない。親や地位が上の人たちの間で決まっていくことなんだろう。

 レラからすれば、父親の意向を尊重することが大事だし、言われたとおりにしないといけないんだろう。

 レラの意志はどうでもいいことなんだ。


 と、いきなりうつむいていたフェリシアが、

「そんなんだから駄目なんでしょう!」

 と大きな声を上げた。


 びっくりしてみると、顔を赤くして、どう見ても怒っている。

 その表情のまま、レラに詰め寄り、

「あなた達みたいな上の人がそんなんだから、いつまでも女性の地位が下なんですよ!」

 いきなりの政治発言のような言葉にこっちも驚いた。


「お父様の意志だから? じゃあ、あなたの意志は? レラ様の気持ちは?」

 確かにそれは私も思ったが。

「お父様の言う好きでもない方と結婚して、子供を産み育てる。そんなの何のために生きてるかわかんないじゃないですか」

「フェリシアさんそれは言い過ぎ」


 言いたいことはわかったが。それが当たり前の状況下のお嬢様相手に生き方まで否定しては。

 レラも困ったような泣きそうな顔になっている。

 フェリシアはハッとすると、

「ごめんなさい」

 と片手を上げた。

 

 この世界はファンタジー作品だ。私がいた世界のなんちゃって中世的な感じかなと思っていたが、女性は家庭にいて子供を産み育てるもので、女性もそれが普通のことなんだと思ってるようだった。

 元にレラも父親やまわりの意向で、決められた人と結婚しなければいけないと思ってたし。

 たぶん、それが普通のことなのだろう。

 フェリシアみたいな考え方は珍しいのかもしれない。


「女性の地位向上ってことか」

 なんとなしにつぶやいていた。フェリシアは、こちらに顔を向けると、

「それよ! さすがに魔法使いだけあって考え方が違うのね」

 いやいやいや、そういうのが普通の世界にいたからですよ。って言っても、地位向上はなかなか難しい場面もいまだに多かったけどねえ。


 私は手をぶんぶんと横に振ると、

「フェリシアさんこそ、いつからそんな考え方に?」

 もともとは庶民として育ってたはずだ。


 フェリシアは眉を下げると、

「私、父さんもいないし。母さんは病気で寝込んじゃってて。お金を稼ぐために色々な仕事をしたのよ」

 確か、原作通りだ。詳しくは書いてはなかったけど。


「まだ子供だったし、近所の人達はよくしてくれたけど。その日暮らしがやっとな状態だったわ。一生このままなのかな、って思ってた。それが普通だしね。ただ、もう少し稼ぎがほしかったのよ。手先は器用な方だし、食器を作るとか焼物の工房の仕事がしたかったの。他のでもよかったのよ、専門の仕事ならお金が違うし、力があれば上だって目指せる」

 ため息をついたフェリシアは、

「だけど、そういうとこは女は取ってもらえないの。どこにいっても、頼み込んでも、門前払い。勉強だってそう。いくら頭が良くても男じゃなきゃ勉強させてなんてもらえない」

 レラが「そんな」とつぶやいてる。


「貴族は家庭教師がつくし、庶民とは違うでしょうけど」

 それでも女と男の勉強内容に差はあるだろう。

 女は結婚して夫に仕え子供を産んで育てる、そういう目的は貴族も庶民もかわらないかもしれない。


 私はそんな結婚を夢見てたんだよなあ。

 家族を持って平凡に生きる。それが幸せと思える結婚だってあるだろう。私は散々な目にあっちゃったが。

 それにしてもフェリシアって自立する女だったのか。


「フェリシアさん」

 質問です、というように片手を上げた。

「はい?」

「フェリシアさんも、デヴィッド様との結婚を考えてらしたんですよね。女性の地位向上を訴えてるのに、どうして?」

 貴族になって考え方が変わっちゃったんだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ