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狙われた男と魔女の存在

「シャーっ!!」

「うわっ! 痛え!」


「え? クロ?!」

 男の腕めがけてクロが噛み付いてきた。

 思いっきり噛まれて男が痛え痛えと腕を押さえてる。


 もう一人の細身の男が、ちっと舌打ちしたその時、ドアがあき、

「何騒いでんの、うるさいんだけど」

 と、さっきの男、フェリシアのことを聞いてきた男が顔を出した。

 

「うわっ! 何だお前ら!」

 細身の男が、

「ベア! そんな奴らはいいからこっちだ」

 ベアと呼ばれた大柄な男が、噛まれた手をブンブンと振ると、フェリシアの男、グレンと呼ばれていた男に向かっていく。


「ちょっ、俺、あんたみたいなのに用はないんとけど」

 襲いかかろうとする大柄な男、捕まりそうになるグレン。クロは大柄な男の頭に飛び乗り顔を思いっきり引っ掻いた。

 ギャーという叫びとともに頭を振り回すベア。

 細身の男があわててクロを掴んで放り投げた。


「クロ!」

 焦った私はなげられたクロをキャッチしてそのまま壁に背中ごとドンッと当たる。

「あんた、大丈夫か」

 グレンが大柄の男の手をかいくぐり私のそばへと来たが、顔を見るやいなや、

「あんた、さっきの」

 と指をさし、

「魔女」

 と一言。


 途端にこちらに向かって体制を立て直していた2人、細身と大柄の男がピタリと止まる。

「魔女?」

「嘘だろ」

 私の方をこわごわと見た。

 抱っこされてたクロが「シャーっ!」と牙をむいた。


 瞬間。


「うわあー!」

 2人して階段を駆け下りていった。

 いまだクロはフーっと言ってるが、私とグレンはキョトンとしたまま2人が去った階段を見つめていた。


「どうなってんの?」

「さあ?」


 首を傾げていたグレンだったが、こちらを見ると、

「なんか知らないけど助かったよ。えーっと、魔女さんと猫くん」

 すっと手を伸ばしてクロの頭を撫でようとした。

 が、クロは頭を横に振ると私の腕から下に降りた。


「えー、傷つくんですけど」

 下唇を突き出すグレンに、クロは知らん顔で階段に向かう。吹き出す私にグレンが、

「助かったけど、何でここに?」

「あ、いや、それは」

 途端にははーんと言ったグレンは、

「俺を追ってきたわけか」

 とにやにや。


「嬉しいけど、君の気持ちには」

 いきなりの壁ドン。

「なっ」

 何考えてんの、この男は!

「よく見ると、可愛い顔してんね」

 大きな黒縁メガネは部屋に置いてあるのか、目にかかる茶色い髪の間から長いまつげと海のように深い青い瞳がのぞいてる。


「ミャー!!」

 階段を降りかけてたクロが、どでかい声で振り返ってこちらを見ていた。

「待って、私も帰るから」

 この人やばいわ。クロが鳴いてくれて助かった。

 急いでクロについて階段を駆け下りた。


 マニーさんから聞いたルルク食堂に行くとジャックさんが食事を終えてお茶を飲んでいた。

「ミーガンさん、遅かったねえ。買い物でもしてたのかい?」

 それどこではなかったが、説明もできないし。

「もう帰らないとですよね」 

 店の前にはもう馬車を置いてあり、すぐにでも出発できそうだった。


 馬車で食べれるようにコッペパンのフライサンドを買って馬車に乗ると、クロはもう御者台に乗って待っている。

「クロ、助けてくれてありがとうね」

 そう言いつつ、パンの間に挟まっていた魚フライをあげた。

「さあ、帰るよ」

 ジャックさんが手綱をあやつる。

 町では村で売るものやら、頼まれたものも買えたとか、ジャックさんが楽しそうに話すのを聞きながら赤く染まっていく道を進んでいった。



 村につくとお礼を言って森へと帰る。

「色々ありすぎて疲れちゃったわね」

 すたすた進むクロについて行きながら、グレンのこと、2人の怪しい男のことを考えていた。


 グレンはフェリシアのことが好きなんだろう。

 だけど、町を出て貴族の身分を得て王太子妃候補にまでなってしまってはもう手が届かない。

 普通の庶民にはどうしようもないだろう。


 だろうけど。


 あの2人は何?


 どう見ても、グレンを狙ってやってきてた。

 グレンを連れ去ってどうするんだろう。

 庶民で狙われるって。

 あ、もしかして。


 ガサリ。


 思考がストップした。 


 今、音したよね?

 見ると前を歩いていたクロもピタリと止まって耳をレーダーのように動かしている。

 急いでクロのそばに行く。


 大きな動物だったらクロを抱えて逃げないと。

 と、私が移動した瞬間。


 ガサ。


 マジだ。何かいる。

 足元の落ちていた太めの木の枝を拾い、刀のように身構えつつ後退していった。

 ホントの魔女なら、魔法でいくらでも対抗できるのに。

 そんなことを考えてハッとした。


 本物の魔女。


 この世界では伝説やお話の中だけと思ってたが、かなり昔にはそういう存在がいたって聞いた。

 もし、本当にいたら、今もいたら怖い存在だろう。何されるかわからないんだから。


 だからあの2人、細身と大柄の男は逃げたんじゃないだろうか。

 あの2人は今現在、魔女や魔法使いを信じてる。

 信じるに足る何かを知ってる?

 魔女っているの?


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