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ミランダ・ヴェルミリオの最高傑作ー2

 ミーガンさんにしてもレラやフェリシアにしてもすべてを正直に話してくれていない気がするのよね。


「ミーガンさん」

「はい」

「あなた、猫を飼っていらっしゃったとか」

「え!?」

 ミーガンが手にしたカップを取り落としそうになる。


 ん?


「大丈夫ですか?」

「あ、やだ、手が滑ってしまって」


 どこからかの情報で今現在も黒白柄の猫を飼っていると聞いた。その前、森にいた時にも猫がいたらしい。


「黒い猫とか、茶色い猫とか聞きましてよ」

「あ、ああ、そうですね」

「今は白黒の子がいるだけ何でしょう? 黒い猫ちゃんはどうされたんです?」

「あ、あの子は、もともと野良で」

 何だか妙に言いにくそうだ。もしかしていなくなったのかしら。


「飼ってるわけではなく、通い猫とかでしたの?」

 ぱっと顔を明るくしたミーガンさんは、

「そ、そうです、うちに来たらごはん出したり、そんな感じで」


「ああ、そうなのね。じゃあ、森や村にいるのかもしれませんね」

「ええ、トフ村のクララさんのとこによく行っていたみたいです」

 ミーガンさんはホッとしたようににこりとした。だけど、その名前。


「クララさん? もしかして、ハームズワース伯のところにいらっしゃる?」

 途端、またもや顔色を悪くしたミーガンさん。赤くなったり青くなったり忙しい。


「あの、レラ様から聞いていらっしゃいます?」

「え? ええ、クララさんっておばあさまの結婚式をしたんでしょう?」

「はい、そうなんです。レラ様もフェリシア様もメイベルさんもプライスメイドで参加したので」

「でしたよね。聞きました、聞きました。そのクララさんなのね。バロワン様の奥様のご親戚なんでしょう?」


 やっと普通の顔色に落ち着いたミーガンさんは、

「そうです。マルガレータ様の」

「マルガレータ様も庶民出身なんですってね。お話聞きたいわあ」

 身分違いのロマンス小説でヒットを飛ばしている身としては放って置けないネタだ。


 笑顔を浮かべたミーガンさんは、

「メイベルさんのお話も続編できそうですよね」

 なんて言ってくれる。

「そうなのよ。メイベルの話は本当に小説を実地でいってるのよね。メイベルは恥ずかしいのかほとんど話してくれなくて」


 デヴィッド様との結婚が決まったメイベルは、今はハームズワース伯のところで養女として暮らしている。デヴィッド様もそこで執筆作業中らしいから、毎日が楽しいに違いない。


「お二人は式はあげないって本当なのかしら」

 忙しいデヴィッド様だが、王室の人間だ。式を挙げないなんて選択はありなんだろうか。

「本来はしたほうがいいとは思いますが、メイベルさんが皆さんの視線を浴びるのはきついでしょうし。お二人の考えに任せた方がいいと思うんですよね」

 つらつらと話すミーガンさんを思わず凝視していたようだ。


 今まで、あまり率先して話してくれないので、かなりおとなしいタイプかと思っていたのだが。フェリシアが、ミーガンさんは魔女のせいか考え方が進んでると言っていたが、こういうことかと嬉しくなる。

 私自身も、貴族令嬢なら考えを表に出すなと言われたことが多々あって、全く納得していなかったからだ。


「お二人に任せるとして、他に何か方法ありますかしら」

 試すように聞いてしまう。

 こちらを見つめたミーガンさんは、うーんと首をひねると、

「はっきり言って、無理して貴族の顔見せのような式は必要ないかな、とは思うんですよね。でも付き合いもありますし……。それは夜会とか、ダンスパーティとかで別個に挨拶だけするのでもいいんじゃないかなあ、なんて。私もお式は挙げないといけないみたいで、王太子だから仕方ないんですけど、少し気が重いです」


 正直に吐露してくれる、婚約中の王太子妃さま。

 可笑しくなってついくすくす笑ってしまう。

 ハッとしたミーガンさんは「今のは内緒で」と指を口に当てた。


「ふふふ、ミーガンさん、もう一つ聞いていいですか?」

「はい」

「あのね、レラとフェリシアの結婚式をしたらと思うの。どう思う?」

「わあ、いいですわね」

 手を合わせて飛び上がりそうな様子に私も嬉しくなる。

「でしょう?」


「ええ、お二人そろって美人なんですもの。ウェディングドレスを着た二人、素敵でしょうねえ」

 うっとりと見上げるミーガンさんに、

「ミーガンさん、話が合うわあ。ねえ、いいわよね」

 同じように想像してしまう。綺麗な二人に真っ白なドレス。形はどんなのがいいかしら。


「そうだわ!」

 いきなり立ち上がった私は、

「スザンヌ夫人のドレスがいいわ」


「スザンヌ夫人ですか?」

「ええ、裁縫師なのよ、特にウェディングドレスは有名でね」

 ミーガンさんも誘うと、スザンヌ夫人のドレスをみんなで見に行くことにした。

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