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ミランダ・ヴェルミリオの最高傑作ー1

いつもありがとうございます。

ミーガンとディーンが婚約中の頃のお話になります。

目線はタイトルにある通り、レラの母親、ミランダ目線となります。

長くなりましたが、よかったら読んでいただけたらうれしいです。

「王太子と魔女の恋愛ってどうかしら」

「それはさすがにストレート過ぎません?」

 レラが眉根を寄せた。

 フェリシアも「そうですねえ」と言いつつお菓子をつまむ。


 二人そろって屋敷に来てくれることが多くなった。というのも、

「お母さま、小説も大事ですが、お身体に無理は禁物ですわよ」

「そうですよ。お腹の赤ちゃんのためにも少しは休まないと」


 レラの母親である私、ミランダ・ヴェルミリオは、アドーリフ・ヴェルミリオの子をお腹に宿している。つまり、レラの弟か妹か。どちらにしてもかわいい子には違いない。

 そして、覆面作家でもある私。日々、ネタを探して、うちのメイドのメイベルをモデルにして新作を発表して大ヒット中だ。


「まさかデヴィッド様が一番に結婚するなんてねえ」

「本当ですわね」

 ふたりがいい感じだと聞いて小説のネタに使わせてもらったが(もちろん事後報告である)

 二度の旅で一緒になることを決めてくるとは思っていなかった。


 デヴィッド様は王室の資料作成であちこちに行かなくてはならず、その前に、と思ったに違いない、とフェリシアは言っていた。レラも、メイベルと離れたくないんですわねえ、とのんびりとした口調でメイベルを真っ赤にさせていた。


 うちのご主人様からは小説で後押ししたようなもんだ、と言われちゃったし。

 うちのご主人様、アドーリフはメイベルをハームズワース伯の養女にするという体裁を整えたり、メイベルのご実家に話に行かれたりと大変そうだけど。

 幸せになる話はいいことよね。


 以前は王太子候補だったデヴィッド様。その妻の座、王太子妃の座を巡りライバルにあったレラとフェリシア。目の前で楽しそうに笑いあっている。本当に世の中何があるかわからないものだ。


 紅茶に口をつけた私は、

「ところで、二人とも」

「何です?」

「ふたりはお式はあげないの?」

「え、それは」

「……」


 無言になってしまうふたり。

 確かに、女性同士の恋愛は、なかなか認められない人も多いだろう。だけど、別に法律で禁止されているわけではない。まあ、推奨されているわけでもないけど。


「ねえ、ふたりのドレス姿が見たいんだけど」

「お母さま……」

「それは私もみたいですけど」

 レラを見つつ言うフェリシアに、

「でしょ? レラもフェリシアも素敵だと思うのよ」

 ついつい上を見上げ、想像してしまう。

「駄目かしらねえ」

 そういいつつ、私はある場所に向かうつもりになっていた。




「レラ様のお母さま」

「お久しぶりです、ミーガン様」

「ミーガンでいいです。どうも様付けは慣れなくて」

 ミーガンさんがもともと暮らしていたというお屋敷に馬車を走らせた。


「いいお屋敷ねえ」

「ありがとうございます。家具も少しづつ置いていってて」

 お屋敷から追い出されたミーガンさん。お屋敷も貴族の身分も奪った親戚は勤めていたメイドや執事をやめさせ、家具も一式ほとんどすべてを売り払っていたらしい。

 なんともひどい話だ。

 が。


「ネタには事欠かないわね」

「はい?」

「いえ、何でもないのよ」

 うふふと笑ってごまかした。


「ミーガンさま……、ミーガンさん、王太子様とは婚約されたんでしょう?」

 赤くなったミーガンは小さくうなづいた。

「はい。王様のお許しも得られましたし」


 色々とあったがふたりは婚約した。そのいろいろをレラやフェリシアからは聞き出した。

 ジュド様もデヴィッド様もこの地を離れてて聞きに行くのが難しい。

 となると、あとは本人から聞き出せればこれ以上のことはない。

 私の記者魂ではなく作家魂に火が付くってものよ。


「王太子様はこちらにもいらっしゃるんでしょう?」

「時折ですが」

「あら、てっきりこちらで住んでいらっしゃるのかと」

「いえ。ディーン、王太子様もお忙しいし、私もお城に行ったり来たりしてるんです」

 と言ったミーガンは、お茶を運んできたメイドに、

「あとはやるから大丈夫よ、ありがとう」

 とお礼を言った。

 メイドもにこにこと嬉しそうにドアから出ていく。


 レラに紹介されて初めて会ったとき、ミーガンは森に住む魔女のような存在だった。

 レラが言うには「正直な良い方」というもので。確かに庶民のようであり、貴族のようであり、不思議な女性ね、と感じていた。


「どうぞ」

 とお茶を自ら淹れてくれる。

「ありがとうございます」

 向かい合ってお茶を飲む。


「ミーガンさん、王太子様を森で助けたんでしょう?」

「え? あ、はい」

 聞いたとこによると、大けがをして、しかも記憶がはっきりしない王太子を介抱したのがミーガンさんで。

「記憶が戻るのにハーブが効いたって本当ですの?」


 怪我は徐々に治っていったが、記憶は戻らないまま。だけど、ミーガンはハーブで生計を立てていた。そのハーブを毎日とることで記憶が戻ったとか。


 うーん、とうなったミーガンは、

「確かに、記憶力や考える力を上げるようなハーブはあるんですけど。それだけで記憶が戻ったかどうかは」

 と首をかしげる。

「あら、そうなの?」

「ええ、色々なハーブがありますし。何が効いたかは」

 苦笑するミーガンに、私もつられて眉を下げた。


 ふむ。記憶喪失ね。

 私が聞いた話の大筋通りだ。


 貴族の間では、ミーガンさんは倒れていた王太子を助けた命の恩人だと言われている。

 記憶喪失で連絡できなかったとか、献身的な看護でよくなったとか、色々な話が流れてはいるが。

 何だか通り一篇というか。

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