ミーガンの結婚行進曲ー22
「へ?」
いきなり怖いんですけど。
「そのかわり、ひとつだけいうこと聞いてほしい」
「な、なに?」
「子供の名前は俺がつける。わかった?」
「はい? それ、どういう」
「ミーガンに命名はさせないってこと」
「ちょっと! それどういう意味よ」
「理由聞く? なあ、ごましお」
二人に挟まれたままのごましおが「みゃあ」と鳴いて、ディーンがくすくすと笑いだした。
「命名力がないって言いたいのね」
「もうっ」と言った私も吹き出してしまって。
ふたりで笑いあいながら、いつまでもこうして笑いあって過ごしていけることを星に願った。
~7年後~
あれ?
誰かが僕の名前を呼んでいる。
「アーサー?」
アーサー・ルクルット。
僕の名前だ、父様がつけてくれた名前。
「母様?」
涙目の母様が僕をぎゅっと抱きしめた。
「僕……」
「よかった、本当によかった」
抱きしめられたまま見ると、父様が小さな妹のリリーを抱えてほっとした顔でこちらを見ていた。
「父様。リリー」
「にいに」
小さな妹がちっちゃな手を伸ばしてくる。
「よかった、気が付いて。お前、木から落ちて気を失っていたんだ」
「木? あ、そうか。僕、ごましおが木に登ってたから。あれ? 僕、ごましおだったよ」
僕から離れた母様が目を見開いて、僕の額に手をやる。
「熱はないわね。アーサー? 母様のことわかるわよね」
「うん」
「あなた、ごましおって。ごましおはほら」
見ると、暖炉の前で丸くなっている。
「だって、僕、ごましおって。そうだ、母様がつけたんだよね、ごましおって名前。それで、僕、バスケットに入れられて。ひどい女の人が母様を剣で、僕、飛びついて噛みついてやったんだ。ねえ、その人どうなったの? そのあとはここにいて」
説明してた僕ははっとした。
「そうか、僕、夢見てたんだね。なんだ、変な夢だね」
顔を見合わせていた母様と父様。
ふたりは眉を下げ、僕の頭をなでてくれた。
「よくやった、アーサー。お前のおかげでミーガン、母様は助かったんだぞ」
と父様が言い、母様は、
「ありがとう、アーサー」
とまたぎゅっと僕を抱きしめた。
何だか訳がわからないけど、母様に
「小さな王子様」
と言われ、僕はとっても嬉しかったんだ。
おつかれさまでした。
ミーガンの結婚行進曲はこれで終了になります。
まだもう少し残りのお話が続きますので、よかったら読みに来ていただけると嬉しいです。
こちらは、7年後の話をすこしだけつけましたが、続きの話は、ミーガンが婚約中のお話をレラの母親、ロマンス小説家のミランダ目線で書いていこうと思っています。