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8/13

8:なぜか。

 



 ◇◇◇◇◇




 図書室に出勤し、貸し出しの対応。


「――――あの! 聞いてます?」

「へ? あ、はい! 貸し出しですね」

「いえ、返却です」

「……申し訳ございません」


 返却の受付をして、本は返本用の箱へ。

 箱が一杯になるか暇になったら、本棚へ戻しに行くという仕事の流れ。ふと箱を見るといつの間にかパンパンになっていました。

 箱を持ち上げ本棚に向かおうとしたのですが、予想外に重たくてヨタヨタとたたらを踏んでしまいました。


「んっもぉ! ぼぉーっとしちゃって! そんなの持てるはずないでしょう? ほら、渡しなさい――――」

「私が持とう」


 カーライル様に軽く注意をうけていましたら、カーライル様とは別の聞き慣れた少し低めの声。

 その声の方に視線を向けると、燃えるような赤い髪の第二王子殿下が、こちらに腕を差し出していました。


「ほら――――」

「っ! か、カーライル様、行きましょう。これは私たちの仕事ですのでっ!」

「わっ、ちょ、ちょっとちょっと、いきなり引っ張らないでちょうだいよぉ」


 返本の箱を持ってくださっていたカーライル様の右腕をがっしりと掴み、引っ張って本棚の方へと向かいました。

 なぜこのようなことをしたのか、良くわかりません。が! とにかく、第二王子殿下のそばにいたら、なんだか『危ない』と感じたのです。


「プリスカちゃん……顔、真っ赤よ?」

「っ……気のせいです」

「いや、無茶な」


 何時もは上ずったような高めの声のカーライル様が、普通に男性のような声を出しました。いえ、男性なのですが、なんというか……明言は避けましょう。


「昨日までは普通だったわよね? 何かあったの?」


 また上ずったような高めの声に戻りました。声帯に悪影響などはないのでしょうか?


「っ、何もございません」

「やだっ、ちょっと! 何かあったのね!? なに何ナニ!?」

「何もありませんでした! カーライル様、早く本を戻しますよ」

「その顔、その反応。ぜぇぇったい何かあったし! 殿下の寂しそうな顔を見なさいよぉ」


 何もないと言っているのに、カーライル様がやんややんやと煩いです。『その顔』とか言われましても、いつも通りの普通の顔です。

 あと、第二王子殿下の方は……見ません。いまは就業中ですから。




 ニヤニヤ、ニタニタしたカーライル様のしつこい質問攻めを掻い潜り、どうにか勤務を終えました。

 やっと逃れられると思いながら図書室を出たところで、第二王子殿下が待ち構えており、捉まってしまいました。


「少し、いいか?」

「…………はい」


 なぜでしょうか。

 いつもなら『忙しいです』や、『終業しました』、『家に帰ります』などとズバッと断れるのに、今日はなぜか言えませんでした。




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『結婚前夜に義妹に婚約者を奪われたので、責任取ってもらいます。』
…………というか(?)『事後ね』ちゃん、コミカライズ決定しましたぁぁぁぁぁヽ(=´▽`=)ノ わひょぉぉぉぉ

↓↓↓↓

『【コミカライズ決定】結婚前夜に義妹に婚約者を奪われたので、責任取ってもらいます。』
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