最終話:やっぱり三文芝居の求婚で。
湖畔デートで横並びに座り、気になっていたことを話していましたら、ランメルト様が私の正面に移動して来られました。
両頬を包んで言われたのは、「そんなわけないだろうが!」でした。
「伝わってなさそうだなとは思っていたが……」
ランメルト様が俯いて大きなため息を吐くと、また視線を私に戻されました。
「確かに父上の命令が始まりだが、私がプリスカに声を掛けられるようにするためと、面白半分での命令だった」
――――面白半分!?
「あまりにも私がグズグズしていたからな」
「グズグズ? 結婚相手を探すのをですか?」
「違う」
――――違うの?
「私は……君にずっと恋していた(棒読み)」
「…………あの、目を逸らされて言われると、ちょっと疑心暗鬼になるのですが」
「っ――――緊張するんだよ! あと、振られたら怖い! 絶対に泣くぞ!」
「ふ、あはっ、あははは! 何ですかそれ!」
騎士様で、騎士団を纏める団長で、王子殿下で、それなのにそれだけで泣くと堂々と宣言されてしまいました。
ランメルト様はそれだけじゃないだろう、一生の問題なんだぞ、とかブツブツといじけたように言われていますが、私はただただランメルト様の想いが嬉しくて、クスクスと笑い続けてしまいました。
「ランメルト様、愛していますよ」
「なっ!? っ、そ…………それは狡い、狡すぎるだろう!」
なぜかランメルト様が軽く怒り出してしまいましたが、やっぱり嬉くて笑い続けてしまいます。
「では、ラストチャンスということで、どうぞ」
にこりと微笑み瞳を見つめると、ランメルト様の喉がゴクリと上下しました。五回ほど。
なぜそんなにも、歴戦の猛者を目の前に戦いを挑む戦士のような面持ち、になるのでしょうか?
「プリスカ嬢……図書室で貴女に出逢い、恋をしました。私は貴女と将来を築きたい。貴女と一生を共に歩みたい。どうか、結婚して欲しい(棒読み)…………ぅぐ……」
顔を真っ赤にして、目をギュと瞑り、結局は棒読み求婚。
「ふふっ」
この人は、本当に可愛いんだなぁと心がぽかぽかと暖かくなりました。
「仕方ないですね。いまはそれで合格にしてあげます」
「――――っ!」
ランメルト様が、太陽のように眩しく笑いながら抱きついて来られました。そして耳元で「やった!」と喜ばれているのを聞いて、また笑ってしまいました。
◇◆◇◆◇
「――――第二王子殿下の求婚は、どう見ても三文芝居の棒読みでしたが、二人は末永く幸せに暮らしました。おわり」
「おかあさま、このおはなし、おとうさまがもでるさんって、ほんとう?」
「ええ、本当よ」
「いまも、ぼーよみ?」
「ふふっ。ひみつよ」
子供にねだられ、寝物語に話すようになった私たちの馴れ初め。
この話をするたびに、ランメルト様は耳まで真っ赤にしてそっぽを向かれます。
未だに棒読みかどうかは、私たちだけの秘密です。
「さ、もう寝なさい」
「はぁい」
―― おわり ――
ということで、完結です!
楽しかった、面白かった、おつかれちん、もっと頑張れ!
そんな気軽な感じで、ブクマや評価や感想いただけますと作者大喜びします!(*´艸`*)
ではではまた別の作品でーヽ(=´▽`=)ノ