12:湖畔でデート。
◇◇◇◇◇
ランメルト様と約束の日。
朝からお迎えに来られました。
前日に、少し遠出しておすすめの静かな場所に連れていきたい、と言われていたのですが、楽しみ半分、不安半分です。
馬車に揺られつつ、向かい側に座ったランメルト様と窓の外を見ながらおしゃべりしている間に、目的地に到着してしまいました。
一時間半ほど掛かると言われていたのに、もう?
エスコートされながら馬車から降りると、そこは絵画のような世界でした。
降り注ぐ太陽、燦めく湖の水面、赤や黄色に染まり始めた木々、色とりどりのサルビアやコスモスが愛らしく咲き誇っています。
「綺麗」
「ん。今日は天気もいい、ここでゆっくり過ごそう」
「はい」
そっと指を絡めあい、自然と二人同時に歩き始めました。
湖のほど近くに小さな別荘が建っており、そこは王族専用なのですが、今日はそこからピクニック用のランチを運んでいただけるそうです。
暫くゆっくりと湖の周りを歩きました。花が綺麗だとか、魚が泳いでいるとか、他愛もない話をして。
木陰に敷布をし、横並びで座りピクニックランチを食べ、のんびりとした空気の今、投下していい話題なのか悩みますが、そもそもここに来た理由は話し合うためだったので、投下します。
「ランメルト様」
「ん?」
「なぜ、私に求婚しようと思ったのですか?」
「っ!?」
『とにかく誰かに求婚してこい』という雑な陛下の命令から始まったこの関係。
現在未婚の令嬢で、第二王子殿下と面識があり、王族と婚姻しても問題ない家格の令嬢。
すぐに婚姻を結べる年齢で、后教育と同等の教養を身につけていれば尚良し。
選択肢が少なく、ただ白羽の矢が立っただけの私。ランメルト様とは確かに顔見知りではありましたが、図書室で時折りお会いする程度でした。『なのに、なぜ?』という思いしかありませんでした。
そうお伝えすると、ランメルト様が右手で顔を覆い「そうなるのか」と呟かれました。
続きの言葉を待ったのですが、何も仰らないので話を続けようと思います。
私個人としては、結婚に全くの興味が持てなかったので、お父様を丸め込み『結婚しなくてもいい』という言質を取っていたのですが、このような状況になり、少し考えを改めています。
「……ん? え!?」
ランメルト様がとても驚いて絶句されています。
やはり、結婚に興味がないのは驚かれるのでしょうね。
「そこじゃない…………いや、気にせず続けてくれ」
陛下からの命令で始まった関係なので、このような形で結婚して長続きするのかなど気になっています。
昔から貴族同士の契約結婚はありますが、最近はかなり減っています。それは、子を成したあとでもお互いに愛が芽生えず、それぞれが異性の遊び相手を見つけてしまい、なんやかんやでお家騒動に発展するという負の連鎖が多くあった為です。
現在私たちは、それに近い状況にあるのではと――――。
「――――そんなわけないだろうが!」