11:ランメルトはやる気に満ち溢れている。
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プリスカが名前で呼んでくれた。
それだけで、年甲斐もなく本気で喜んでしまった。
プリスカが可笑しそうにくすくすと笑うものだから、また顔が赤くなってしまう。
プリスカが段々と心を許してくれている。毎日が楽しい。
図書室で出逢ってから何年が経っただろうか。
何度も足を運んでは声をかけていたが、サクッと本の場所を案内されて終わっていた。
質問すると、その分野に詳しい職員を連れてきてくれたり、更に詳しく書いてある本を探し出してくれる。
ふと、ただ仕事を邪魔する存在になっていることに気付いて、止めた。
週に何度も通っても、特に話せないまま。近付くとスッと壁際に避けて臣下の礼を執られる。
たしかにそれで正解なのだが…………だが、認識されているとは、なんか違うというか、物凄く違うというか。
とにかく!
あの日々からすると、驚くほどに躍進している。
感謝したくはないが、父上と兄上のおかげではある。
「次の休みにデートします。今度こそ成功しそうです」
晩餐時に両親と兄上に報告すると、なぜか半笑いされてしまった。
母上はどちらかというと、ニヤニヤ?
「あの棒読みで? 本当に成功するのか?」
いつもなら、兄上の言葉に反論したくとも出来ない。だが、今回は違う。
プリスカの方から、休みの日にも逢いたいと言ってくれたんだ。
プリスカの休日と私の休日をしれっと合わせているのは……バレているのかは不明だが、以前に休日は同じ日だと伝えたら、普通に『そうなんですね。騎士様もしっかり休めているようでホッとしました』と気遣いまでしてくれた。
「……興味を持たれていないじゃないか」
「父上! 本当のことを言っては!」
「あらまぁ。焼野が原ね?」
「ヤジが煩い!」
母上が「短気は損気よぉー」とか笑いながらのんびりとソルベを食べていた。
「とにかく、明後日は泉の別荘を借ります!」
「ランメルト、婚前に連れ込むのは流石に止めておくんだ」
「父上は、私のことを一体何だとお思いで!?」
「え? 違うの?」
まさかの母上も。
連れ込んでモチョモチョとかするわけないだろうが!と叫びたい。
プリスカが静かなところで話したい、と言ってくれたんだ。
泉の側でピクニックする予定だが、天候や気温によっては室内の方が良いかもしれないと考えているだけだ。
ただ、出来れば泉の側が良い。
今の時期ならば、日中は丁度いい涼しさと、美しい花々が咲いているだろうから。
晴れていれば、絶好の求婚日和だ――――。