3-4 お役所仕事には、必須なんです
「斯く斯く然然なんです。」
更正課長、白銀。ゲッソリ。
「分かりました。私が。」
送迎課長、菱端。キリッ。
菱端は元、某藩剣術指南役。曲者から主を守り、命を落とした。享年二十五。若くして出世したので、妬み嫉みが酷かった。
菱端の死後、喪が明けて直ぐ。
後を継いだ弟が、妻に猛アタック。何だかんだで再婚。子は立派に育ち、出世しましたとさ。めでたし、めでたし。
「ごめんください。」
はぁい。・・・・・・え、侍?
「隠り世、代官所より参りました。送迎課、菱端と申します。」
これは、ご丁寧に。美空奏音です。立ち話も何なんで、どうぞ。
「では、お邪魔します。」
そっかぁ。やっぱり私、幽霊なんだ。悪霊へのカウントダウン、始まっちゃったのね。
ロケット発射準備作業の、最終段階と同じ。わぁ、泣きそう。ロケットなら、不具合が出るカモ。だけど、悪霊カウントダウンはなぁ。
私、国家公務員になりたかった。倒産しないし、簡単にクビにならないし、定年まで勤められるし。官僚は大変そうだから、技官ね。
まず、旧帝大の工学部に入学。しっかり学んで、資格もバンバン取って、卒業に必要な単位を取る。それから、公務員試験を受ける。
特許庁がイイなぁ。経済産業省の外局。
大変そうだけど、楽しそう。良く分んないけど、転勤とか残業、少なそうだし。いや、違うかも。でも、いろんな人の役に立つ仕事。
・・・・・・憧れるんだ。
家事ってさ。重要なのに、感謝されないのよ。やって当たり前、みたいな。炊事、洗濯、掃除。他にもイロイロ引き受けれるのに、誰も何も言わない。
あっ、文句は言われる。
だったら自分でヤレっての。美味しく作った料理とか、キレイに洗った洗濯物とか。役に立ちたくて、頑張ったんだよ。なのに誰も、認めてくれない。
「奏音殿。」
はい。
「妖怪に、なりませんか?」
妖怪?
「妖怪になって、隠り世の公務員試験。受験しませんか?」
受け、られる。ので、しょうか。私でも。
「書類を揃えたり、研修を受けたり。受験認定資格を取得して、予備試験に合格すれば、公務員試験が受けられます。」
受けます! 妖怪になって、隠り世の公務員試験。受験します、受験させてください。お願いします。
「では、こちらの書類を御確認ください。」
はい。フムフム、そうなのね。
「ご質問は。」
これは、どういう。
「では、こちらに署名と押印を。」
はい。サラサラ、ぽん。
「はい、確かに。たった今、悪霊ロックが解除されました。代官所スタンプラリー後、責任をもって提出します。受領されるまで暫く、お待ちください。」
はい。よろしくお願いします。