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3-30 姐さん、その娘の何なのさ


亡者から悪霊が剥がされ、正常化が確認できれば、梱包される。正常化した魂は、日本地獄へ。死後裁判を受けるため、速やかに送られる。




「引っ越しニャンコ、コールセンターです。見積もりですか? 発送依頼ですか?」


「代官所、分離管理部です。日本地獄へ着払いで、生き物を送りたいのですが。」



管理部、青柿あおがき。猿蟹合戦の、猿の子孫です。特技は整理整頓。好きな業務は、梱包と事務作業。



「毎度ありがとうございます。梱包は、お済でしょうか。」


「いいえ、これからです。明日の午前中に、お願いできますか?」


「少々、お待ちください。」


カタカタ、カタッ。


「お待たせしました。常温ナマモノ、棺桶サイズ。一点ですね。」


「はい。」


「明日の午前中、にゃんこドライバーが伺います。着払い伝票は、お持ちでしょうか。」


「はい。」


「引っ越しニャンコ、にゃん丸がうけたまわりました。」






悪霊化した亡者を正常化して、地獄送りに。昭和にも有ったが、平成中期から増加。令和から、業者に依頼する回数が増えた。


着払いで送るのは、質の悪い亡者に限られる。つまり、亡者の悪霊化が急増した。現世ではチョットした事でも、隠り世では大問題!



経済成長は望めず、失われた四十年へ突入。税金と物価は上がるのに、手取りは増えない。朝から晩まで馬車馬のように働いて、身心ともにボロボロ。


生活するのに精一杯。心のゆとり? んなモン無いわ! で、犯罪率は右肩上がり。・・・・・・お先、真っ暗。



そりゃ、悪霊化するよね。悪い事しなきゃ、生きられない。正直者が馬鹿を見る。コスパ、コスパって言うけれど、コストの事しか考えない。






「失礼します。清算に参りました。こちら、清算執行書です。ご確認ください。」


さく、清算係長。やる気マンマン。


「はい、確かに。」


ハンコ、ぽん。


「後学のために、見学します。送迎課、美空です。」


「はい。ようこそ、分離管理部へ。」



若いのに代官所員。しかも、送迎課。優秀なんだなぁ。享年、十五六ってトコか? 稲山社いねやまのやしろに、スカウトしようかな。


給料は安いが、甲斐がいあるゾ。フフッ、ヒョエッ。



姐さん、そのの何なのさ。出てる、出てるから抑えて。しがない狛犬ビビらせて、楽しいですか?






「オイ女。オレザマを、ごごがら出ぜ!」


「元、悪霊。半昏手善伎はんぐれてよしき、享年二十四。日本隠り世、刑法四六四条第九項に基づき、清算を行います。」


清算執行書を、ビシッと提示。


「ブッ、ぶざげるなぁぁ! 騙ざれるヤヅが悪いんだ。弱いヤヅが悪いんだ。オレば悪ぐない。」


・・・・・・はぁあ?


「ゴミを死なぜで、何が悪い。弱肉強食、力が正義。」


「言い残すコトは。」


「ヒッ。」


ガタガタ、ガタガタ。




サクちゃん、目が据わってる。って、えぇぇ。角がのびっ、牙まで??? そうだサクちゃん、鬼だった。


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