3-28 捕獲、完了
やっぱり居たよ、ストーカー。でも、違うのかな。事情聴取ってより、保護された感じ。それにあの制服、特隊だよね。
「送迎課、到着しました。これより亡者、半昏手善伎。享年二十四を、緊急搬送します。」
送迎段階は三つ。『お連れする』、『連行する』、『搬送する』。緊急搬送は、非常事態。
代官所を出る時は、連行予定だった。なのに搬送。しかも、緊急搬送。悪霊化したんだ!
「菱端課長。配置、終了しました。」
特殊作戦隊長、路進佳成。キリッ。
代官所、特殊作戦隊。代官所特別法により設置された、治安維持部隊。通称、特隊。更生課特別班。通称、特班と共に、代官の『鶴の一声』で結成された。
「突入は、いつも通りに。」
菱端課長も、キリッ。
「ハッ。」
亡者が悪霊化すると、多大な損害を及ぼす。現世を汚染し、隠り世に禍を齎す。故に特隊と特班が協力し、事に当たっている。
「緊急徴集が掛かったと思えば。」
更生課清算係長、サクちゃん登場。
「朔係長。事態は、最悪です。」
更正課長、白銀。無慙の首根っこを掴んで、モフッと参上。
更生課は、臨死者を生き返らせるのが仕事。稀に、死に立てホヤホヤも。
清算係は、臨死者だろうが亡者だろうが関係なく、貸し借りの結末をつける。平たく言えば、取り立てる。
ホンワカしているが唯一、武闘派揃いの清算係。熊で例えると、特隊がホッキョクグマ。更生課、清算係がグリズリー。
「日本地獄は、何と。」
「『正常化してから、着払いで送ってください』と。」
小包じゃ無いんだから。
「ナマモノですから、肉球ヒンヤリ便で。」
『肉球印の宅急便』通称、肉球便。
常温なら、ポムポム便。要冷蔵なら、ヒンヤリ便。時間帯指定は午前、午後、夕方の中から、お選びください。
「あちら持ちですから、『引っ越しニャンコ』で。」
段ボール一箱から、真心こめて運びます。
悪行を働き、多くの犠牲者を出した。大人しく死後裁判を受ければ良いものを、現世に留まった。直ぐ更正課、無慙の担当亡者となった。
「アレは鬼です。悪魔です!」
「向水くん。亡者を『アレ』呼びしては、いけません。」
上司に諭され、シュン。
無慙だって、仕事します。江戸から勤めはじめ、令和になっても現役、代官所員なのだから。
「半昏手善伎殿。お迎えに、まいりました。」
「はぁあ? お迎ぁぁぁぁぁぁぁ!」
サクッと拘束完了。ポイッと、送迎車へ。特隊に挟まれ、観念したのか? 大人しくなった。




