3-27 緊急送迎要請
「これから、現場へ急行する。」
菱端課長、刑事みたい。
「亡者になっても悪事を続け、悪霊に目をつけられた。性別男、享年二十四。」
クリップボードに書類を挟んで、キリッ。
「悪霊化する前に、処理する。」
奏音も、キリッ。
「その通り。」
緊急送迎要請に応え、課長が出動。奏音は実習生として、同行します。
「半昏手善伎。通称、ゼンクレ。」
「良い名前なのに、残念です。」
「そうだね。」
珍しい苗字だなぁ。ご両親、役者サンかな? 善は、優れている。伎は、俳優。名優にって、願ったのかも。
「それにしても、酷過ぎます。何なんですか、この人。」
「生まれつきの悪人だ。」
裕福な家庭に生まれ、慈しまれ成長。にも拘わらず、歪んだ。小動物を虐めて楽しみ、殺して楽しむ。悪い事だと叱られても、止めようとしない。
誰が何を語っても、響かない。懇懇と諭しても、理解しようとしなかった。
心配した両親が、心療内科を受診させた。それでも、全く。
親類一同、頭を抱えた。このままでは身内から、犯罪者を出してしまうと。
「いつから狂気が、人に?」
「身上書によると、十二の春。中学入学、前夜。」
中学受験に失敗し、公立中学に進学。態度は最悪だが、成績ダケは優秀。教師の忠告を無視して、難関公立高校を専願で受験。
試験の成績は良かったが、面接態度が悪すぎて不合格。三次募集していた私立高校を、嫌イヤ受験。試験の成績は良かったが、面接態度が悪すぎて不合格。
高校に進学できず、独学で大学進学を目指す。結果は同じ。試験の成績は良かったが、面接態度が悪すぎて不合格。で、非行化。
「どのような態度で、臨んだのでしょうか。」
「面接官に暴言を吐き、机を蹴り上げた。」
「それは、落ちますね。」
「堕ちた。」
自営業者に気に入られ、脇道へ逸れた。杯を貰う事は無かったが、付かず離れず。ノウハウを学び、人脈を築く。
多くの人を不幸にして、荒稼ぎ。性別を問わず、多くの人に恨まれた。騙され、弄ばれた女性の数は・・・・・・。
罪、万死に値する。
自殺した女性の父親が、娘の名を叫びながら、心臓を一突き。凶器は出刃包丁。出血多量により、ショック死。
現場に到着。
「奏音くん。今すぐ、防悪胴衣を。」
「はい。」
送迎車の荷台に載せてある、防弾チョッキのような胴着。それが、防悪胴衣。
コレを身に着けるってコトは、悪霊へのカウントダウン。もう、始まっちゃったのね。




