3-26 戦う乙女、実況中
初出勤です。マリンちゃん、キララちゃん。行ってきます!
「送迎課、期待の新人。美空奏音くん。」
・・・・・・視線が、眩しい。
「美空奏音です。ご指導のほど、よろしくお願いします。」
太政官直属は、上から参議、蔵人、老中。そして、代官所。臨死者・亡者を担当する、特別公務員です。
太政官は日本隠り世、中央最高機関。中務、式部、治部、大蔵、兵部、刑部、民部、宮内の、各省を管轄します。
現世で言えば、内閣かな?
「送迎課の仕事は、常に危険と隣り合わせ。」
「はい。」
大人しく連行、じゃない。同行してくれるとは、限らない。そんな亡者の方が珍しい。つまり! 武道の心得があると、何かと安心。
妖怪には、特殊能力持ちが多い。元、人間も同じ。妖怪免許証を手にした瞬間、人生経験や特技などから、能力がパチッと目覚める。
私には、どんな力が有るんだろう。
「では、奏音くん。」
「はい。」
ギュッと、木刀を・・・・・・メキッ。カランッカラン。
「えっ!」
腕相撲選手権、連敗記録更新中だよ?
「気にしなくて良い。妖怪の握力は、強いんだ。」
強すぎる握力は、業務に支障を来す。上手く調節して、素振りの練習。これも鍛錬! 挫けません。
物静かな乙女は、間違い無くナメラレルのです。十六年の、短い人生で学びました。
「目指せ! 妖怪剣士。」
小さく、ガッツポーズ。
奏音は幼少期から、脳内で物語を紡ぐことで、現実逃避していた。その名も、美空奏音劇場。
本日、この度の演目は、『戦う乙女、実況中』。
紫の矢絣の着物に、葡萄茶色の袴を着用。足元はモチロン、編み上げ靴です。髪を結わえた大きなリボンが、愛らしい。気分は、明治後期の女学生。
オオッと。横柄で傲慢な態度のヤツが、オラオラしながら来たぁ! あれは『オレ、カッコイイ』なぁんて、考えている顔だ。カッコ悪ぅい。
ヤツラの頭は、ワニより軽い。女を軽く見ています。勇気を出して、告発しましょう。『この人、勘違い野郎です!』ハイ、退場。
勘違い野郎、パートⅡ。
あれは『俺様を中心に、世界は回っている』って顔だ。強硬な態度を取り、強引に屈服させようと考える。カッコ悪すぎぃ。
そんな族には、物理攻撃が有効です。食らえ! 秘儀、峰打ちじゃ。ハイ、退場。
可憐で淑やかだと、それだけで狙われます。ご注意ください。現場より、美空奏音がお送りしました。
ピンポンパンポォン。