3-24 よくできました
代官所の寮は、どこも相部屋。水回りは共用、食堂完備。
私が入るのは、代官所女子第二寮。古い校舎みたいな、木造二階建て。コの字で、ステキな中庭から出入りする。
隣に建っている平屋が、代官所女子第一寮。人気が高く、滅多に空きが出ない。前を通ったけど、高級料亭みたい。
行った事ナイけど、テレビで見たよ。
「・・・・・・フゥ。」
深呼吸して、笑顔の練習。第一印象、大事!
コンコン。
「・・・・・・お留守かな?」
部屋の鍵、カワイイ。ワクワクしちゃう。カチャッ。
「失礼しまぁす。」
・・・・・・!
「わぁぁ。」
鹿鳴館みたいって、思ったけど。異人館みたいって、思ったけど。中もステキ・・・・・・。
カチャッ、ガンッ。・・・・・・カチャッ。
「あら。」
パチクリ。
頭に角って事は、鬼神。死者の霊魂と、天地の神霊。荒々しく、恐ろしい力を持った神霊。だっけ?
この部屋の鍵を持ってるって事は、ルームメイトよね。鬼の角は、強さと比例する。とっても立派な角が、二本。うん、強そう。
ハッ、自己紹介しなきゃ。第一印象は大事。
「美空奏音です。よろしくお願いします。」
最敬礼。
「吉田朔です。よろしくね。」
ニコッ。
妖怪養成所出身、享年十六。公務員試験制度が導入されて、初の満点合格者。参議と主典から、声が掛かったとか何とか。
堅物代官が『頼む』なんて言うから、どんな娘かと思えば。フフッ、可愛らしいわね。
「荷物、届いてますよ。部屋に入れておきました。」
「ありがとうございます。」
ニコッ。
真ん中に居間がある、振り分けタイプ。入って左が吉田さん、右が私。
個室は六畳、洋室にリフォーム済。ベットに机、収納、金庫まで備え付け。暗証番号は、好きに変えられる。
代官所は激務だから、住み込みの家政婦さんが居る。身元がシッカリした妖怪しか、採用されない。金庫が有るのは、念のため。
あっ。菓子折り渡すの、忘れた。隠り世デパート、数量限定スイーツ。『鬼ふわスフレ』の詰め合わせ。抹茶、チーズ、チョコレート。三つの味が楽しめマス。
「あの、吉田さん。とっても美味しいお菓子です。お召し上がりください。」
スッと差し出し、ニコッ。
「ありがとう。ねぇ、カノンちゃん。吉田さんでは無く、サクちゃんネ。」
圧しが・・・・・・強い。
「朔さん。」
「サクちゃん!」
「・・・・・・サクちゃん。」
「よくできました。」




