3-22 希望通り
「今年の新人は、優秀ですね。」
首席は満点、次席は九十七点。九十点台が何と、八妖。
「特に、美空奏音。」
トップ入所、おめでとう。
「激務で知られる代官所、送迎課希望とは。」
ジィィン。
人の世の公務員人気は、不景気だから。失われた十年、二十年、三十年。
・・・・・・四十年は、ヤメテネ。
隠の世は好景気。バブルじゃ無いよ、堅実だよ。不景気の時は税金を下げ、暮らしを守る。減った分は、外貨で補填。
ビジネスだろうが観光だろうが関係なく、入国した隠から、サラリと搾り取る。エゲツナイ? 外国隠料金ですよ。持ってんでしょ?
特別料金くらい、笑顔で払え。出せない隠は来るな。物価、高いゾ。人の世と違って。
日本隠り世の統治者、蛇神は賢明で在らせられる。嬰児から老体まで。隠り世の民を守るため、御導きくださる。
「奏音くんは希望通り、代官所送迎課へ。」
仁、人事課長。キリッ。
「いいえ! 是非、更生課へ。」
白金、更生課長。何というか、必死。
「何を言う。優秀な妖怪は、奉行所で育てる。」
代官所の面面、ギロリ。
代官所と奉行所は、犬猿の仲。では無いが、京都と奈良くらいの仲。どちらも公務員だが、代官所は特別。
日本隠り世。古称、やまと隠の世。奈良時代に、律令制の八省を導入。その後、江戸幕府の統治システムを、一部導入。やまと代官所、やまと奉行所が設けられた。
明治維新にも、自由民権運動にも、大正デモクラシーにも動じなかったが、昭和に入って『日本隠り世』に改名。と同時に所司代、大老、若年寄を廃止。
ここまでは、良かった。しかし・・・・・・。
戦争による死者の増加は、隠り世を混乱させた。速やかに鎮め定めるため、優秀な人材を派遣。その多くが、各地で民政を担っていた、代官所員だった。
控えめに言って、激務。にも拘わらず、世のため隠のため働いた。その功績が認められ、特別公務員となった。今も多くの臨死者や、亡者を救い続けている。
「期待の新人は代官所、送迎課を希望しています。」
代官所員、フフン。
「代官所は激務。潰されるのではと、心配で。」
奉行所員、オヨヨ。ご隠居! その目薬、どこから?
「それに、奉行所を希望している女性二妖。妖怪養成所からの友人、だとか。」
奉行所員、ニコリ。長老! 目が、笑ってません。
妖怪免許課の主任。ご隠居も長老も、残念ズ推し。満点トップ入所を決めたのが奏音と知り、ブゥブゥ。
「本妖が望むなら、代官所へ。」
モフンと登場、黒狐神。愛称、コッコ。蛇神の飲み友です。
「隠り世の事は、隠り世で。その・・・・・・。」
アルカイク・スマイルが、マブシイ。
「隠神はね、動くよ。」
ワッサワッサと、九尾をフリフリ。
「仰せのままに。」
カノンちゃん、良かったネ。おめでとう。




