3-21 ありがとう
美空奏音さま
公務員試験、合格おめでとう!
カノンちゃん、頑張り屋さんだもん。合格するって、信じていました。
私、転生します。この手紙が届く頃、キララちゃんと一緒にね。
いっぱい伝えたいのに、困ったな。うまく書けないけど、書きます。
マリンスノーはね、海の表層から深海底まで、雪が降るみたいに落ちてゆく物質なの。だから、海雪。
どうして「まりん」なの。「みゆき」でもって、何度も思った。
キラキラネームじゃないけど、そう思われちゃう。だからね、親近感を抱いたの。
話しかけようとしたけど、出来なかった。無表情だし、コワイ人なのかなって。それで、キララちゃんと。
でも違った。とってもステキな女の子。美しい空で、奏でられる音。その通りだよ。
カノンちゃんの目、海みたい。スゥっと、吸い込まれそう。それに、お日様みたい。
一緒にいるとね、ポカポカする。大きな鐘が、カランコロン鳴る、みたいな?
カノンちゃんは偉い。「誰かの役に立ちたいから、公務員を目指す」って、ハッキリ言えちゃうんだもん。
生きてた時から、目指してたんでしょ。 返さなくて良い奨学金で大学を出て、公務員。特許庁だっけ? 同じ高校生なのに、ビックリだよ。
恥ずかしい話だけど私、世界一不幸だと思ってた。いろんな検査を受けて、ガン。しかも末期。
隠されてたけど、わかるよ。だから言ったの。「キラキラ女子にしてから、焼いて」って。
死んでからも続いたんだ。痛みとか、副作用とか。だるくて、気持ち悪くて、立ってらんない。そんな感じ。
でもね。カノンちゃんと一緒だと、ウソみたいに元気なの。いっぱい食べられる、いっぱい笑える。
うれしくて楽しくて、とっても幸せ。ずっと一緒に居たい。だから、思いっきり生きられた。頑張ろうと思えた。努力できた。輝けた。
カノンちゃん。救ってくれて、ありがとう。離れていても、ずっと友達だよ。大好き!
これからも、よろしくね。 鈴木まりん
「キララちゃん、マリンちゃん。ありがとう。とっても嬉しい。」
手紙をソッと胸に当て、微笑みながら呟いた。
フワッと優しい風が、奏音を包む。まるで、抱きしめるように。




