3-16 無視、ムシ
妖怪になれたけど、無職。なのに、寮を出なきゃイケナイ。困った。お給料を無駄遣いせず、貯金したから暫くは・・・・・・。
「さてと。これから、どうしましょ。」
令子さん。笑顔で言うコトじゃ、ないと思う。
「なるように、なるでしょう。」
恵さんまで。
ピンポンパンポォンッ。
「ご卒業、おめでとうございます。新居へ、ご案内します。荷物と思い出をもって、校庭に集まってください。繰り返します。新居へ、ご案内します。荷物と思い出をもって、校庭に集まってください。」
ピンポンパンポォン。
新妖怪は皆、無職。公務員試験を受けるか、就職試験を受けるコトに。進路が決まるまでは、新妖怪専用の、集合住宅で暮らせる。
寮は大部屋だったけど、新居は個室。光熱費に水道料金、食費込みで年間、十万円也。一括先払いで、この安さ。
お給料、貯めていて良かったぁ。
因みに、入居期間は二年。三年目から、正規料金に。入居案内、読んでビックリ。えっ、払えるの? と思うような、金額でした。
何が何でも、二年以内に合格しなきゃ。
「隠り世って。」
「恵まれてるわねぇ。」
令子さん、恵さん。見合ってポツリ。
「勉強に集中できそう。」
「カノンちゃん、偉いわ。」
「見習わなくちゃ。」
・・・・・・?
私の部屋は、令子さんと恵さんの間。同じ建物の同じ階。しかも横並び。フフッ、嬉しいな。
敷地内には、いろんな施設が在る。
食堂、大浴場、洗濯場。購買部、談話室、ちょっと狭い運動場。自習室に図書室。公務員試験の対策室、就職試験の対策室など。
新妖怪が生活に困窮する事なく、最低限度の生活を保障し、その自立を助ける。しかも現金では無く、現物支給。
裁判を受ける仮免妖怪の多くが、使わなかった分を寄付する。そのお金で、この施設は運営されている。みなさん、ありがとうございます。
努力は裏切らないけど、ほとんどの努力は報われない。だからって流されると、ダメになる。
妖怪になりたくても、なれなかった亡者は多い。夢は、叶えるためにある。出来ないなら、出来るように。解らないなら、解るまで。
ひとつ一つの積み重ねが、成功へ導く。昔、何かで読んだ。・・・・・・テレビ、だったかな?
「JK枠でも、あるのか?」
毛敷一。通称、モブいち。
「いかにも、『優等生です』って感じ。」
富良茂夫。通称、フラモブ。
嫌なカンジ。試験で良い点を取れるダケの、残念な人。じゃ無くて妖怪。こういうのは無視、相手にしない。何を言っても通じない。多分、両親と双子レベル。
「オイ、何か言えよ。」
吠えるモブいち、ニヤつくフラモブ。
無視ムシ。コイツら、相手にすると付け上がる。




